国内最大級のレンタルサーバーサービス「ロリポップ!」やネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」などを展開しているGMOペパボ。GMOグループの子会社としてECサービス支援を展開している。2020年1~3月に新型コロナウイルスが拡大したことにより、リアル店舗が落ち込み、反対にネットショップの需要が大きく伸びた。GMOペパボはネットショップ需要を取り込み、前年同期比+20%を超える増収をつづけている。GMOペパボの株価は2020年3月の最安値から5倍ほど上昇しており、投資家の期待が織り込まれた格好だ。今後の株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2020年11月20日時点)
- 株価:5,210円
- 時価総額:283億円
- 予想PER:50.1倍
- PBR:13.4倍
- 予想配当利回り:1.0%
- 自己資本比率:27.8%
- 会計基準:日本基準
■絶好調のGMOペパボの業績!
GMOペパボの2020年12月期の第三四半期の売上高は82.9億円(前年同期比+24.0%)、営業利益は9.7億円(前年同期比+39.5%)と大幅な増収増益となった。このGMOペパボの業績向上を引っ張ったのはEC支援サービスとハンドメイド事業だ。EC支援サービス事業の中でも、自分で制作したイラストや写真をTシャツやiPhoneケース、トートーバッグなどのグッズにして販売できるサービス「SUZURI」の業績が好調だ。
「SUZURI」の売上高は15.8億円(前年同期比+2倍)、営業利益2.9億円(前年同期比+5倍)と大きく事業が伸びた。2020年4月の外出自粛要請により、出品者であり購入者でもあるユーザー全体の外出する機会が減り、「SUZURI」をつかったサービスを利用する人が増えたことが要因だ。
ハンドメイド事業では、国内最大級のハンドメイドマーケットを展開する「minne」(ミンネ)の需要が大きく伸びた。ハンドメイド作品を「買いたい人」と「売りたい人」をつなぐサービスだ。「minne」の作家数は70万人を突破し、作品数は1,200万点を超えた。GMOペパボとしては、「minne」の販売額に対して9.6%の手数料を取っているため、販売額の増加が利益に直結した形となった。
■GMOペパボのセグメント別の業績!
GMOペパボは、レンタルサーバー「ロリポップ!」やドメインサービス「ムームードメイン」などのホスティング事業で安定的に稼ぎ、コロナ禍の巣ごもり特需でEC支援とハンドメイド事業を大きく伸ばしている構造だ。GMOペパボはEC関連事業に特化したサービスを展開しているものの、事業の中身としてはホスティングやEC支援、ハンドメイドなど分散した事業を行っていることが特徴的だ。
■EC支援事業(カラーミーショップ)の行方は?
ネットショップ作成をサポートするEC支援事業の「カラーミーショップ」は売上高は前年同期比+15%増であるものの、営業利益の伸びはたった+2.0%にとどまった。ネットショップ作成サービスとしては、最近ではBASEやSTORES(ストアーズ)、「ショップサーブ」(Eストアー)などの競合の業績も好調だ。海外ではShopify(ショッピファイ)の成長も著しい。
ネットショップ開設者が本格的に事業としてネットショップを展開する場合は、楽天市場やヤフーショッピングに出店するか、「カラーミーショップ」「ショップサーブ」などでしっかりとしたネットショップを構築することが必要になる。BASEを使って本格的にEC事業を拡大するには商品管理など難しい点が少なくない。
「カラーミーショップ」としては、2020年2Qより顧客単価が上昇している。新型コロナウイルスの影響によるネットショップの広まり・拡大を背景にサービス利用者のニーズが増えたからだ。ただし、営業利益の伸びを見ると、GMOペパボとしてEC事業の利益を拡大するには、「カラーミーショップ」だけでなく、新しいEC事業の収益の柱となるサービスの構築が必要だ。
■GMOペパボのサービス別の収益構造は?
GMOペパボのネットショップ作成サービスである「カラーミーショップ」は月額制のストック型。オリジナルグッズ作成・販売の「SUZURI」は利用料や手数料は無料であるものの、製品の原価と販売額の差額で利益を出しているため、販売額が増えれば利益が増える仕組みだ。ハンドメイド事業の「minne」は販売額に対して9.6%の手数料を徴収する方式となっている。
■GMOペパボの株価の行方は?
GMOペパボの株価は絶好調だ。2020年3月にコロナショックで株価が大きく下落して、そこから最大6倍まで上昇した。現在は5倍程度まで伸びは縮んだものの、それでも大きく上昇したままだ。GMOペパボの株価指標を見ると、時価総額は約280億円、予想PERは50倍ほど。現在のEC事業の伸びを考慮すると、GMOペパボの株価に割高感はない。
GMOペパボの競合にあたるBASEの時価総額は約1,900億円と約6倍の企業価値で評価されている。業績をみると、BASEの2020年12月期3Qの売上高は約60億円(前年同期比+119%)、営業利益11億円(前年同期は赤字)と成長率は高いものの、あまりにも株価は過大評価されている。GMOペパボは東証第二部に上場しており、BASEは東証マザーズに上場している違いが大きく出ている。コロナショックで株価が下がった後、東証マザーズに資金が大きく流入し、デジタルやEC関連の銘柄の株価が軒並み上昇している。
GMOペパボの時価総額に関しては、これからも前年比+10%~20%の事業規模(売上高)の上昇が想定できるならば割安だ。EC事業の伸びが一過性の拡大で、これから新型コロナウイルスが落ち着いてきたら成長が大きく鈍化する可能性に注意が必要だ。
以 上