労務・健康管理システム「勤次郎Enterprise」の勤次郎(旧日通システム)、リカーリングビジネス伸びる!

 労務・健康管理の統合ERPシステム「勤次郎Enterprise」を展開している勤次郎。2021年3月27日に日通システムより勤次郎に社名を変更。「勤次郎」は同社の代表製品の名称であり、「二宮金次郎(尊徳)」より取られたもの。労務管理システムはSmartHR、人事労務freee(フリー)、ジョブカン労務管理、楽楽労務(ラクス)などたくさんあるものの、日本を代表する労務管理システムは出ていない。最近ではSmartHRが積極的にテレビCMを行っているものの、決算公告をみるかぎり同社は赤字がつづいている(SmartHRは上場が期待されている)。勤次郎の今後の業績と成長の可能性はどうなるのか?

■基本情報(2021年4月2日時点)

  • 株価:2,934円(10年来高値:5,600円)
  • 時価総額:306億円
  • 予想PER:53.2倍
  • PBR:3.08倍
  • 予想配当利回り:0.57%
  • 自己資本比率:90.1%
  • 会計基準:日本基準

■勤次郎の業績は?

 勤次郎の2020年12月期の売上高は34.3億円(前年比+7.7%増)、営業利益5.6億円(前年比+22.4%増)の増収増益となった。勤次郎の売上総利益率は+66.1%、営業利益率は+16.4%。勤次郎の顧客は、顧客自身が自社でサーバ―を設置するオンプレミス型からクラウド型へ移ってきている。世の中はクラウド化が進んでおり、労務・健康管理システムも同様の傾向だ。

■勤次郎のビジネス内容は?

 会計システムであれば、会計クラウドのfreeeやマネーフォワード、勘定奉行(オービックビジネスコンサルタント)、ピー・シー・エー(PCA)、弥生会計など名前が思いつく製品・企業名があるものの、労務管理システムで思いつくところはほとんどない。

 最近であれば、「SmartHR」のテレビCMをよく見るものの、ほかに印象的な労務管理システムは思い当たらない。「勤次郎Enterprise」は給与、人事、勤惰、マイナンバー管理などの人事総務情報に加えて、ストレスチェック・健診結果など健康管理データの管理も行うのが特徴だ。勤次郎はすでに26年の運用実績があり、約5,000の企業・団体へ導入している。これまではエクセルなどで管理していたデータを労務・健康管理システムの「勤次郎」に蓄積していくスタイルとなる。

 今後は企業内での従業員の健康管理と遠隔医療や電子カルテなどの社会インフラとどのようにデータをつなげていくか期待される。保険証、マイナンバーカード、健診情報、勤務状況などのデータを活用して、従業員の健康管理に役立てるビジネスが期待できる。これらの情報をビッグデータとして、製薬会社やヘルスケアIT企業などと協業できれば面白い。

■増えるリカーリングレベニューの割合!

 勤次郎のリカーリングビジネス(サブスクリプション)の比率は上昇傾向だ。現在は売上高の約53%がリカーリング売上となっている。平均解約率は0.13%と低い。これまでは企業への売り切りモデルだったものが、クラウド型に移行することによって安定的に収益を上げることができるようになった。

■勤次郎の売上高内訳の推移は?

 勤次郎のクラウド事業の比率はここ2年で約16%改善している。勤次郎が現在開発している「次世代勤次郎」は、システム維持管理の改善を実施して、Microsoftライセンスと運用費が大幅に減少になる見込みだ。このシステム維持管理の改善により、勤次郎の利益率はさらに改善されると期待される。

 勤次郎は広告宣伝にそれほど力をいれていないため、競合他社のSmartHRやジョブカンなどのほうが知名度が高い。どこかで積極投資として広告宣伝に力をいれることで、将来的な成長の加速につながると思われるが、その戦略の行方は公表されていない。

■勤次郎の株価の行方は?

 勤次郎の時価総額は約300億円。いまは割高でも割安でもなく、将来の成長次第と言ったところ。会計システムのクラウド企業であるfreee(フリー)は時価総額4,500億円、マネーフォワードは約2,000億円、「楽楽精算」のラクスは時価総額4,000億円とSaaS型(クラウド型)のシステム企業の株式市場での評価は高い。労務システムの分野は市場が出来上がっていないので、勤次郎が新しいマーケットを創れるかによって企業価値が決まってくる。株価上昇を期待するのであれば、数千億円規模の会社よりも勤次郎への投資のほうが魅力がある。

(画像5)勤次郎の株価推移

以 上

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