独立系ネット生保のライフネット生命保険、黒字化と株価上昇は?

 インターネット専業生保のライフネット生命保険。日本生命出身の出口治明氏とボストンコンサルティンググループ出身の岩瀬大輔氏が中心になって立ち上げた独立系の生命保険会社。2012年3月に東証マザーズに上場したものの、そこから右肩さがりの株価推移が続いてきた。2018年1月頃からようやく上昇トレンドに転じているが、このまま上昇トレンドは続いていくのだろうか?

■基本情報(2020年5月1日時点)

  • 株価:699円
  • 時価総額:360億円
  • 予想PER:赤字
  • PBR:3.46倍
  • 予想配当利回り:0%

■赤字、赤字のライフネット生命の損益状況

 ライフネット生命の純利益の推移を見ると、継続的な赤字がつづいている。直近の2020年3月期第3四半期の決算短信を見ると、経常収益(売上高)は122億円(前年同期比+30.8%)、四半期純損益は△17億円の赤字となっている。過去を振り返っても、赤字、赤字の連続だ。

 ライフネット生命保険の赤字のカラクリとして、新契約獲得のための事業費と責任準備金が影響している。生命保険会社は新契約取得のときに費用を大きく発生する。これが営業費用としての事業費だ。ライフネット生命もオンラインで販売しているだけでなく、「保険市場」、「保険の窓口」、「ゼクシィ保険ショップ」などの代理店でも加入可能だ。これらの代理店は拡販してくれるものの、加入時に手数料の支払いが発生するため、新規契約の伸びと事業費の増加が比例してしまう。

 生命保険会社は、保有契約している生命保険金額に応じて、責任準備金を積み立てておく必要がある。ライフネット生命は、順調に保有生命保険が増えているため、増加する保有生命保険に応じて、責任準備金を計上(引当)する必要がある。この責任準備金の計上も費用として認識される。

 このようなカラクリを理解した上で、ライフネット生命の実態を理解するためには、キャッシュフローの状況をみる必要がある。2018年度は営業キャッシュフローが+38.2億円、2019年度は+25億円となっており、順調に本業でキャッシュを稼ぐことができている。

 実際のところは、ライフネット生命は、本業でキャッシュを稼ぎ、その稼いだお金で有価証券(主に国債、社債)を購入して運用しており、順調に資産が増加している。いっぽうで、事業費の増加や責任準備金(費用)の計上があり、見た目の上では、利益がでていない状況がつづいている。ただし、責任準備金はお金が外部にでない費用のため、ライフネット生命からお金がでていくことのない表面上の費用にすぎない。

■ライフネット生命の最近の動向は?

 ライフネット生命の保有契約保険件数は順調に増加していて、2019年12月末時点で34.8万件(将来の年間受取保険料:148億円)まで増えている。前年比で+18%くらいの増加だ。2018年頃から新契約件数が大きく増えていて、2018年度は6.4万件、2019年(9か月)で5.8万件となっている。

 生命保険ビジネスは、いったん契約すると毎月継続的に保険料が入ってくる。新契約の取得は難しいものの、保有生命保険数が増加すれば、安定的な増収・増益が見えやすいのが特徴だ。そのため、最近ではテレビCMでライフネット生命が攻勢をかけているような状況だ。

 また、「わりかん保険」として登場したjustInCase社と提携をはじめた。この「わりかん保険」は中国で最近人気の保険で、発生した医療費を加入者全員で「わりかん」して負担するもの。提供会社は手数料として「医療費+手数料」として加入者に負担してもらうビジネスだ。

 中国のアリババグループ傘下のアント・フィナンシャルが「相互宝」として展開していて、加入者は1億人を超えている。「相互宝」は59歳以下と60歳~70歳の高齢者版をわけて展開していて、高齢者版は高齢者だけで加入するため割高の保険料を負担する仕組みだ。子どもが年老いた両親のために加入するケースが多い。

■ライフネット生命の株価推移は?

 ライフネット生命の株価はどうなるのか?チャートをみると、当面の抵抗線は740円となっていて、このラインを超えて上昇していけるかどうかが課題となる。これを超えていけば、上場来高値の1,326円が意識されるだろう。とにかく、決算書でいつ黒字を出せるか次第であるものの、黒字転換した場合、上場来高値を超えていく可能性はかなり高いのではないか。引き続き、期待したい。

以 上

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