衛星をつかった「スカパー」を中心に有料多チャンネル放送事業をおこなっているスカパーJSATホールディングス(以下、スカパーJSAT)。1994年11月の衛星運営・放送会社。最近は動画配信サービスのAmazonPrimeTV、AbemaTV、Hulu(フールー)、ネットフリックス、U-NEXTなど多く、スカパーJSATは苦戦しているものと思われたものの、いまだに加入件数300万件と大きな規模を維持。スカパーJSATの業績と株価はどうなるのか?
■基本情報(2022年3月11日時点)
- 株価:414円(10年来高値:806円)
- 時価総額:1,231億円
- 予想PER:9.2倍
- PBR:0.5倍
- 予想配当利回り:4.34%
- 自己資本比率:64.6%
- 会計基準:日本基準
■スカパーJSATの業績は?
スカパーJSATの2022年3月期の第三四半期の売上高は884億円(前年同期比△15.2%減)、営業利益162億円(前年同期比△1.9%減)の減収減益。売上高の大きな減少は「収益認識に関する会計基準」を適用したため△156億円の影響があり、実質的な売上高は1,040億円とほぼ前年同期水準となっている。
スカパーJSATの売上総利益率は+42.9%(前年同期は+38.0%)、営業利益率は+18.3%(前年同期は+15.9%)と「収益認識に関する会計基準」の適用による売上高減により比率で見ると改善しているように見える。
■スカパーJSATの事業内容は?
スカパーJSATというと衛星放送(メディア)のイメージが強いものの、宇宙事業のほうが収益の柱になっている。宇宙事業はスカパーJSATの保有する16機の通信衛星がアジア全域、オセアニア、ロシア、中東、ハワイ、北米をカバーしており、災害対策、映像の伝送、データ送受信、海上利用、航空機Wifiなどインフラとしてビジネスで利用されている。
宇宙事業の2022年3月期の第三四半期の売上高は430億円、営業利益110億円(前年同期+9億円)、衛星放送のメディア事業は売上高533億円、営業利益58億円(前年同期△12億円)となっている。
メディア事業は、「スカパー!」を中心としたサービスで累計契約者数299.3万件で減少傾向がつづいている。競合他社である動画配信サービスが台頭してきており、複数チャンネルのサービスより、オンデマンド配信(自由に見たいものをみれる)のほうがニーズが高い。
■スカパーの動画配信サービス「SPOOX」!
スカパーJSATも動画配信サービスに参入した。「SPOOX(スプークス)」というサービスで、映画、ドラマ、アニメなど約30,000本が見放題、2022年2月2日からスタート。月額990円(税込)で1契約で3端末まで同時接続可能だ。
他の動画配信サービスは、U-NEXTは作品数22万本以上(月額2,189円)、Huluは作品数10万本以上(月額1,026円)、Netflixは作品数は非公開(月額990円~)、dTVは作品数12万本以上(月額550円)。
SPOOX(スプークス)の作品数は3万本とそれほど多くないように見えるものの、自分の好みにあった作品が多ければ問題ないだろう。ポイントは1契約で3端末まで同時接続可能であるため、家族で共有してみることができる。サービス自体はNTTグループが運営する「ひかりTV」がサポートしているようだ。
■スカパーJSATの強みは?
スカパーJSATはメディアのイメージが強いものの、企業の価値としては宇宙事業が大きな強みになっている。動画配信サービスはコンテンツの調達価格や競争激化などで伸びる分野ではないと考える。動画配信サービスがコモディティ(一般化)しており、新しい「SPOOX」で大きく利益を出すことは難しい。
いっぽう、宇宙事業による衛生事業により、テクノロジーの発展によるインフラサービスとして価値を提供し続けることができるのは大きい。ただし、これまでの業績をみると、宇宙事業も事業規模が増加しておらず、何か成長戦略の実現が必要だ。
■スカパーJSATの株価推移は?
スカパーJSATの時価総額は約1,200億円。株価指標的には割安感がある。ただし、成長性が乏しいため、妥当な株価水準ではないだろうか。予想配当利回りが4.0%超あり、ここから大きく下がる可能性は低い(利益もしっかり出ているので)。
株式相場の地合い次第で株価が2倍になる可能性はあるものの、3~5倍と大きく伸びるには新しい事業で業績の改善が必要だ。宇宙事業に期待できるものの、マネタイズをどのようにしていくかが課題だ。メディア事業は伸びていくものではないが、安定的に利益を稼げるのは大きい。
以 上