DX支援のSIer(システムインテグレーター)のアジアクエスト、実力はどうか?

 DX関係のAIシステム、IoT、クラウド導入支援など企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をサポートするアジアクエスト。2023年8月14日に決算を発表したものの、営業利益が四半期比で大きく悪化し、上場来安値まで株価は下落。一時的なタイミングのズレによるものか、アジアクエストの実力の見極めが必要だ。なお、桃井社長はソフトバンク出身の52歳前後。

■基本情報(2023年8月14日時点)

  • 株価:2,387円(10年来高値:8,030円)
  • 時価総額:29億円
  • 予想PER:10.6倍
  • PBR:2.27倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:59.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:870人(2022年12月31日時点)

■アジアクエストの業績は?

 アジアクエストの2023年12月期の第二四半期の売上高は14.7億円(前年比+18.5%増)、営業利益1.4億円(前年比△27.1%減)の増収減益。アジアクエストの売上総利益率は+48.5%(前年は+48.4%)、営業利益率は+9.5%(前年は+15.4%)。アジアクエストの利益率は他のSIer(システムインテグレーター)にくらべるとかなり高い。

 アジアクエストの売上総利益は前年の6.0億円→7.1億円と+1.1億円の増加、販管費は前年の4.1億円→5.8億円と+1.7億円の増加となり、差し引きで△0.6億円の減益となった。四半期別の営業利益推移をみると、1Qは+1.2億円、2Qは+0.2億円と大きく利益が悪化している。アジアクエストの決算説明資料での説明では、大口案件の開始時期の延期等による稼働率の悪化となっている。

■アジアクエストの事業内容は?

 アジアクエストはDX関係などのクラウド導入、AI導入などを中心としたシステムインテグレーターだ。ただ、受託開発、エンジニア派遣など売上高の内訳の比率はわからない。

 アジアクエストは日本では東京・福岡にオフィスがあり、東京の従業員数は247人(2022年12月末)、福岡は26人となっている。在外子会社であるジャカルタ(インドネシア)の従業員数は52人。マレーシアにも子会社があるものの、開示されてない。まだ、立ち上げたばかりで従業員がいないのかもしれない。なお、有価証券報告書をみるかぎり、売上高の90%超は日本国内の売上高となっている。海外としてはアウトソーシング先という位置づけと思われる。

 アジアクエストの主要顧客はスターティアグループのクラウドサーカス株式会社。また、匿名のA社というところが最も大きい顧客となっている。言い換えると、A社とスターティアの売上高を失うと大きなマイナスになる。

■利益減をどうみるか?

 アジアクエストの有価証券報告書をみると、これまでの業績を把握することができる。2019年12月期までは経常収支は赤字、2020年12月期から黒字に転換している。今回、営業利益が前年同期比で大きくマイナス。四半期推移をみても、ほとんど営業利益がでていない。この減少をどのように考えるべきか?

 そもそも、アジアクエストの事業モデルが把握できない。受託開発をメインで行っている会社であるか、それともエンジニア派遣で稼ぐ会社か。もし、受託開発メインであれば、そもそも、案件が延期ということは、大口顧客からの受注がもらえていない可能性がある。納期が遅延しているのであれば、納期遅延と記載するからだ。

■アジアクエストの求人状況は?

 アジアクエストの従業員の平均年齢は31.6歳、平均勤続年数は3.2年、平均年収は475万円。正直、ITエンジニアとしては給与が低い。求人情報の視点からみると、リクルートエージェント、DODAなどでも募集をしており、求人の需要は大きいことがわかる。

 募集する人材としては、大手企業のDX推進チームと一体となり、デジタルトランスフォーメーションの戦略立案、企画・実行とあるものの、なかなか人材は集まらないのではないだろうか。プロジェクトマネジメントの経験年数は3年以上求められる。これで想定年収は500~800万円となっている。ただ、募集をかけていることは受注が好調な背景を想定できる。

■アジアクエストの財務状況は?

 アジアクエストの2023年6月30日時点の財務諸表をみると、現預金は15.6億円、売掛金は4.2億円。負債をみると、有利子負債は約4.0億円、未払金が1.5億円となっている。財務的には健全だ。

 キャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+67百万円、投資CFは△19百万円、財務CFは有利子負債の返済により△58百万円となっている。現預金が15.6億円あるので財務的に安全だ。

 なお、アジアクエストの第二位の株主(27.2%保有)であるJHDアセットマネジメントは2016年に設立された資産運用会社で、NTTドコモ・ベンチャーキャピタルが100%保有している。アジアクエストはNTT関係と関係の強い企業であることは注目点の1つ。

■アジアクエストの株価推移は?

 アジアクエストの時価総額は約30億円。割安か、割高か判断できない。事業モデルが受託開発をメインにしているのか、エンジニア派遣なのか不明であるからだ。ただ、クラウド導入などのDX関係は需要が旺盛である一方、人材の取り合いが発生している。

 アジアクエストとしてもプロジェクトマネジメントができる人材が必要だろう。ほかのコンサルティング企業とくらべて優秀な人材が採用できるかは疑問が残る。現在の業績予想がかりに達成できる前提で考えると、現在の予想EPSは188円で、予想PER20~25倍で考えると、株価は3,760円~4,700円となり成長余力は大きい。ただ、第二四半期まで終えて、現時点のEPSは62円であり、未達のリスクが残る。

(画像1)アジアクエストの株価推移

以 上

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