「SIXPAD（シックスパッド）」「ReFa（リファ）」などトレーニング器具や美容器具などを販売するMTG。斬新なデザインなどで上場前から注目を集めたMTG。ところが、2019年に連結子会社のMTG上海にて不適切会計が発生した。中国の電子商取引(EC)規制により、転売目的の購入が厳しく規制され、中国・韓国の女性に人気の高かった「ReFa」ブランドの美容ローラーの販売が大きく落ち込んだことが背景だった。業績回復を続けるMTGの株価の行方はどうなるのか？
■基本情報(2021年4月23日時点）
- 株価：1,558円(10年来高値：8,120円）
- 自己資本比率：619億円
- 予想PER：68.4倍
- PBR：1.77倍
- 予想配当利回り：0%
- 自己資本比率：84%
- 会計基準：日本基準
■MTGの業績は？
MTGの2021年9月期の第一四半期の売上高は109億円(前年同期比+17.5%増）、営業利益14.1億円（前年同期は△2.3億円の赤字）と増収黒字転換となった。MTGの売上総利益率は+75%（前年同期は+67%）と高い。新型コロナウイルスによる自宅でのトレーニングなどの需要が高まり、MTGのトレーニング器具や美容用品の販売が好調だ。MTGの高い売上総利益率を見ると、健康食品や化粧品と同様に広告宣伝費をかけてブランド化することで高値で販売する戦略をとっていることがわかる。
■MTGの主力ブランド「SIXPAD（シックスパッド）」！
MTGは「SIXPAD」ブランドでトレーニング器具を販売している。2020年9月期の実績でみると、全体の41%の売上は「SIXPAD」ブランドによるもの。具体的にはEMS製品（Electric Muscle Stimulation）、トレーニングウェア、フィットネス器具、サプリメント（健康食品）を販売している。
特にEMS製品は「SIXPAD」シリーズを代表する製品で、筋肉に電気の刺激をあたえて筋力トレーニングをおこなう。東急ハンズなどでも販売されており、一時はかなり注目を集めた。「SIXPAD」は、クリスティアーノ・ロナウド選手（サッカー選手）と共同開発ブランドという位置づけで、一時期はテレビCMを見ることも多かった。2020年9月期には「SIXPAD」シリーズとして、過去最高の142億円を売り上げている。
■MTGを支える「ReFa（リファ）」ブランド！
MTGを代表するもう一つのブランドは「ReFa」シリーズだ。2020年9月期の売上高は136億円でMTG全社の39%だった。「SIXPAD」と並ぶMTGを支える主力ブランド。2018年9月期は中国・韓国での爆買いがあり過去最高の321億円を売り上げていた。2021年9月期は好調で１Q時点で57億円を「ReFa」ブランドで売り上げている。新製品のシャワーやドライヤー・アイロンシリーズが好調だ。
「ReFa」シリーズは美容器具だけでなく、スキンケア商品も販売している。たとえば、「リファジュエルマスク」はジェル化粧水で6,050円（税込）で販売されている。MTGの製品は斬新なデザインとコンセプトがあり、他のメーカーとは一味違う価値を提供している。
■MTGのセグメント別損益は？
MTGはブランド別の損益を公表しているのではなく、販売チャネル別にセグメントを分けている。もっとも売上比率が高いのはダイレクトマーケティングという自社や他社(Amazon、楽天など）のECサイトのルート。次に売上比率が高いのはリテールストア。リテールストアは家電量販店や百貨店、ショッピングセンターなどの販売だ。
次にプロフェッショナルという美容室、エステティックサロン、フィットネスクラブなどでの販売だ。総合スポーツジムのセントラルスポーツでは時々、MTG専門の販促員が商品を紹介しているケースをみかけた。いっぽうで、新規事業のスマートリングやスポーツジム事業は赤字で苦戦している。
■MTGの販管費は？
MTGは化粧品や健康食品などの通販企業と同様にマーケティング費（広告宣伝費、販促費）に資金を投入している。2021年9月期の第一四半期だけで約25億円を投入している。MTGの販促費の売上高比率をみると、2020年9月は17.8%、2019年9月は21.6%とだいたい20%前後をブランド構築の広告宣伝費に投入している。
MTGのビジネスモデルは、研究開発型のメーカーというよりは、マーケティング中心のメーカーと言ったほうが良い。商品は違うものの、通販企業のプレミアアンチエイジングや北の達人コーポレーション、新日本製薬などと同じようなビジネスモデルとなっている。広告宣伝費を投入し、販促やブランド構築を進めるマーケティング手法を取る。これらの製品自体は原価率が低く、付加価値であるブランドをつけて販売する戦略だ。
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■MTGの株価の行方は？
MTGは上場時には時価総額3,000億円を超える大型IPOだった。現在の時価総額は約600億円（コロナショック時は時価総額200億円）。MTGの業績回復をみると、これから株価も上昇していくと期待してしまう。MTGは広告宣伝費を積極的に投入しており、業績に前向きな姿勢が見える。実績としても2021年9月期の第一四半期で通期の営業利益を達成している。このまま行くと、業績の上方修正が出ると思われる。そもそも、しっかりブランドを構築し、顧客をつかんでいるのであれば、MTGは高い営業利益を出すことが可能だ。
もうひとつ、2021年1月より「BLAZE」ブランドとして、３輪EVデリバリーバイク「EV DELIVERY」（税込54.8万円）を販売。非接触スマートリング（指輪のようなもの）で、充電不要、完全防水でキャッシュレス支払可能な新製品の販売を計画している。MTGは新しいコンセプトの商品を生み出すことがうまく、社会の新しいブームを創ることを期待させる企業。
株価チャート的にも、ここから下落するというよりも、どこまで上昇するのか期待させる右肩あがりを始めたチャートとなっている。2021年9月期の第一四半期の営業利益14億円×4四半期で営業利益56億円は十分狙える位置にある。過去の繰越欠損金があり法人税は当面支払う必要はないため、うまくいけば実績PERは10倍を切るかもしれない。そのときには株価の見直しが入っているはずだ。
以 上