堅調に伸びるマクロミルの業績、営業利益率10%超を継続!

 顧客企業のマーケティング支援のためのサービスを提供しているマクロミル。大規模なパネル(ターゲットモニタ)ネットワークを持つ調査会社。国内ではインテージと並んだ大手調査会社だ。ネットリサーチが強み。2014年に米投資会社のベインキャピタルグループによるTOBにより上場廃止したものの、2017年3月に再上場。上場廃止前の時価総額500億円までまだ評価が足りない状況だ。昨今の業績は好調であるものの、株価がさえない。

マーケティング調査のマクロミル(3978)、再上場後の株価下落が止まらない!(2020年7月5日投稿)

■基本情報(2022年8月17日時点)

  • 株価:1,100円(10年来高値:3,500円)
  • 時価総額:445億円
  • 予想PER:11.6倍
  • PBR:1.37倍
  • 予想配当利回り:1.9%
  • 自己資本比率:37.9%
  • 会計基準:IFRS基準
  • 株主数:6,415人(2021年6月30日時点)

■マクロミルの業績は?

 マクロミルの2022年6月期の売上高は498億円(前年比+15.4%増)、営業利益58.1億円(前年比+8.4%増)の増収増益。マクロミルは売上総利益を算出していない。営業利益率は11.7%(前年は+12.4%)と10%を超えている。営業利益に償却費を戻した実力値であるEBITDAマージン率は17.5%(前年は+20.1%)となっている。

 マクロミルの売上高内訳は、日本・韓国事業が約7割、その他の海外が約3割の比率。なお、日本・国内の利益率は高いものの、その他海外の利益率は+6.8%と低い。営業費用をみると、人件費が約206億円、パネル費用(ターゲットモニタの調査費用)が約76億円、外注費が72億円、償却費が28億円とつづいている。

■マクロミルの事業内容は?

 マクロミルはオンライン・マーケティング・リサーチという分野で国内No.1と言われている。マクロミルとは日本国内に約120万人、グローバルで約1,000万人を超える良質な自社パネル(ターゲットモニタ)のネットワークをもっている。そのネットワークを活用して、広告、EC、ソーシャル、テレビ視聴、購買・POSデータなどの行動データ、訪問・閲覧理由、購入理由、満足度などの意識データなどを収集して、レポートを作成して顧客企業に提供している。

 これらの調査データがマクロミルの資産となり、顧客企業に継続的にサービスを提供できるというわけだ。ビッグデータやデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されており、マクロミルのもつデータにより価値がでるのではないだろうか?

■増加傾向の売上高の理由は?

 マクロミルはここ5年ほど売上高は440億円前後で推移してきた。今回、そこを大きく超える+15%の売上高498億円を計上。いっぽうで、利益は前年比で増加しているものの、徐々に下落傾向になっている(2020年6月は減損しておりイレギュラーであったことを除く)。

 この売上高の伸びが一時的なものか、時代のニーズにマッチしたものか、なかなか判断ができない。なぜなら、直近の2022年4月~6月の4Qは前四半期から大きく売上高が下がり、営業利益は赤字になっているからだ。ただ、4Qは過年度も売上高が大きく下がる傾向があり、季節的なものか、需要が減っているのか見極めができない。

■マクロミルの事業状況は?

 マクロミルの連結ベースの従業員数は2,962名とけっこう多い。日本・韓国で2,052名、その他海外で910名となっている。2022年6月期の4Qでは人件費が一気に増えて60.3億円(前年同期は48.9億円)と前年から+12億円も増えている。

 理由としては新卒採用・中途採用を大きく増やしたとしているものの、2022年4月~6月の3か月で12億円増ということは、1か月あたり4億円の増加。かりに1か月の人件費(賞与・社会保険など含む)を平均100万円としても+400名の増加の計算になる。

 従業員数の変化をみると、2021年6月期の4Qは2,637名→2,962名と+325名となっており、少し計算が合わないような気がする。ただし、人員を積極的に増やしているということは需要が大きく増えていると思われ、売上増の裏付け(受注など)があるのではと期待してしまう。

■マクロミルの財務状況は?

 マクロミルは投資会社の再上場案件という背景があり、自己資本比率がそれほど高くない。投資会社にTOBされ上場廃止し、いくつかの企業を吸収させて収益力をつけて、その買収価格と簿価との差額「のれん」を自社のB/Sに計上する方式をとっている。その「のれん」はIFRS基準を採用することで、日本基準と異なり償却計上をする必要がないというマジックだ。

 つまり、再上場案件はB/Sに「のれん」などを計上されており、自己資本比率は低いものの、収益力はあるというケースが多い。その表面的な利益により事業価値を高めて、再上場時に高値で売り抜けるというケースが多い。

 マクロミルの現預金は148億円、「のれん」429億円、その他無形資産71億円を計上しているとおり、巨額の「のれん」を計上しているために自己資本比率が低い。有利子負債は約320億円。マクロミルの営業CFは約55~60億円前後で、少しずつ有利子負債を返済している形だ。そのため、なかなか配当をあげることができない。

■マクロミルの株価推移は?

 マクロミルの時価総額は約450億円。年間の営業CFが55億円前後であることを考えると、株価指標的には割安感がある。再上場後に一時、時価総額は1,500億円くらいまで上昇しており、これからその株価に再度チャレンジする可能性は十分ありえる。DXの社会的な需要があり、マクロミルのもつデータベースに新たな価値を見出される可能性も高いだろう。ビジネスモデル的に、マーケティングニーズが一気になくなることはないため、安定的に収益を出せるだろう。

(画像1)そろそろ上がりそうな雰囲気のマクロミルの株価推移

以 上

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