ヘルスビッグデータを活用したビジネスや遠隔医療（遠隔画像診断サービス）、調剤薬局支援などを手掛けるJMDC。ノーリツ鋼機がJMDC株式の約半数を保有している。もともとは日本医療データセンターという企業名だったものの、2018年7月にJMDCに商号変更を実施している。医療関連のITサービス会社といえばエムスリー、メドピア、ケアネット、メドレーなどが競合にあたる。メドレーと並び、株式市場では新しい存在のJMDC。JMDCのビジネスと株価の行方は？
■基本情報(2021年1月22日時点）
- 株価：5,550円（10年来高値：6,220円）
- 時価総額：3,068億円
- 予想PER：146.1倍
- PBR：29.87倍
- 予想配当利回り：0%
- 自己資本比率：29.9%
- 会計基準：IFRS
■JMDCの業績は？
JMDCの2021年3月期の第二四半期の売上高は69.8億円(前年同期比+24.0%増）、営業利益11.1億円（前年同期比+24.7%増）の増収増益となった。JMDCの売上総利益率は+54.3%、営業利益率は+15.9%と高い。JMDCは会計基準としてIFRS基準を採用しているため計上している、のれん（76億円）の償却計上がないことに留意が必要だ。のれんと無形資産を合計すると約100億円ほどB/Sに計上されている。 上場会社でもまだまだ日本基準を採用しているケースが多く、他社との会計基準による差異を抑えておくことが必要だ。
■JMDCの事業内容は？
JMDCはどのような事業をおこなっているのか？JMDCはヘルスビッグデータ、遠隔医療（遠隔画像診断サービス）、調剤薬局支援の大きく３つの柱の事業をおこなっている。もっとも売上高が高いのはヘルスビッグデータだ。ヘルスビッグデータ事業は、製薬会社や医療機関、保険会社などにヘルスケアのデータを提供し市場調査や病院経営、新商品の開発に使われている。データとしては、保険者レセプト（医療費情報）、健診、検査値、電子カルテなどだ。
遠隔医療では、エムスリーやメドレーなどが展開しているオンライン診療（在宅からの受診）ではなく、遠隔画像診断サービス（Tele-RADサービス）を提供している（子会社のドクターネットが提供している）。日本では放射線診断専門医が不足しており、契約医療機関と専門医をリモートで接続するサービスだ。遠隔画像診断サービスは競合他社が多く、セコム医療システムやエムネス(MNES）、そしてエムスリーも参入している。JMDCの遠隔画像診断サービスの売上高は前年対比で減少しているのに注意が必要だ。
■JMDCと親会社ノーリツ鋼機の関係は？
JMDCはもともとは日本医療データセンターという商号で事業をおこなっていたものの、2018年7月にJMDCに商号変更している。JMDCの親会社はノーリツ鋼機で約50%の株式を保有している。JMDCの時価総額は約3,000億円、ノーリツ鋼機は約800億円のためJMDC持分(50%）だけで1,500億円の価値がある親子間のアンバランスな企業価値となっている。このようなケースは多く、たとえば、パソナ（時価総額：800億円）が株式の50.7%を保有するベネフィット・ワンの時価総額は約5,000億円で保有分だけで2,500億円の価値がある。
ノーリツ鋼機は、もともとオリンパスの子会社だった4社を2013年に買収し、そのなかの１社がJMDC（日本医療データセンター）だった（購入額は約60億円）。現在のJMDCの社長とCFO（財務担当役員）はノーリツ鋼機の出身だ。JMDCはヘルスビッグデータ事業しては日本医療データセンター、遠隔画像診断サービスはドクターネット、調剤薬局支援はユニケソフトウェアリサーチという大きく３つの会社をノーリツ鋼機が合併させて創りあげた会社だ。そのため、JMDCは、買収額と資本の差額である、のれん等の資産が大きく借入金は100億円を超え、自己資本比率は低かった。2020年11月に約100億円の増資をおこなった。
■JMDCの株価の行方は？
JMDCの時価総額は約3,000億円。2020年3月のコロナショック後、医療ITサービス企業の株価はどこも上昇トレンドが止まらない。たとえば、エムスリーの時価総額は約７兆円、メドピア、メドレー、ケアネットなども高い。JMDCの株価は株価指標的には高いものの、コロナウイルスの拡大がつづく限りは医療ITサービス企業の株価は高止まりする可能性が高い。
JMDCを実質的に運営しているのは親会社であるノーリツ鋼機。ノーリツ鋼機は企業再編やベンチャー投資を得意とする会社。ジーンテクノサイエンスやPKSHA Technologyなど上場させて売却するケースも少なくない。JMDCの事業拡大や切り売りなどノーリツ鋼機がコントロールしているので動向には注意が必要だ。
以 上