末期がん患者や難病患者等のホスピス住宅でケアサービスを提供したり、訪問看護、在宅看護サポートをしている日本ホスピスホールディングス(以下、日本ホスピス)。関東首都圏、北海道、関西を中心にホスピス住宅を展開している。
■基本情報(2025年8月8日時点)
- 株価:1,035円(10年来高値:3,830円)
- 時価総額:87億円
- 予想PER:7.9倍
- PBR:2.52倍
- 予想配当利回り:2.41%
- 自己資本比率:19.3%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:4,665人(2024年12月31日時点)
- 事業価値:116億円
■日本ホスピスの業績は?
日本ホスピスの2025年12月期の第一四半期の売上高は32億円(前年比+18.7%増)、営業利益70百万円(前年同期は2.7億円)の増収減益となった。日本ホスピスの売上総利益率は+9.0%(前年同期は+16.5%)と大きく悪化。
日本ホスピスの売上総利益は前年の4.5億円→2.9億円と△1.6億円の減少、販管費は前年の1.8億円→2.2億円と+0.4億円の増加となり、△2.0億円の営業利益の悪化となった。
決算説明資料を読むと、稼働率の低下が大きな要因と記載あるものの、売上総利益率が大きく悪化しており、収益と原価のバランスがよく見えない状況だ。
■日本ホスピスの事業内容は?
末期がん患者や難病患者等のホスピス住宅を中心に関東首都圏を中心に51施設、定員1,720人の施設を運営している。しかしながら、2025年3月末の入居者数は1,090名と定員数を大きく割っている状況だ。たしかに、稼働率の課題はあるものの、末期患者がホスピスに入居するタイミングや死去するタイミングにズレが必ず生じるため稼働率の改善を自ら積極的に行うのは難しい。
稼働率の改善ができないと収益的には厳しいビジネスモデルと言えるだろう。従業員数は1,525名、うち看護師・介護士は1,289名となっている。日本ホスピスは20~40室前後の規模感のホスピスを運営しており、他社の大型施設(50~80室)よりも小さい。そうすると、効率面では他社に負けてしまう部分はあるだろう。
日本ホスピスでは、インシュリン投与、胃ろう、気管切開、経管栄養、たん吸引、ストーマ、尿道カテーテルなど多様な医療処置が可能。末期のがん、多発性硬化症、パーキンソン病関連など多くの特定疾患病に対応しているホスピスだ。
料金はそれほど高くなく、家賃5万前後、管理費6万円に食費がかかり月額20万円弱で使用可能。
■競合他社との比較は?
日本ホスピスの競合となるのは上場している企業であればアンビスホールディングス。医心館を首都圏を中心に展開していて、価格帯も似ている。賃料、管理費、食費他などで月額15~20万円くらいと日本ホスピスと同じ規模感。対象の疾患・状態も、末期がんなど最後のホスピスとしての役割として同じだ。
日本ホスピスは収益構造を開示していていない。アンビスホールディングスの収益構造は診療報酬が約9割、その他が1割となっており、家賃・管理費などの収益割合は非常に低い。日本ホスピスもほぼ同じ構造だろう。
有料老人ホーム運営のアンビスホールディングス、難病患者のホスピス!
アンビスは133施設、約6,800名の定員としている。日本ホスピスは51施設、約1,100名となっており、規模感で大きな差異がある。また、生産性で大きく違いがあり、アンビスの収益性が高い。
■日本ホスピスの財務状況は?
日本ホスピスの2025年3月末の財務諸表をみると、現預金14億円、売掛金19億円、有形固定資産129億円(うち、リース資産91億円)となっている。負債をみると、有利子負債が43億円、リース債務が84億円となっている。
日本ホスピスは建屋は30年くらいの賃借契約をしておりリース資産として計上されている。自己資本比率が低いので、財務的には不安さがある。
■日本ホスピスの株価推移は?
日本ホスピスの時価総額は約90億円。最高値からすでに4分の1くらいまで下落しているものの、収益が悪化しており割安感はない。売上高が増えているものの、売上総利益率が1ケタ台まで落ちているのが構造的な厳しさを示している。昨年くらいから診療報酬の不正請求が業界で話題になっており、今後もさらに厳しくみられる可能性がある。

以 上