クラウドソーシング仲介をおこなっているランサーズ。ランサーズは、単純作業などのクラウドソーシングという言葉よりもオンラインスタッフィングという名称に変更して利用している。中小企業の開発、デザイン、バックオフィス業務をオンラインでスタッフをマッチングするオンラインスタッフィング。競合のクラウドワークスとともに儲かるビジネスモデル構築に苦戦中。ランサーズの業績と株価の行方はどうなるのか?
人材マッチングサービスのクラウドワークス、成長停滞も営業利益は黒字に!(2021年4月18日投稿)
■基本情報(2021年4月23日時点)
- 株価:685円(10年来高値:1,638円)
- 時価総額:107億円
- 予想PER:1,070倍
- PBR:5.99倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:55.2%
- 会計基準:日本基準
■ランサーズの業績は?
ランサーズの2021年3月の第三四半期の売上高は27.9億円(前年同期比+14.1%増)、営業利益△14百万円(前年同期は△1.7億円の赤字)と増収であるものの赤字縮小という結果。ランサーズの流通総額は67億円(前年同期比+13.3%増)と安定的に成長している。売上総利益率は+49.6%(前年同期は+53.1%)と高めであるものの、一般管理費が重い状況だ。
■ランサーズのビジネスモデルは?
ランサーズはインターネット上で個人のフリーランサーと企業(主に中小企業)をマッチングするプラットフォームを構築している。いわゆる、クラウドソーシングのマッチングサイトだ。ランサーズでは高単価のオンラインスタッフィング(OS)と低単価のクラウドソーシング(CS)と区分し、現在では流通総額の約9割が高単価のオンラインスタッフィングと公表している。
ランサーズの流通総額に対するテイクレート(取引手数料割合)は14%~38%。ランサーズの売上高の約7割を占めるマーケットプレイス事業(マッチング事業)は19%前後となっている。ランサーズのテイクレートを改善することは容易ではないため、いかに流通総額を増加させるかが成功のキーとなる。そのためには日本の定年制度、労働組合、新卒一括採用などの雇用制度を改革し、フリーランスの割合を増やす流れが必要だ。ちなみに、流通総額×テイクレート=売上高の公式が成り立つ。
■ランサーズのサービス(仕事)内容は?
ランサーズで委託できる作業は、開発・運用(Webシステム開発、ホームページ作成など)、クリエイティブ制作(ロゴ作成、名刺作成、動画作成など)、バックオフィス業務、簡易作業(ブログ記事作成など)に分かれる。
クラウドソーシングは8年くらい前から注目を集めだし、クラウドワークスとランサーズが業界を引っ張ってきた印象がある。「これからはクラウドソーシングの時代」とインパクトはあったものの、マーケットはそれほど伸びずに両社の業績も厳しい状況がつづいている。ランサーズのビジネスモデルはECショッピングサイトと同様で、ある程度の損益分岐点を超えると爆発的に利益が出るモデル。しかしながら、その市場規模はそれほど大きなものではなかったかもしれない。
最近のクラウドITサービス(freeeやSansanなど)や新興ECサイト(マクアケ等)は先行投資としての広告宣伝費を投入していて低収益や赤字であることは少なくない。いっぽう、ランサーズは年間2億円ほどの広告宣伝費となっており、先行投資のため低収益となっているわけではない点に注意が必要だ。
■たしかに増加する流通総額
ランサーズの2021年3月期の流通総額は93億円(前期比+15%)、売上高38.8億円(前期比+12%)を計画している。売上高100億円を達成するには流通総額は250億円は必要になるだろう。競合他社のクラウドワークスの流通総額は約130億円の計画だ。
ランサーズの流通総額の内訳をみると、単純マッチングのマーケットプレイス事業は前年同期比+25%増加しているものの、マネージドサービス事業(同社が受託管理)とテックエージェント事業(同社が仲介)はほぼ増減はない。ランサーズの顧客者数は約330社、顧客の年間利用額は平均22.3万円。雇用環境が一変しないかぎり、顧客の年間利用額が急増することはない。
■ランサーズの株価の行方は?
ランサーズの時価総額は約110億円。競合であるクラウドワークスは約240億円。たしかにクラウドワークスにくらべると割安感はあるかもしれないが、業界自体の成長性に疑問が残る。これからランサーズが発展していくためには、フリーランスの転職支援など新規事業への参入が必要だ。ランサーズの収益構造を変えていかないかぎり、業績が大きく伸びることは難しいかもしれない。
今後起こりえるストーリーとしてはクラウドワークスとランサーズの合併だ。市場規模がそれほど大きくないものの、2社で取り合いになっている。両社が合併して効率的な組織を構築すれば企業価値はそれなりに評価されるかもしない。
以 上