シロアリ駆除から太陽光発電まで、多角展開するサニックス!「九電ショック」乗りこえた?

 シロアリ駆除、太陽光発電、廃プラスチックを活用した発電事業、新電力(小売電力販売)など多角的に事業をおこなっているサニックス。2020年10月に菅首相が「温室効果ガス排出を2050年に実質ゼロ」とする宣言を行い、再生可能エネルギー関連銘柄の株価が急騰するなか、サニックスの株価はそれほど動いていない。出遅れ銘柄なのか、それとも別の要因なのか?サニックスの業績と株価の行方を見ていきたい。

■基本情報(2021年1月15日時点)

  • 株価:321円(10年来高値:1,727円)
  • 時価総額:157億円
  • 予想PER:11.4倍
  • PBR:2.05倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:24.1%
  • 会計基準:日本基準

■サニックスの業績は?

 サニックスの2021年3月期の第二四半期の売上高は239億円(前年同期比△2.4%減)、営業利益16.6億円(前年同期比+7.3%増)の減収増益となった。サニックスの売上総利益率は38.1%、営業利益率は7.0%とそれほど悪くない。従来の業績予想(営業利益+13億円)にたいして、実績は+16.6億円と過達しているものの、通期予想を据え置く慎重な計画となっている。

■サニックスの事業内容は?

 サニックスは多角的な事業をおこなっている。SE部門は太陽光発電関係、HS部門はシロアリ駆除施工や家屋補強工事など、ES部門は建物防水関係など、環境資源開発部門は廃プラスチックを燃料とした発電事業、エネルギー部門は新電力としての小売売電をおこなっている。サニックスは太陽光発電の会社のイメージがあるものの、稼ぎ頭は廃プラスチック発電とシロアリ駆除関連のHS部門だ。

■「九電ショック」とFIT価格見直しの影響とは?

 サニックスは2015年~2016年に連続して△50億円近い赤字を計上している。サニックスは太陽光発電の成長に力を入れ、全体売上高7割の事業規模まで急拡大させた。ところが、2014年4月から「再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT制度)」の価格が値下がり、事業者が九州電力に駆け込み、接続(売電)に殺到したため、九州電力の電力の需給バランスが崩れるとして「保留」した「九電ショック」が起こった。

 この固定買取価格(FIT価格)の見直しと「九電ショック」によって、サニックスの太陽光発電の事業環境が急激に悪化し、売上高は約3割減少し、固定費などの負担で巨額の赤字を計上することとなった。サニックスは約900名の希望退職などリストラを実行し、従業員数は約3,600名(2016年3月末)→2,300名(2017年3月末)に約1,300名減の対策をおこなった。

■心配されるJEPXスポット取引価格の高騰!

 サニックスは新電力である小売売電事業をおこなっている。2020年12月後半より、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット取引価格が高騰しており、サニックスの事業に影響がでていないか心配される。サニックスは自社発電(廃プラスチック)や太陽光発電の買取を行っており、加えて大手電力会社とも相対調達をおこなっている。サニックスの決算書をみると、新電力であるエネルギー事業はそれほど利益がでていないため、JEPX調達の割合はそれほど高くないかもしれない。

 サニックスは電力調達比率(電源割合)を公表しておらず、今回の影響の大きさを見通すことはできない。決算説明資料を読むと、2020年6月より相対調達を一部解消し、市場調達(JEPX調達)の比率を増やしたと記載がある。

■サニックスの株価の行方は?

 サニックスは2015年~2016年の巨額赤字の影響をいまも引きずっており、自己資本比率は24%前後と低い。サニックスは借入金と社債をあわせると約100億円の負担がある。いっぽう、サニックスの時価総額は約150億円、予想PERは11倍と低い。サニックスの株価チャートを見ると、そろそろ上昇トレンドに転じてもよいかもしれない。毎年、営業利益15億円~20億円の実力があるものの、太陽光発電の先行きはFIT価格に左右されている。

 シロアリ駆除と廃プラスチックによる発電は堅調であるものの、太陽光発電と新電力事業は先行きがプラスにもマイナスにも大きく振れそうだ。政府は段階的に再生可能エネルギーのFIT価格を引き下げており、太陽光発電事業にどのような影響がでるか見通せない。JEPX価格の高騰に巻き込まれていないか、その点が最も心配だ。

(画像5)サニックスの株価推移

以 上

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