ソフトバンクグループのSBメディアホールディングスが50%を保有するIT系メディア会社のアイティメディア(ITメディア)。1999年12月設立、従業員数は322名。顧客がネットメディアを当たり前に見る時代に、情報を提供して付加価値を提供することで広告代金を徴収するビジネスモデルを構築。今後のアイティメディの業績と株価の行方は?
■基本情報(2023年5月2日時点)
- 株価:1,292円(10年来高値:3,070円)
- 時価総額:269億円
- 予想PER:12.6倍
- PBR:2.71倍
- 予想配当利回り:2.32%
- 自己資本比率:84.5%
- 会計基準:IFRS基準
- 株主数:4,006人(2022年3月31日時点)
■アイティメディアの業績は?
アイティメディアの2023年3月期の売上高は87.5億円(前年比+8.2%増)、営業利益29.3億円(前年比+9.0%増)の増収増益。アイティメディアの売上総利益率は+65.3%(前年は+66.0%)、営業利益率は+33.5%(前年は+33.2%)と非常に高い利益率となっている。
アイティメディアの売上総利益は前年53.4億円→57.2億円と+3.8億円の増。販管費は26.5億円→27.9億円と+1.4億円の増加となり、差し引きで+2.4億円の増益となった。気になるのは成長性が大きく鈍化している点。ただし、この利益率があれば、株価はもう少し評価されても良いかもしれない。
■アイティメディアの事業内容は?
アイティメディアはいわゆるネットメディアを運営しており、言ってみると現代の雑誌的な位置づけだ。IT関係のニュースや技術を紹介。内部記者は100名、外部記者は1,000名いる。月間で6,000本の新規記事を提供し、月間のページビュー数は4億PVとなっている。読者数は2,500万人。
このような媒体をアイティメディアは保有し、どのようにしてマネタイズしているのか?広告収益、リードジェン収益、デジタルイベント収益の3つに大きく分かれる。
■リードジェン収益とは?
アイティメディアのリードジェン収益は、見込み客(リード)を獲得するためのサービスだ。アイティメディアの読者層をターゲットに商品やサービスの広告を実施して、資料請求やセミナー参加などのアクションを得ることで対価をアイティメディアが得るもの。いわゆる「送客ビジネス」のひとつ。
じげん、イトクロの「塾ナビ」、ニフティライフスタイル、カラダノート、イノベーションなどたくさんの上場企業が取り入れているビジネスモデルのひとつ。
競合他社で苦戦?塾検索サイト「塾ナビ」のイトクロの停滞つづく!送客ビジネスの行方は?(2022年12月11日投稿)
送客ビジネスのニフティライフスタイル、富士通由来の企業!(2022年3月21日投稿)
■広告収益とデジタルイベント
ネットメディアを運営しているため、アイティメディアは広告収益を得るビジネスを実施。また、デジタルイベントとしてイベント開催をして出展費用を得ている。
新聞、テレビなどのマスコミが苦戦するなか、ネットメディアで事業基盤をしっかり創った企業は勝ち組に入っている。いまの時代、顧客自らネットで必要な情報を探すため、アイティメディアの情報発信がビジネスに直結するケースが多く、その媒体をうまく担っていると言えるだろう。
■アイティメディアの財務状況は?
アイティメディアの2023年3月31日時点の財務状況をみると、現預金は80億円、固定資産はほとんどない。有利子負債はゼロで、財務的にはきわめて健全だ。
アイティメディアのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+18.8億円と法人税△10.6億円を支払っても大きくプラスとなっている。投資CFは△53百万円とほとんど支出がない。財務CFは△6.6億円で配当金の支払いが△5.1億円と大きいのみ。結果的に現預金は前年から+11.6億円の増加となっている。段階的にまだまだ配当性向は高まっていくのではないだろうか。
■アイティメディアの株価推移は?
アイティメディアの時価総額は約270億円。コロナ禍で需要が一気に伸びて業績が向上して、株価は一時、時価総額700億円くらいまで上昇。現在は3分の1くらいまで下落している。しかしながら、長期的な右肩あがりのトレンドは変わらず、どこかでまた上昇トレンドに転換することだろう。
株価指標的には予想PERは12倍と割安感があり、成長性は鈍化しているものの、高い収益率の魅力が残る。2019年3月末の株主数は3,901人だったものの、2020年3月末には2,404人と1,500人くらいが株式を売却。そこから、2021年3月末には4,455人と2,000人くらいの株主が増加し、株価の高騰を見せ、2022年3月末には4,006人と株価の下落とともに株主が減少しつつある。個人株主の増減が大きく株価に影響を与えていることだろう。
以 上