「家族葬のファミーユ」や「イマージュホール」などの葬儀場(ホール)運営やネット集客などを行っている、きずなホールディングス。年間の葬儀件数は9,108件と前年比+15.2%増となり、売上高は前年比+4.6%増。葬儀の簡素化の流れのなか、葬儀単価の下落をカバーするように件数増となった。葬儀場数は99か所と前年よりも+18か所の増加となった。葬儀件数は景気に大きく左右されることのない葬儀ビジネスのきずなホールディングスの業績と株価の行方は?
■基本情報(2021年7月21日時点)
- 株価:2,311円(10年来高値:2,575円)
- 時価総額:79億円
- 予想PER:16.5倍
- PBR:2倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:18.9%
- 会計基準:IFRS基準
■きずなホールディングスの業績は?
きずなホールディングスの2021年5月期の売上高は80.3億円(前年比+4.6%増)、営業利益7.3億円(前年比+50.1%増)の増収増益となった。きずなホールディングスの売上総利益率は+37.4%(前年は+37.4%)、営業利益率は+9.1%(前年は+6.4%)。
2021年5月期は15ホール(葬儀場)を新規出店し、M&Aで3ホールを取得して葬儀場数は合計99ホールまで増加。葬儀件数も9,108件と前年比+15.2%増となった。いっぽう、葬儀単価は前年比△9.4%減となり、コロナ禍による影響を受けた形だ。葬儀件数は景気の変動に左右されない一方で、葬儀単価はコロナ禍による控えめな実施により社会の流れに大きく左右されることが証明された形だ。
■コロナ禍の葬儀は?
葬儀単価はここ4年間の推移を見ると、100万円(2018年)、99万円(2019年)、90万円(2020年)、82万円(2021年)と下落傾向となっており、コロナ禍でより簡素に実施されている。言い換えると、コロナ禍が終われば、もう少しは葬儀単価の上昇が見込める可能性はあると言える。
きずなホールディングスの決算説明資料をみると、平均参列者はコロナ前の平均35名からコロナ後は平均22名くらいまで減少している。葬儀プランでも低価格帯の比率が増加している。
■きずなホールディングスの会計基準(IFRS)
きずなホールディングスはIFRS基準を採用している。IFRS基準をあえて適用している企業には、資産科目に大きな金額の「のれん」を計上していることが多い。きずなホールディングスの「のれん」は36.3億円。日本基準を適用している場合は、最長20年で償却する必要がある(税務上は5年)。きずなホールディングスが日本基準を適用していた場合、少なくとも年間で1.8億円の償却費用が発生していた計算となる。
きずなホールディングスで気になるのは自己資本比率の低さ。現時点で18.9%と低い。短期借入金は6億円、長期借入金は40億円であるものの、リース負債が約108億円ほど計上されている。きずなホールディングスの葬儀ビジネスはホールを確保することにより高い収益を出しているため、借入比率の高い経営が必要かもしれないが、年間の支払金利は1.7億円ほどになっている。かりに金利が上昇した場合には経営を圧迫するので注意が必要だ。
■きずなホールディングスの株価は?
きずなホールディングスの時価総額は約80億円。予想PERは16.5倍と割高感はない。株式相場好調のため、予想PERが16倍前後というと割安感さえ出ている。ただし、同業他社とくらべると割安感はない。きずなホールディングスの追い風としては、国内の死亡者数は2040年まで継続して増加する予測であり、葬儀需要は段階的に高まっていくことがほぼ決まっていること。また、葬儀の方として家族葬のニーズが高まっており、きずなホールディングスのサービスにマッチしている点だ。
きずなホールディングスで心配する点は金利の高騰。かりに長期金利が1%上昇した場合、有利子負債が150億円ほどあるため、年間の金利負担はすくなくとも1.5億円ほど増加する。この点を除くと、葬儀ビジネスは成長産業であり、期待が持てる企業のひとつ。競合他社では燦ホールディングス(予想PER:8.6倍)、平安レイサービス(予想PER:11.9倍)、ティア(予想PER:23.5倍)などがある。葬儀会社は堅実なビジネスであり、爆発的に株価が上昇するケースはあまりない点にも留意が必要だ。また、同業他社は配当利回りも高めであるものの、きずなホールディングスは無配となっている。
以 上