名刺を活用した営業DXのSansan、名刺ビジネスから営業周辺事業の領域拡大!

 名刺やオンライン名刺などで営業活動を企業内で共有するサービスを展開しているSansan(サンサン)。最近ではSalesforce.comとの連携など顧客との関係(カスタマーリレーションシップマネジメント)のサービスを拡充している。企業情報を搭載することで、名刺情報の共有にとどまらない営業DXの領域を拡大させている。今後のSansanの業績と株価の行方は?

オンライン名刺のSansan(サンサン)、成長性を重視して積極投資の赤字!(2021年10月9日投稿)

オンライン名刺管理サービスのSansan、前年同期比+20%超の成長つづく!(2021年8月29日投稿)

■基本情報(2023年4月21日時点)

  • 株価:1,815円(10年来高値:3,642.5円)
  • 時価総額:2,275億円
  • 予想PER:569倍
  • PBR:16.89倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:49.3%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:8,678人(2022年5月31日時点)

■Sansanの業績は?

 Sansanの2023年5月期の第三四半期の売上高は182億円(前年同期比+23.6%増)、営業利益は5.4億円(前年同期比+129.8%増)の増収増益。Sansanの売上総利益率は+86.6%、調整後営業利益率は+4.2%となっている。Sansanが高い株価(時価総額)を維持している大きな要因は、ストック型収益比率が高いこと、また、粗利(売上総利益率)が高いビジネスモデルであることが大きな要因だ。

 Sansanと同じようなITサービスのSaaS型企業は、ラスク、freee、マネーフォワード、サイボウズなどがあり、同じように高い成長性、収益性(粗利)、ストック型の共通点がある。

順調に成長するラクス、SaaS型ビジネスで将来の収益最大化を狙う!(2022年9月11日投稿)

会計クラウドのfreee(フリー)、赤字継続も想定内、成長重視継続!(2022年8月16日投稿)

 Sansanの2023年5月期の第三四半期の売上総利益は157億円(前年は130億円)と+27億円の増加、販管費は152億円(前年は127億円)と+25億円の増加となった。結果として、差し引きで+3億円の増益となった。

■Sansanの事業状況は?

 Sansanは「Sansan」「Bill One」「Eight」の大きく3つの事業をしている。請求書サービスの「Bill One」は年間売上高20億円規模とまだ小さいものの、成長性は前年比2倍と大きく伸びている。いっぽう、Sansanのメイン事業である「Sansan」は前年比+15%と成長性に鈍化がみられる。

 Sansanは現在、営業DXサービスの拡充を進めている。独自の企業調査、帝国データバンク社などのデータプロバイダーとの提携、公開データの情報取得により企業情報の収集をして、データベースでの共有化を進めている。Sansanの成長性が前年比20%を割れており、さらなる付加価値(サービス)の追加が喫緊の課題だ。

■Sansanの販管費の内訳は?

 Sansanで気になるのは、巨額の販管費が何に使われているか?Sansanの2022年5月度の有価証券報告書をみると、販管費170億円のうち、人件費65億円、広告宣伝費30億円の95億円が大口だ。ITサービスは粗利率が高いため、いかに売上総利益を稼ぐかが勝負になる。ストック型のビジネスモデルのため、一定規模を超えると、営業サービス員の増加が鈍化していくものと思われる。

 ただ、米国のITサービス企業は柔軟に人員削減ができるものの、日本では労働関連の法規の影響で簡単に事業規模に合わせた調整はできないだろう。

■Sansanの財務状況は?

 Sansanの2023年2月28日の財務状況をみると、現預金は173億円、投資有価証券47億円。いっぽう、有利子負債は約35億円と少ない。Sansanはサブスクリプションによる前受金を顧客から受け取っており、その金額が76.8億円となっている。Sansanはキャッシュフローで顧客から先にお金を受け取る収益モデルのため、キャッシュフローは良好だ。

■Sansanの株価推移は?

 Sansanの時価総額は約2,200億円。年間売上高が250億円規模と大きくなっているものの、成長性は前年比+20%を超えているため、高すぎる企業評価ではない。将来的に、キャッシュをしっかり稼いでくれるビジネスモデルであり、解約率が低いことを考えると、株価は妥当な範囲だろう。当面は会計上の利益にこだわる必要なく、いかに粗利を稼いでいくかが大きな課題だ。

(画像1)Sansanの株価推移

以 上

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