医療従事者向けの人材採用サービス「ジョブメドレー」やオンライン診療「CLINICS」、調剤薬局向けサービス「Pharms」など医療ヘルスケアのITサービスを提供しているメドレー。新型コロナウイルスの感染拡大により、日本政府もオンライン診療(遠隔医療)やオンライン服薬指導などの規制緩和を実施し、在宅などでの医療サービスの提供拡大を後押ししている。メドレーは年平均成長率30%を目指して事業を拡大している。今後の業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年1月22日時点)
- 株価:5,840円(10年来高値:7,370円)
- 時価総額:1,804億円
- 予想PER:400.8倍
- PBR:18.8倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:78.2%
- 会計基準:日本基準
■メドレーの業績は?
メドレーの2020年12月期の第三四半期の売上高は52億円(前年同期比+42.2%増)、営業利益は5.4億円(前年同期比+26.2%増)の増収増益となった。メドレーの売上総利益率は+70.6%、営業利益率は+10.4%となっている。メドレーは売上高の成長性をCAGR(年平均成長率)+30%を目標としており、順調に売上規模が増えていけば、高い売上総利益率により爆発的に営業利益が高くなる見通しだ。
メドレーにかぎらず、ここ最近、株価が急騰しているITサービス企業の売上総利益率はおおむね高い。たとえば、医療ヘルスケアIT企業の筆頭であるエムスリーの売上総利益率は+60%、会計クラウドのfreee(フリー)は+81%、名刺サービスのSansanは+87%。
■メドレーの事業内容・サービスは?
メドレーはどのような事業をおこなっているのだろうか?メドレーは人材プラットフォーム事業として、「ジョブメドレー(JobMedley)」という人材サービス事業をおこなっている。医療従事者向けの転職サイトだ。メドレーが狙っているのは大手競合他社がいる医師・看護師・薬剤師ではなく、残りの医療従事者向けの市場をターゲットにしているのが特徴だ。たとえば、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、助産師などだ。
成果報酬型のサービスで、オンライン上でサポートすることにより、一般的な人材紹介会社が年収の20%~35%の成果報酬を得るところ、メドレーは2%~13%の成果報酬を設定している。この成果報酬でコストを回収できるか疑問はあるが、市場シェアを取るための現時点のコスト戦略の可能性はある。
医療プラットフォーム事業では、オンライン診療(遠隔医療)の「CLINICS」とオンライン服薬指導の「Pharms」が事業の中心だ。新型コロナウイルスの影響により規制緩和が実施され、オンライン診療・服薬指導ともに追い風だ。従来は遠隔医療に高い制限があったものの、いまは時限的ではあるが初診からオンラインでの診療が可能だ。
■オンライン医療のビジネスモデルは?
オンライン診療「CLINICS」とオンライン服薬指導「Pharms」ともに医療機関や調剤薬局からのシステム利用料(初期費用と月額費用)を受領するビジネスモデルとなっている。いかにメドレーのITサービスを導入してもらうかが重要な成功のポイントになっている。「Pharms」を導入している調剤薬局チェーンはアインホールディングス(約1,100店舗)、クラフト(1,000店舗)、クオール(800店舗)、総合メディカルホールディングス(700店舗)など大手チェーンで確実に導入が増えている。
■メドレーの株価の行方は?
メドレーの時価総額は約1,800億円。2020年3月のコロナショック後、医療ヘルスケアのIT企業の時価総額はどんどん高くなっている。たとえば、エムスリーは約7兆円、メドピアは約1,700億円、ケアネットは約500億円。予想PERは100倍を超えているケースも多く、業績や株価指標などのファンダメンタルズでは適正な株価が見えなくなっている。
メドレーについては、オンライン医療という成長分野であり、これから市場がどこまで広がっていくか見えず、期待が先行している。5~10年後には在宅医療(遠隔医療)があたりまえの世界が来る可能性もあり、いまの株価が適正か見えない。ただ、メドレーのいまの業績をみると間違いなく割高だ。時価総額1,800億円であれば、成長期待としてPER40倍と考えると、営業利益30~50億円くらいはほしいところ(メドレーの2020年12月期の営業利益計画は6.3億円)。
以 上