印刷、広告、物流のプラットフォーム事業やダンボールワンに出資をしているラクスル。BtoBのプラットフォーム事業の領域を拡大しつづけて、時価総額は上場来最高値の約1,800億円まで上昇。グロース銘柄は足元の利益がそれほど出ていなくても、将来の成長を株価が織り込み、高い株価がつづいている。ラクスルもその中のひとつ。ラクスルの株価と業績はどうなるのか?
広告プラットフォーム「ノバセル」好調、ラクスルは前年比の売上好調つづく!(2021年6月12日投稿)
ネット印刷仲介のラクスル、業績の上振れ期待か!?株価ストップ高に(2021年3月14日投稿)
■基本情報(2021年9月10日時点)
- 株価:6,130円(10年来高値:6,180円)
- 時価総額:1,761億円
- 予想PER:2,933倍
- PBR:23.2倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:34.1%
- 会計基準:日本基準
■ラクスルの業績は?
ラクスルの2021年7月期の売上高は302億円(前年比+40.8%増)、営業利益は+2.2億円(前年は△2.4億円の赤字)と増収・営業利益黒字転換となった。ラクスルの売上総利益率は+23.6%(前年は+22.9%)。ラクスルの最も重視している売上総利益額は71.5億円と前年の49.3億円から+45.1%の増加となった。
ラクスルの四半期ごとの売上高をみると、2021年7月期の3Qの売上高が90億円だったものの、4Qでは79億円と約11億円の減少となっている点が気になる。売上総利益も3Qの20.8億円から18.2億円に約2.6億円の減少となった。2020年7月期も3Q→4Qに売上高が下落しており、翌期の成長率を考慮した売上抑制か見えない点が気になる。
ラクスルはSaaS型(サブスクリプション型)のビジネスではなく、ネット通販などに近いリカーリングビジネスのため、確実に売上高が積み上がるビジネスモデルではない点に注意が必要だ。
■事業ごとの売上総利益率は?
ラクスルは印刷の「ラクスル」、広告の「ノバセル」、物流の「ハコベル」の3つの大きな事業をおこなっている。それぞれの売上総利益率は「ラクスル」が+31.1%、「ノバセル」が+16.1%、「ハコベル」が+15.2%となり、全社平均で+23.6%となっている。いまのところ、営業利益を稼いでいるのは「ラクスル」のみで、ほかは営業損失がつづいている。
ラクスルの2021年7月期の広告宣伝費は20.2億円。積極的にテレビCMを行っている点が目に付くはずだ。言い換えると、このテレビCMを削減することにより、営業利益が大きく変わる点に投資家が期待している側面ではないだろうか。
■ラクスルの株価の行方は?
ラクスルの時価総額は約1,800億円。予想PERなどの従来の株価指標では超割高な水準となる。いまはグロース銘柄(売上高の成長率の高い銘柄)は積極的に買われる相場であり、前年比+40%の成長率のラクスルも高値を追う可能性は高い。
ラクスルは2021年2月に増資をして約120億円の資金調達を実施。財務的には余裕があるため、当面は成長投資に集中しそうだ。ラクスルにかぎらず、メルカリ、ラクス、マネーフォワード、freee(フリー)などのグロース銘柄は利益を度外視して、成長性の面で株価は買われている。世界的な金融緩和からテーパリングに移る過程で、株価がどう動くか注意が必要だ。
日本の政治が動き、自民党総裁選の結果により首相がかわる。いま一番、首相に近いのは河野太郎氏。脱原発の主張により再生可能エネルギー銘柄のレノボ、エフオン、テスホールディングスなどの株価が急騰中。金融緩和と政治の行方次第で、株価は大きく乱高下しそう。ラクスルの株価の行方も相場次第ではないだろうか。
以 上