太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電など、さまざまな再生可能エネルギーの発電事業をおこなっているレノバ。レノバは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)を最大限に活用した事業をおこなっている。レノバの2020年3月期の売上高は195億円であるものの、建設中の発電所が稼働すると発電量が333MW→695MWに倍増することが見えている。ベトナムのクアンチ風力事業(+144MW)、仙台バイオマス事業(+75MW)を入れると、900MWまでの拡大が見えており、2020年3月期の3倍近くの発電量が見えている。このようなレノバの株価はどのような行方になるのか?
■基本情報(2020年10月2日時点)
- 株価:1,122円
- 時価総額:865億円
- 予想PER:107.5倍
- PBR:4.21倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:13.6%
- 会計基準:日本基準(2021年3月期の4QよりIFRSの任意適用開始)
■レノバの業績は?
レノバの2021年3月期の第一四半期の売上高は60億円(前年同期比+68.7%)、営業利益24.2億円(前年同期比+158.8%)と大幅な増収増益となった。レノバは発電事業(売上高:49.6億円)と開発・運営事業(売上高:10.3億円)の2つのセグメントを構成していて、第一四半期では開発・運営事業(発電所の建設期間・売電機関に支払われる運営管理報酬)が前年同期比+10億円ほど増加した。2021年3月期の業績予想では売上高は前年を超えるものの、営業利益は減益の予想。第一四半期での開発・運営事業の増加は一時的なズレという認識だ。
■レノバの事業内容は?
レノバの事業は再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)を前提に事業をおこなっている。レノバの社長はコンサルティング会社のマッキンゼー出身で、会長には千本氏がつとめる。千本氏は京セラ創業者の稲盛氏といっしょにKDDIを創業し、その後、イー・アクセスとイーモバイルを立ち上げた起業家だ。
現在のレノバは太陽光発電の比重が高い。太陽光発電は固定買取価格が高めの36円~40円/kWhのものが多く、2034年~2039年頃までこの単価がつづく予定だ。いっぽう、バイオマス発電は24円~32円/kWhと太陽光発電よりも単価が低い。レノバの発電量はこれから3年~4年かけて3倍ほど増えるものの、太陽光発電とバイオマス発電の構成割合の変化により、売上高と利益率は発電量の伸びほどは高くならない見込みだ。バイオマス発電の利益率は20%前後の予想で、太陽光発電の30%~40%には届かないからだ。
■これから運転開始される発電所
現在のところ、レノバでは太陽光発電2か所、風力発電1か所、バイオマス発電4か所の運転開始が計画されている。太陽光発電のFIT価格が大きく下落したため、買取価格が高値で推移しているバイオマス発電に移行した形だ。株価にどのような影響がでるのか?
レノバの現在の時価総額は約850億円、予想PERは100倍を超えているものの、4年後には発電量が3倍ほどに増え、営業利益は72億円(2020年3月期)から倍増することは予想できる。これから数年のあいだ、株式市場が順調な売上高と営業利益の増加をポジティブにとらえてくれれば、株価もここから上昇していくと思われる。売上高500億円、営業利益150億円を出すことができれば、PER20倍前後の時価総額2,000億円は見えてくるのではないか。
■レノバの株価の行方は?
レノバの株価は安定的に推移している。時価総額は約850億円と一見すると割高に見えるものの、これから数年後に発電量が3倍ほど上昇することは確実だ。その点を考慮すると、レノバの株価に割高感はまったくない。心配されるのは、FIT制度と天災だ。政府による固定買取価格がなくなることが見えたとき、たとえ、安定的に利益を出していても、投資家に事業モデルの先行きに不安感を持たれ、株価が下落する可能性はある。発電事業のため、天災リスクが消えることはない。
レノバは発電事業については業績見通しを予想できるものの、事業開発報酬である開発・運営事業の見通しが見えない。決算説明資料で開発・運営事業の内容や見通しについては、もう少し開示してほしいところ。また、発電事業以外にも自治体向けの小売売電をしているホープのように、電力自由化の波にのったトレーディング事業などの新規事業への参画を期待したい。再生可能エネルギーの発電および運営で培った技術やノウハウをいかして、事業領域の拡大に期待したい。
レノバは、たとえば、御前崎港(静岡県)のバイオマス発電では、中部電力、三菱電機クレジット、鈴与商事などと一緒に事業をおこなっている(それぞれが出資をしている)。石巻(宮城県)のバイオマス発電では、東京ガス、みずほリースなどと共同で出資をしている。このように大手企業と事業を進めているため、レノバの技術力や事業性には安心感を持つことができ、長期投資には向いている銘柄かもしれない。
以 上