手書き文字をデジタル化するOCRを中心にITサービスを提供しているAIインサイド(AI inside)。上場して約1年で株価は一時、9倍近くまで上昇した。AI(人工知能)を活用したOCR技術によりデジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄として注目をあつめている。AIインサイドの今後の業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年1月22日時点)
- 株価:67,100円(10年来最高値:96,000円)
- 時価総額:2,579億円
- 予想PER:219.6倍
- PBR:82.73倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:75.3%
- 会計基準:日本基準
■AIインサイドの業績は?
AIインサイドの2021年3月期の第二四半期の売上高は19.5億円(前年同期比+217.5%増)、営業利益10.1億円(前年同期比+464.9%増)の大幅な増収増益となった。AIインサイドの売上総利益率は+94.3%、営業利益率は+51.9%と非常に高い。AIインサイドの従業員数は90名弱と小さい規模で、固定費はそれほどかからないビジネスモデルとなっている。
■AIインサイドの事業内容は?
AIインサイドはどのような事業をおこなっているのか?AIインサイドは手書き、活字、FAX、写真で撮った書類まで、あらゆる書類の文字をデジタル化(OCR化)するサービス(DX Suite)を提供している。もうひとつは「AI inside Learning Center」という製品で、プログラミング言語を使わずにAIを作成できるサービスを提供している。
少し複雑なように見えるが、AIインサイドは「使う」道具として「DX Suite」を提供し、AIサービスを「作る」ための道具として「AI inside Learning Center」を提供している。「DX Suite」は初期費用(0円~20万円)、月額費用(3万円~20万円)、リクエスト単価(従量課金)として1リクエスト(1円~3円)の料金プランとなっている。主な用途は請求書・日報などの手書き資料のデジタル化による作業時間の効率化として使用されている。
■AIインサイドの売上高比率の内訳は?
AIインサイドはリカーリングとセリングの売上高比率を公表している。リカーリングとは、サブスクリプション型(継続課金型)のビジネスだ。セリングは売切り型のビジネス。2020年9月時点でリカーリング比率は82%まで上昇している。AIインサイドは新規の営業活動をしなくても、82%の売上高は翌期も継続的に収入を得ることができる。リカーリングビジネスが株式市場で高く評価される要因だ。
■AIインサイドの株価の行方は?
AIインサイドの時価総額は約2,600億円。2020年3月のコロナショック後、ほかのITサービス企業であるfreee(フリー)、ラクス、Sansan、マネーフォワードなどと同じように株価の上昇をつづけてきた。AIインサイドの株価チャートを見ると、2021年に入ってから右肩下がりに動きそうなトレンドを描いている。AIインサイドの売上高は約44億円を計画し、営業利益は18.6億円。株価指標である予想PERやPBRなどを見ると明らかな割高となっている。
現在の株式市場は、世界的な金融緩和と財政支出の影響でバブル気味の相場となっており、人気銘柄であるクラウド、半導体、ITサービスなどの適正株価が見えてこない。AIインサイドが年間で3倍ちかい事業規模の成長を続けていくのであれば割高ではないかもしれないが、ここ数年のあいだで成長鈍化がおとずれる可能性もあり、いまは様子見が妥当ではないか。
以 上