「転送コム」「Buyee」などのネット通販に関連するサービスやブランド品の中古宅配買取サイトの「ブランディア」など多角的に事業を展開しているBEENOS(ビーノス)。売上高の増加は前年比プラス1ケタ台と成長性の鈍化は見られるものの、ネット通販関連のサービスで安定的に利益を稼ぎつつ、余剰資金を活用して投資事業であるインキュベーション事業で大きな利益を稼いでいる企業だ。BEENOSの事業内容と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2020年11月6日時点)
- 株価:2,155円
- 時価総額:287億円
- 予想PER:未定
- PBR:2.44倍
- 予想配当利回り:未定(2020年9月期ベースでは0.92%)
- 自己資本比率:48.3%
- 会計基準:日本基準
■BEENOSの業績は?売上高の状況は?
BEENOSの2020年9月期の売上高は258億円(前年比+2.4%)、営業利益33.8億円(前年比+97.7%)と大幅な増収増益となった。売上高の内訳をみると、投資事業であるインキュベーション事業が前年比+70%増であり、この投資事業の伸びがなかったら実質的には売上高減となっていた。企業によっては投資事業を営業外損益に計上するケースがあるものの、BEENOSは事業セグメントのひとつとして投資事業をおこなっているため売上高として計上している。
投資事業は株式市場などの相場影響を大きく受けるため、その影響を除いてBEENOSの事業損益をみる必要がある。2020年9月期において、投資事業の38.4億円の売上高を除くと、売上高減になっていることに注意が必要だ。とくに、リテール・ライセンス事業は前年比約18.8%の減収となっている。
■BEENOSの営業利益推移は?
BEENOSの2020年9月期の営業利益は33.8億円。投資事業の24.8億円を除くと、約9億円の営業利益となる。投資事業(インキュベーション)は、出資先の売却ができるかどうかで損益が大きくブレるため、企業の成長を見るときには除外するのが妥当だろう。BEENOSの営業利益をセグメント別にみると、投資事業の利益は好調、子会社であるデファクトスタンダードの展開する中古宅配買取サイトの「ブランディア」のバリューサイクル事業の売上高は122億円あるものの、なんとか1億円の黒字(売上高は前年比△7.5%減収)。
タレントや有名人などとライセンス契約を結び、商品企画してグッズなどを展開する「モノセンス」のリテール・ライセンス事業は売上高40億円で赤字。「転送コム」「Buyee」などのクロスボーダー事業は売上高59億円、営業利益16.9億円と高収益で好調だ。
BEENOSは複合的に事業をおこなっていて、決算短信の数値をそのまま理解しては判断を間違ってしまう。いまは投資事業であるインキュベーションが好調であるものの、「ブランディア」や「モノセンス」などの低収益事業を抱えていることを見逃してはならない。
■好調なBuyee、日本人に馴染みのないサービス!
BEENOSのクロスボーダー事業の成長を引っ張っているのは「Buyee」だ。前年比+48.7%の成長をつづけている。「Buyee」は国内顧客を主な顧客対象にしておらず、海外向け(海外在住の日本人含む)にヤフオク、ヤフーショッピング、メルカリ、楽天市場、ZOZOTOWNなどの代理購買のサービスを提供している。海外にいながら日本のネット通販を利用できるように、代理購買・発送などを「Buyee」が担っているというわけだ。
■BEENOSの投資事業は?
BEENOSのインキュベーター事業である投資事業はどのような状況なのか?出資先は日本だけでなくインド、東南アジア、アメリカなど幅広い。基本的には出資比率は10%以下が多いものの、10%以上の出資先も3件ある。2020年9月末時点の出資先の時価総額は195億円(簿価39億円)、そのうち155億円が含み益と決算補足資料で公表している。あくまでの含み益であり、出資持分の売却をしてこそ利益が実現するので過大な期待は禁物だ。
■BEENOSの株価の行方は?
BEENOSは2020年11月6日にストップ高となった。2020年9月期の決算が好調と受け取られ、ポジティブサプライズとなったからだ。BEENOSの時価総額は約290億円で割高な株価ではないものの、投資事業の一時的な利益を除くと実質的には営業利益9億円の事業会社とみる見方もある。クロスボーダー事業は事業の成長率は前年比+20.5%、営業利益率は28.5%と好調だ。引き続き、クロスボーダー事業が伸びると考えるのであればホールドで問題ない。
個人的には、クロスボーダー事業と投資事業だけのBEENOSのほうが利益率と成長性が高く、株価的には高く評価されるのではないか?2020年1月に株式交換でデファクトスタンダード(ブランディアを運営)を完全子会社にしたものの、BEENOSの企業価値にプラスになったのか疑問は残る。
以 上