VTuber事業「にじさんじ」運営のANYCOLOR(エニカラー)、ビジネスモデルは?

 バーチャルYouTuberグループ「にじさんじ」を運営しているANYCOLOR(エニカラー)。10代~20代を中心に人気を集めるVtuberグループの「にじさんじ」。ANYCOLORが開発するスマートフォンアプリを使用して、YouTube Liveなどでライブ配信している。ゲーム配信やオリジナルグッズ販売など所属ライバーが付加価値をつけて提供している。5年くらい前なら全く想像していなかった事業モデルであり、新しいビジネスだ。

■基本情報(2022年12月23日時点)

  • 株価:5,500円(10年来高値:13,790円)
  • 時価総額:1,650億円
  • 予想PER:31.1倍
  • PBR:17.6倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:70.6%
  • 会計基準:日本基準

■ANYCOLORの業績は?

 ANYCOLORの2023年4月期の第二四半期の売上高は119.7億円(前年同期比+92.2%増)、営業利益は+43.1億円と高成長・高収益となった。ANYCOLORの売上総利益率は+43.9%、営業利益率は+36.0%。ベンチャー企業のなかでは極めて成長性も利益率も高い新しい事業モデル。

■ANYCOLORとは?「にじさんじ」とは?

 おそらく、ANYCOLORがどのような事業をしているか知っている人は少ないだろう。また、バーチャルYouTuber(VTuber)グループの「にじさんじ」を知らない人も少なくないだろう。特に、40代以上の人はほとんど自分の知らない世界かもしれない。

 「にじさんじ」とは、ANYCOLORが運営・監修しているバーチャルYouTuberのグループである。現在、日本国内の「にじさんじ」のVTuberは112人、海外は57人となっている。イメージとして、ヒカキンの所属するUUUM(ウーム)はYouTuberの所属事務所に対して、ANYCOLORはVTuberの所属する事務所というイメージだ。

ユーチューバー事務所のUUUM(ウーム)、営業利益目標は1年後ろ倒しに!(2021年7月18日投稿)

YouTuberを軸にしたプロモーション企業のUUUM(ウーム)、動画再生回数は低下!(2021年4月18日投稿)

■ANYCOLORの事業モデルは?

 ANYCOLORの収益は、①ライブストリーミング、②グッズ販売、③リアルイベント、の3つに大きく分かれる。ライブストリーミングは、YouTube(ユーチューブ)配信にともなうGoogleアドセンスによる広告収入、またメンバーシップ登録による会員費、そしてスパチャと呼ばれるSuper Chat(投げ銭)による収益だ。

 グッズ販売は、VTuberのグッズや企業とのタイアップ企画など。この収益が最も大きい。「にじさんじオフィシャルストア」にてデジタルグッズ(音声など)、アパレル、雑貨・小物、文房具、キッチン用品などを販売している。最後にリアルイベントによる収益だ。

 ANYCOLORは、タレント事務所(ホリプロ、ジャニーズ事務所など)、キャラクターグッズ(バンダイナムコ、コナミなど)を足し合わせたようなビジネスを行っている。まさか、バーチャルのキャラクターが年間200億円を超える売上高を計上しているとは数年前は予想できなかっただろう。

■ヒカキン所属のUUUMを超える成長力と収益力!

 ANYCOLORはやはりUUUMと比較する必要がある。UUUM(時価総額:156億円)の年間売上高は約280億円、営業利益は12億円前後を計画している。いっぽう、ANYCOLOR(時価総額:1,600億円)の売上高は225億円、営業利益77億円を計画している。

 ANYCOLORは成長力と収益力でUUUMを圧倒しており、時価総額は10倍の差がついている。大きな違いはグッズ販売だ。アイドルと化したVTuberに固定のファンがついており、Tシャツが4,000円と高価格で販売されている。おそらく、原価自体は400円くらいのため、まさにIP(知的財産)を活用した商品戦略となっている。ボールペンは850~2000円、クリアファイル500円など付加価値(利益率)が高い。

■ANYCOLORはどこまで成長するのか?

 ANYCOLORはどこまで成長するのか?正直、VTuberという新しいマーケットができて、いまは成長している過程だ。今後は競合他社などが入ってきたり、「にじさんじ」以外のVTuberがでてくるだろう。正直、どこまでマーケットが拡大するか見えないものの、ビジネスの流れとして新しい事務所が増えていくものと思われる。

 そのなかで、ANYCOLORだけが利益を独占できるものではないだろう。つまり、成長はどこかで止まる。ブランドビジネスと同じように、高いものでも顧客のロイヤリティーが高ければ、グッズなどを買ってくれる。ただ、5年・10年の単位でバーチャルなタレントを応援しつづけることはないのではないだろうか。

 日本国内の「にじさんじ」のYouTube再生時間は2021年~2022年はほぼ横ばいとなっている。英語圏が増えているものの、国内は再生時間の成長が止まって事は事実。ただ、グッズ販売などマーケティングで伸びており、成長軌道は変わっていない。「にじさんじオフィシャルストア」などで利用するANYCOLOR ID数は71.4万ID(前年同期は35.4万ID)と着実に増えている。なお、ANYCOLOR IDの82%は29歳以下となっている。男性36%、女性64%となっている。

■ANYCOLORの株価推移は?

 ANYCOLORの時価総額は約1,600億円。一時は4,000億円くらいまで上昇。めずらしい事業で投資家が飛びついた形だ。ANYCOLORの期待は海外市場。すでに英語圏の売上が成長しており、この領域は確実に伸びる。ただ、いつまで伸びるかは見えない。いっぽう、飽きられだしたら陳腐化は早いかもしれない。

 また、任天堂、ソニー、バンダイナムコ、スクエアエニックス、コナミ、カプコンなどのIPメーカー(ゲームメーカー)がVTuber領域に進出してくると一気に状況が変わるかもしれないことに注意が必要だ。

(画像1)ANYCOLORの株価推移

以 上

 

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