蓄電池の古河電池、原材料やエネルギーコストの上昇で利益は大きく減少!

 自動車向けの鉛蓄電池をメインに、産業用のデータセンターなどの蓄電池を生産・販売している古河電池。原材料の高騰やエネルギー価格の上昇による業績はイマイチの状況。とくに、鉛価格の市況によって業績が大きく左右される利益構造であり、この状況からの脱却が求められる。現状は太陽光発電システムの有効利用として、ESS(Energy Storage System)の実証実験がスタートしており、2024年度の商品化を目指している。

古河電池(6937)、堅調な鉛蓄電池の需要はいつまで続くのか?(2020年5月23日投稿)

■基本情報(2023年8月10日時点)

  • 株価:967円(10年来高値:2,096円)
  • 時価総額:317億円
  • 予想PER:14.4倍
  • PBR:0.93倍
  • 予想配当利回り:2.17%
  • 自己資本比率:53.4%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:8,620人(2023年3月31日時点)

■古河電池の業績は?

 古河電池の2024年3月期の第一四半期の売上高は147億円(前年比+5.1%増)、営業損益△3.1億円(前年同期は△1.7億円の赤字)と増収赤字幅の悪化となった。古河電池の売上総利益率は+16.2%(前年は+16.8%)とかなり低い。鉛価格が大きく高騰しており、その影響がでている。

 古河電池の売上総利益は前年の23.6億円→23.9億円と+0.3億円の増加、販管費は前年の25.4億円→27.0億円と+1.6億円の悪化となり、差し引きで営業利益は前年の△1.7億円→△3.1億円と△1.4億円の悪化となった。

■古河電池の事業状況は?

 古河電池の製品は、カーバッテリー、再生可能エネルギー用の鉛蓄電池、産業用蓄電池、産業用リチウムイオン電池などを製造している。自動車用のカーバッテリーについては、将来的に電気自動車(EV)に切り替わることで、需要が小さくなっていくことが予想される。

 電気自動車ではリチウムイオン電池が主流であり、古河電池は車載用のリチウムイオン電池を製造していない。全個体電池というものも開発中であるものの、古河電池が開発しているという公開情報はない。古河グループの古河機械金属が電気自動車向けの全固体電池の主要材料である「固体電解質」を開発した。2025年に商用化を計画しており、電気自動車関係では古河機械金属のほうが期待できるかもしれない。

■古河電池は次世代型蓄電池!

 古河電池に期待されているのは、「バイポーラ型蓄電池」という再生可能エネルギー向けのもの。2025年度には売上高30億円を目指している。いま、再生可能エネルギーで課題であるのは、蓄電池が高く、なかなか導入できないという点。この古河の「バイポーラ型蓄電池」が価格面で改善できるか不明であるが、期待はされている。

■古河電池の財務状況は?

 古河電池の2023年6月末の財務諸表をみると、現預金は59億円、棚卸資産は約130億円、有形固定資産は240億円となっている。負債をみると、有利子負債は約66億円。財務的には健全だ。

■古河電池の株価推移は?

 古河電池の時価総額は約320億円。電池というのは、電気自動車向けが特に注目を集める分野。ただ、古河電池は車載用のリチウムイオン電池や全固体電池を開発している形跡がなく、電気自動車銘柄として注目される可能性は少ない。全固体電池はセラミックコンデンサの開発技術のほうが近く、村田製作所やTDKのほうが将来的な量産化の可能性は高い。

 古河電池の鉛蓄電池の技術とは大きく異なり、全固体電池を開発できる可能性はかぎりなくゼロに近いのかもしれない。まだ公表されていない新しい電池の発表があれば、期待感が膨らみ株価に大きなプラスになる可能性はある。

(画像1)古河電池の株価推移

以 上

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