成長鈍化!?名刺管理サービスのSansan(サンサン)の業績の行方は?

 名刺管理サービスの「Sansan」と「Eight」、クラウド請求書受領サービス「Bill One」を展開しているSansan(サンサン)。デジタルトランスフォーメーション(DX)の追い風のなか前年比+20%を超える成長を続けている。ほかの上場しているDX企業とくらべて成長速度が鈍化しているのか、売上高の伸び率は+31.4%→21.5%に鈍化。Sansanの業績と株価の行方はどうなるのか?

ストック売上高比率が90%を超えるSansan、名刺を活用したビジネス支援!(2021年1月16日投稿)

■基本情報(2021年4月16日時点)

  • 株価:9,180円(10年来高値:10,300円)
  • 時価総額:2,861億円
  • 予想PER:520.1倍
  • PBR:25.93倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:54.5%
  • 会計基準:日本基準

■Sansanの業績は?

 Sansanの2021年5月期の第三四半期の売上高は118億円(前年同期比+21.5%増)、営業利益8.2億円(前年同期比+324.5%増)の増収増益となった。Sansanの売上総利益率は+88.2%、営業利益率は+3.3%。クラウドITサービスを展開しているfreee(フリー)、マネーフォワード、ラクス、サイボウズなどは、どこも売上総利益率が高いのが特徴だ。売上規模の拡大とともに、いっきに営業利益が拡大するビジネスモデルとなっている。

 Sansanの2021年5月期の第一四半期の営業利益は+1.9億円、第二四半期は+6.9億円、第三四半期は+8.3億円となった。今回の第三四半期は営業利益10億円を超えてくると見られていたものの、利益の拡大が遅れる形となり、直近の株価は下がっている。Sansanの業績で見えないのは「その他販管費」が21年5月期の3Qで14.9億円(前年同期は12.8億円)発生している点。中身の開示がなく、今後の増減の行方がわからない。

■Sansanのセグメント別損益は?

 Sansanは「Sansan事業」と「Eight事業」の2つに分かれている。「Sansan事業」は法人向けサービス、「Eight事業」は個人向けサービスだ。気になるのは「Sansan事業」の前年同期比が20%を割ったこと。Sansanの事業はストック型(サブスクリプションモデル)のため、これまでの売上高に新規受注が加算される仕組み。新規受注の獲得に苦戦しはじめていないだろうか。

■Sansanのストック売上高比率は?

 Sansanのストック売上高比率は94.3%と高い。直近12カ月平均の解約率は0.67%と1%以下の低水準となっている。Sansanの2021年5月期の売上高(計画)は約160億円(前年比+20%)で、いまのままの成長速度であればギリギリ達成できる水準だ。

■新しいサービス「Bill One」とは?

 Sansanは3つ目の柱事業として、2020年5月よりクラウド請求書受領サービス「Bill One」を進めている。紙やPDFの請求書をデータ化して、オンラインで受領できるサービスだ。電子請求書については、インフォマートやラクスなど他のクラウドサービス会社もサービスを展開しており、競争のはげしい市場のひとつ。

 「Bill One」は請求書を発行する企業が「Bill One」のクラウドにアップロード、メール送付などで請求書を送り、「Bill One」が電子化して顧客企業にデータ通知するサービス。このような業務フローが浸透・定着できるかがキーになる。

 請求書の電子化は単純なものであるものの、請求書の発行企業と受領企業に温度差があるため、一般的な共通化はむずかしい。大手企業系列での導入などは進んでいるものの、通常の取引の電子化を共通化できるサービスを低価で提供できればビジネス規模はふくらむだろう。ただし、競合他社も多い。

■Sansanの株価推移は?

 Sansanの時価総額は約2,900億円。世界的な金融緩和や財政出動などにより通貨の価値が下がっており、これまでの株価指標(予想PER、PBR)では妥当な株価は見えない。グロース銘柄には資金が集まり、成長が鈍化している企業の株価はそれほど高くない。相場全体が引き続きグロース銘柄に資金が集まるのであれば問題ないが、米国の10年国債金利の上昇など注意すべき点がある。

 個人的には成長銘柄であっても、時価総額2,900億円を正当化するには、少なくとも営業利益50~100億円はほしいところ。ここから株価が短期的に倍増する確率はゼロではないものの、それほど高くはないだろう。

(画像5)Sansanの株価推移

以 上

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