人材派遣大手のパーソルホールディングス(2181)、派遣事業の行方が業績を左右する!

 テンプスタッフとピープルスタッフが経営統合した総合人材サービス会社のパーソルホールディングス(以下、パーソル)。転職支援(エージェント)や求人情報「DODA」などを展開していたインテリジェンスを買収し、現在は子会社のパーソルキャリアとして事業を展開している。リクルートホールディングスに並ぶ大手人材派遣会社として、コロナ禍で派遣需要が急速にしぼむ中、今後の株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2020年10月23日時点)

  • 株価:1,782円
  • 時価総額:4,218億円
  • 予想PER:20.5倍
  • PBR:2.88倍
  • 予想配当利回り:1.68%
  • 自己資本比率:41.8%
  • 会計基準:日本基準

■パーソルの業績は?

 パーソルの2021年3月期の第一四半期の売上高は2,382億円(前年同期比+1.3%)、営業利益91.2億円(前年同期比△9.4%)と増収減益となった。新型コロナウイルスの影響により2020年4月~6月の業績が急速に悪化する見通しだったものの、予想以上に人材派遣の売上高が落ちなかったことが増収と減益幅が小さかった要因だ。ただし、2,000億円を超える売上高があるものの、営業利益率が4%前後と収支はそれほどよくないため、景気次第では一気に赤字に突入する可能性に注意が必要だ。

■ねばるパーソルの人材派遣事業!

 パーソルの売上高の50%以上は人材派遣事業(Staffing事業)だ。同一労働同一賃金を追い風に、ほぼすべての派遣先企業(顧客企業)より交通費等の人材派遣料金アップを認めてもらったことは追い風になっている。新型コロナウイルスの影響により当初は売上高が減少する予想だったものの、意外にも前年にくらべて増収となった。世の中の風潮として、「派遣切り」「リストラ」に対する強い風当たりや、政府による休業補償の体制があるなかで、派遣社員だけを切ることができなかったことが要因だ。

 いっぽうで、転職支援である人材紹介(エージェント)は前年比で大幅な減益となった。人材紹介事業(Career事業)は売上高は小さいものの、利益額でのパーソルのなかでの貢献はかなり大きい。2020年度では全体の約4割の営業利益を稼いでいる。

■パーソルの今後の業績の行方は?

 パーソルの営業利益をみると、人材派遣事業(Staffing事業)は前年比で24億円ほど増益となっている。人材紹介事業(Career事業)は前年比で△32億円のマイナス。同一労働同一賃金による法制化への対応と、いまのところは「派遣切り」が持ちこたえている状況だ。ただ、正社員よりも派遣社員と契約社員のリストラが先行するため、2021年7月以降は楽観的な実績はでてこないのではないか。

 人材紹介事業(Career事業)は、転職者の入社月に売上計上するため、2020年7月以降から本格的に業績悪化の実績がでてくると思われる。競合他社のエン・ジャパン、JACリクルートメント、MS-Japan(MSジャパン)などは2020年4月~6月の業績は前年からそれほど悪化していない。パーソルの人材紹介事業(Career事業)の業績悪化が他社にくらべると先行している印象だ。おそらく、人材紹介事業にはパーソルキャリアが展開している転職メディア「DODA」が含まれており、求人広告が急減していると思われる。エン・ジャパンの決算説明資料をみると、「エン転職」「ミドルの転職」の2020年4月からの広告数は半減している。

■パーソルの事業内容は?

 パーソルはそもそも、どのような事業をしているのか?売上高の50%以上を占めているのがパーソルテンプスタッフの人材派遣事業だ。年間の売上高規模で約5,000億円。もうひとつ、会社を大きく支えているのが転職支援事業であるパーソルキャリア(前身はインテリジェンス)。パーソルキャリアは「DODA」という転職サイトを展開している。パーソルの事業を考えると、人材派遣と人材紹介をメインにしている会社と考えて問題ない。

■パーソルの株価の行方は?

 パーソルの株価はどうなるのか?現在のパーソルの時価総額は約4,000億円。予想PERは20倍ほどであるものの、人材派遣事業が悪化した場合、営業利益は激減する。売上高の減少次第では固定費をカバーできずに赤字に突入する可能性もある。いっぽう、パーソルの株価推移をみると、年初来高値から20%下げた水準にとどまっており、いささか株価は反発しすぎの状態だ。

 「派遣切り」に対する政府のけん制や、世間の厳しい見方があるものの、業績悪化に陥っている企業からすると、正社員リストラのまえに契約満了での派遣社員解約は取るべき選択のひとつ。パーソルの派遣社員の60%は一般事務となっており、代替が起こりやすい業務内容だ。コロナの再拡大が広がった場合、業績面で大きな影響がでやすい業界で注意が必要だ。まずは、株価がヨコヨコになるまで様子見が必要だ。

(画像5)パーソルの株価推移、コロナショックから大きくリバウンド

以 上

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