アットコスメ(@cosme)を運営しているアイスタイル。Amazon内にて「@cosme SHOPPING(仮)」のオンラインストアをオープン予定(時期未定)で、世界のAmazonと業務提携し、業績に大きくプラスになると思われ、株価は急騰している。三井物産とも業務提携を発表。赤字に苦しむ化粧品メディアNo.1の業績と株価にどのように作用するのか?
化粧品口コミサイト「@コスメ」を展開するアイスタイル(3660)の行く先は?(2020年5月30日投稿)
■基本情報(2022年8月16日時点)
- 株価:373円(10年来高値:1,807円)
- 時価総額:276億円
- 予想PER:888倍
- PBR:3.15倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:38.1%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:10,197人(2021年6月30日時点)
■アイスタイルの業績は?
アイスタイルの2022年6月期の売上高は344億円(前年比+11.2%増)、営業損益△4.5億円(前年は△6.0億円)の増収赤字幅の縮小となった。アイスタイルの売上総利益率は+46.0%(前年は+46.3%)。
アイスタイルの売上総利益は前年は143億円→158億円と+15億円ほど増加したものの、販売管理費は149億円→163億円と+14億円ほど増加したことにより、約1.5億円ほどしか営業損益は改善しなかった。アイスタイルにとって一番の課題は利益構造の改善だ。いくら売上高を伸ばしても、販売管理費も増加するため、なかなか利益が増えない。
■アイスタイルの課題は?
アイスタイルは大きく3つのセグメントに分けている。1つはOn Platformという化粧品口コミサイトの運営だ。売上高73億円、営業利益9.0億円。2つ目はBeauty Serviceという化粧品の販売だ。ECと店舗の2つを運営。売上高は219億円、営業利益3.4億円と利益率が非常に低い。3つめはGlobalという海外での化粧品販売の展開。売上高42.5億円、営業損益△2.1億円の赤字。現在は中国、台湾、US、EU、香港、韓国と東アジア中心に事業展開している。
これだけ見ると、Globalが課題にように思えるものの、事業規模の大きいBeauty Serviceの低収益が大きな課題だ。上記の損益に加えて、アイスタイルの全社費用が△15億円あり、その負担が各セグメントに配賦されていないため、実態の損益が見えにくい。
■販売管理費の内訳は?
アイスタイルの販売管理費の内訳を見ると、人件費が全体の約4割を占めている。残りは物販管理費が約3割、システム関連費が約2割、その他1割という構成だ。これらの内訳を見ると、各セグメントの損益は粗利(売上総利益)と考えてよい。
つまり、粗利ベースでBeauty Serviceはギリギリ黒字という水準で、物販管理費を含むと大きく赤字になる。物販管理費はEC事業の配送費、モールへの支払手数料、店舗の家賃などが含まれており、ほとんどBeauty Serviceに関するもの。いまのアイスタイルの販売モデルでは利益がでないことが明白だ。
■Amazonと三井物産との業務提携は?
アイスタイルは2022年8月15日にAmazon.com,Incと三井物産との業務提携と資本提携を発表し、そこから株価はストップ高をつづけている。アイスタイルの株式発行総数は7,400万株。今回、合計で約7,000万株を追加発行し、合計の発行総数は1.4億株になる(転換社債型新株予約権付社債や新株予約権などの違いはある)。
Amazonがすべての新株予約権を行使した場合、Amazonは合計で約5,000株を保有することになり、アイスタイルはAmazonの関係会社になる。あくまで関係会社であり、子会社ではない。Amazonは合計で約140億円を投資することになる。ただ、ここまで持分が高まると、どこかでTOB(公開買付)による子会社も期待される。
今回の業務資本提携の目玉は、Amazonのショッピングモール内に「@cosme SHOPPING」というオンラインストアを開設すること。この施策により、アイスタイルの売上高がどこまで上昇するか期待が大きい。
■アイスタイルの財務諸表は?
アイスタイルの財務諸表を見ると、現預金は58億円、商品23億円、有利子負債は約100億円あり、それほど財務諸表が良いわけではない。これまでの利益の累計である利益剰余金は△9.8億円とマイナスだ。アイスタイル従業員は合計で967名。平均年齢は34.7歳、平均年収は530万円。それほど高いわけでも、低いわけでもない。
■アイスタイルの株価推移は?
アイスタイルの時価総額は約300億円。今回のAmazonとの業務資本提携でこれまでの事業モデルの前提がまったく変わったと考えても良いだろう。ここから大きく伸びるという期待が高い。
正直、化粧品販売とAmazonの組み合わせは非常によく、両者にとって大きなプラスに働くことが期待される。株価もここから2倍~3倍にすぐに到達する可能性もあるし、業績結果が見えるまで大きな思惑で動きそうだ。
以 上