原子力発電の泊発電所が止まったままで業績的にきびしい状況がつづいている北海道電力。火力発電と水力発電に頼る経営がつづいている。しかしながら、2021年1月28日に北海道電力は業績予想の上方修正を実施した。修正理由は「12月中旬以降の寒波の影響による小売販売電力量や他社への販売電力量の増加など、至近の収支動向を踏まえ、2020年10月28日に公表しました業績予想を修正しました」としている。この修正は日本卸電力取引所(JEPX)の2020年12月中旬以降のスポット取引価格の高騰の影響なのか?
■基本情報(2021年2月5日時点)
- 株価:462円(10年来高値:1,547円)
- 時価総額:995億円
- 予想PER:3.8倍
- PBR:0.5倍
- 予想配当利回り:2.16%
- 自己資本比率:12.6%
- 会計基準:日本基準
■北海道電力の業績は?
北海道電力の2021年3月期の第三四半期の売上高は5,106億円(前年同期比△2.8%減)、営業利益288億円(前年同期比+79.5%増)の減収増益となった。北海道電力の営業利益率は+5.6%と高くないものの安定的に利益を出している。前年比では新型コロナウイルスの影響により販売電力量の減少が売上高の減少の要因となった。いっぽう、発電所の修繕費減(+56億円)、燃料などの調達効率化(+51億円)などが利益改善の要因だ。
■業績見通しの上方修正!JEPX価格の影響か!?
北海道電力は2021年3月期の業績見通しを上方修正した。公表資料をみると、寒波による小売・他社販売電力量などの増加により+110億円の改善としている。しかしながら、売上高増と営業利益増のバランスをみるかぎり、2020年12月中旬からのJEPXスポット取引価格の高騰がプラスに影響しているはずだ。北海道電力は首都圏エリアでの電力販売に力を入れている。福島県にある福島天然ガス発電所には9%出資しており、首都圏エリアでの電力販売に活用している。
今回のJEPXスポット取引価格の高騰により、東京ガスは△125億円の下方修正を織り込んだ。KDDIは「auでんき」で新電力を展開しており、電力事業として2020年10月~12月のあいだに△40億円のマイナス影響があったと公表している。ガス卸大手で新電力事業をおこなっているミツウロコホールディングスは△25億円の業績下方修正を実施し、電力卸価格の高騰を理由にあげている。
ガス卸大手のミツウロコホールディングス、JEPX価格高騰で業績下方修正に!(2021年2月6日投稿)
都市ガス最大手の東京ガス、JEPX価格高騰により業績予想を下方修正!(2021年1月30日投稿)
小売電気事業者(新電力)が今回のJEPXの価格高騰で苦しんでいるなか、反対に利益を大きくあげている企業がいるはずであるが、ニュースでは企業名など話題となっていない。高値で電力を購入した新電力と反対に、高値で電力を販売した企業が存在する。北海道電力の業績修正で明記されていないが、大規模な発電設備をもつ旧一般電気事業者(大手電力会社)が利益を出していると考えるの妥当な線だろう。
■北海道電力の株価推移は?
北海道電力の時価総額は約1,000億円。2020年12月を底に上昇トレンドに転じている。北海道電力は予想PERは約4倍と低く、株価指標的には割安だ。ただし、北海道電力の配当利回りをみると、ほかの電力会社より低い2.2%前後にとどまる。東北電力の配当利回りは4.3%、中部電力は3.8%、関西電力は4.7%、九州電力は3.8%、四国電力は4.0%となっている。
北海道電力は今後の成長性が高くないのも難点だ。太陽光発電やバイオマス発電などに新しい分野に投資(出資)をするものの、2030年度までに目指す経営目標は連結経常利益450億円以上となっている。すでに2020年度に連結経常利益300億円の業績見通しであり、10年後の目標がいまの1.5倍というのは期待値が低い。ただし、北海道電力が割安であることは変わらず、これ以上は株価が下落する心配はそれほどないかもしれない。
以 上