建物内の携帯通信インフラシェアリングのJTOWER(Jタワー)、成長と株価の行方は?

 建物の屋内で携帯電話の電波が受信できるようにする設備は通信キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンクなど)ごとに導入されてきた。それらの設備をまとめる携帯通信インフラシェアリングというビジネスを展開しているJTOWER(Jタワー)。2021年3月期の業績予想では売上高34億円、営業利益3億円という規模ながら、現在の時価総額は約2,000億円と株価は上場後に高騰をつづけている。JTOWERの業績と株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2021年1月15日時点)

  • 株価:10,060円(10年来高値:11,350円)
  • 時価総額:2,076億円
  • 予想PER:691.8倍
  • PBR:30.29倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:41.2%
  • 会計基準:日本基準

■JTOWERの業績は?

 JTOWERの2021年3月期の第二四半期の売上高は17.3億円(前年同期比+57.7%増)、営業利益は1.9億円(前年同期比+19倍)の増収増益だった。2019年12月に東証マザーズに上場し、時価総額はすでに上場時から約5倍まで上昇している。JTOWERは2012年6月に設立された会社で、連結従業員数は約150名。携帯キャリアの屋内インフラを共有設備で一本化する通信インフラシェアリングというビジネスを行っており、今後の5Gの導入促進などで事業規模が一気に増えていくものと思われ、株価にもその期待が先行している。いまのJTOWERの損益計算表を見るかぎり、株価は大幅な割高に思われるものの、今後の成長を加味すると割安なのだろうか?

■JTOWERの事業内容は?

 JTOWERは携帯キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天など)の建物内の通信設備を一本化するビジネスを行っている。これがIBS事業(In-Building Solution、建物内の携帯通信インフラシェアリング)だ。これまでは新しい不動産(建物)にインフラシェアリングの設備導入を中心に行ってきたが、今後は既存の建物に対しても5Gの通信インフラの導入を進めていく予定だ。導入物件数は294件と少なく、今後の導入件数の大幅な増加が見込まれている。

 タワー事業というのは屋外での携帯キャリアの共有設備を導入するビジネスだ。アーバンエリアと言われる都心などでポール(柱)上のタワーを建て、街路灯、5G共有アンテナ、Wi-Fi、デジタルサイネージ(電子掲示板)、充電用コンセントなどを複合した通信タワーを設置する事業だ。

■見えないJTOWERのビジネスモデル?収益構造は?

 JTOWERの決算説明資料などを読んだものの、JTOWERの収益モデルが見えてこない。携帯通信などを共有化する設備を導入して販売・工事するだけなのか、通信キャリアなどの事業者から使用料などを徴収しつづけるビジネスなのか説明はない。JTOWERは通信設備を製造するメーカーではなく、通信設備を導入する設備工事会社と考えられる。競合企業としてはコムシスホールディングス、協和エクシオ、ミライト・ホールディングスなどが挙げられる。

 ミライト・ホールディングスの2021年3月期の業績予想は売上高4,450億円、営業利益230億円、時価総額は約1,900億円。いっぽう、JTOWERは売上高34億円、営業利益3億円とミライト・ホールディングスの約100分の1の規模で時価総額は約2,000億円。JTOWERはビジネスモデルが見えない中、期待だけが先行していないだろうか?

■5G銘柄?期待が先行する!

 JTOWERは5G銘柄として期待されているものの、5G通信設備の導入すべてJTOWERが担うわけではない。JTOWERが提案しているのは携帯通信インフラシェアリングという付加価値。競合するコムシスホールディングスなども同様の通信設備を提案すれば、JTOWERにどこまで競争力はあるのだろうか、いまは見えてこない。

■導入物件数は少ない!

 JTOWERの現時点の導入物件数は少ない。国内と海外で屋内建物の通信設備インフラシェアリングを展開しているが、国内の導入済み累計件数は195物件にとどまる。将来的な拡大の余地が大きいと考えるべきか、個人投資家で事業発展の行方に確証がもてる人はいないだろう。

■海外展開するIBS事業!

 JTOWERは海外展開もおこなっている。現時点ではベトナム、ミャンマーで実績があり、マレーシアで準備中だ。気になるのは国内市場が爆発的に伸び、市場規模が大きい見込みであれば、国内市場に注力するのでは?という疑問だ。連結従業員数が200名に満たない企業で、人・モノ・金のリソースを集中できる範囲はかぎられるはずだ。

■2019年7月にNTTとの資本提携!三菱UFJリースとも

 JTOWERは東証マザーズ上場前の2019年7月にNTTと資本業務提携を実施している。通信大手と資本提携することで信用力や事業上のメリットも多く出てくるだろう。三菱UFJリースとも資本業務提携を結んでいる。

■JTOWERの株価の行方は?

 JTOWERの時価総額は約2,000億円。通信設備工事という分類で見ると、競合他社であるコムシスホールディングスは時価総額4,600億円、協和エクシオが3,400億円、ミライト・ホールディングスが1,890億円。JTOWERの今後の成長性を考えても、いまの株価は割高すぎる。競合他社の大手3社もNTTグループ向けの事業は多く、5G関係の事業を積極的におこなっている。

 JTOWERの前受金は約70億円あり、これから着実に売上計上されてくるものと思われるが、あくまで70億円だ。700億円ではない。世界的な金融緩和と財政支出の影響で東証マザーズの一部に資金が流れ、JTOWERの株価が大きく上昇したと思われる。上場間もない企業は株価と企業価値が大きく乖離するケースがあり、JTOWRはその大きな乖離のなかにあるのではないか。

(画像8)JTOWERの株価推移

以 上

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