フラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置や半導体のフォトマスク測定装置・検査装置などを製造しているブイ・テクノロジー(以下、Vテク)。主力のFPD製造装置の需要が大きく落ち、2018年から売上高が大きく落ち込んでいる。世の中に流通する液晶ディスプレイは増えているものの、Vテクの装置の需要が減っているのか?今後の株価と業績の行方は?
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■基本情報(2023年11月24日時点)
- 株価:2,613円(10年来高値:16,225円)
- 時価総額:263億円
- 予想PER:45.9倍
- PBR:0.76倍
- 予想配当利回り:2.29%
- 自己資本比率:48.0%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:9,141人(2023年3月31日時点)
■Vテクの業績は?
Vテクの2024年3月期の第二四半期の売上高は123億円(前年比△36.1%減)、営業利益△8.8億円(前年は+5.9億円の黒字)と減収赤字転落となった。Vテクの売上総利益率は+30.8%(前年は+26.4%)と製造業としてはそれほど低い利益率ではないものの、事業規模の大きな減少で営業利益は赤字となった。
Vテクの売上総利益は前年の50.8億円→38.1億円と△12.7億円の減少、販管費は前年の45.0億円→46.9億円と+1.9億円の増加となり、営業利益は差し引きで△14.6億円の悪化となった。事業規模の変動が大きく、販管費のコントロールが難しい。
今期の業績予想は売上高400億円(前年比△7.3%減)、営業利益10億円(前年比+1.4%増)を予定している。一株利益(EPS)は56.9円のため、予想PERを20~30倍で考えると、予想株価は1,000円~1,500円が妥当な範囲となる。現在の利益水準を考えると、株価2,600円くらいであると下落余地が大きい。
■Vテクの事業内容は?
VテクはFPD製造装置と半導体のフォトマスク検査装置、露光設備を製造・販売している。売上高の70%前後はFPD製造装置が占めており、テレビ、スマホ、パソコンなどで使用されるフラットパネルディスプレイ(液晶)の需要動向に大きく左右される。最終製品の需給だけでなく、製造工場の投資が大きく影響する。
液晶はコモディティ商品となり、価格競争が激しい。半導体は常に高度化が進んでいくものの、液晶の発展は限界が見えたような気がする。ここ10年くらいは、ユーザーは液晶の改善に魅力を感じることはないのではないだろうか。すでに満足できるレベルになっている。
■売上高が大きく変動するビジネス
Vテクの装置は1台あたりの価格が高く、売上高は常に大きく変動する。そのため、株価も大きく四半期決算で揺れ動かされてきた。地域別の売上高は中国がもっとも大きく、つづいて日本市場となる。
装置メーカーは受注残高が重要な指標で、Vテクは2023年9月末時点で受注残高を448億円(前年比+8.9%増)もっている。ここ3カ月の受注高は112億円で前年同期比+44.1%と大きく伸びている。年間売上高の1年分くらいは受注残高をもっている計算になる。
Vテクの業績をみるときには、FPD装置の設備投資の動向に注意が必要だ。過去は2017年度にピークをむかえ、Vテクとしては2018年に売上高のピークをむかえている。2023年は設備投資の谷にあたり、需要が大きく減っている。
■伸びる半導体関連の装置
Vテクの受注残高の推移をみると、半導体・フォトマスク装置の受注残高が大きく伸びている。ウェハ研磨、ウェハの検査・洗浄、露光など伸びている。
■Vテクの財務状況は?
Vテクの2023年9月30日時点の財務諸表をみると、現預金は247億円、棚卸資産は140億円、有形固定資産は41億円となっている。負債は、有利子負債が約170億円、前受金45億円となっている。利益剰余金は282億円あり、財務的には健全だ。
Vテクは台湾と中国に工場をもっている。もともとはファブレス経営で製造委託体制だったものの方向転換をしている。Vテクとしては電気自動車の普及で半導体需要が大きく伸びると見ていることが背景にある。
■Vテクの株価推移は?
Vテクの時価総額は約260億円。一時は時価総額1,000億円を超えていたものの、FPD投資の減少とともに株価は大きく下落した。半導体関連装置の売上高はまだまだ低いものの、受注残高は前年比+25.5%と大きく伸びており、期待感はある。ある意味、いまが株価の谷の深いところと見ることも可能かもしれない。
以 上