アトラシアン社のソフトウェアやSlack、Tableau（タブロー）などのクラウドサービスの導入支援をしているリックソフト。ライセンスの代理店販売とSI（システムインテグレーション）を組み合わせたサービスで堅調に業績を伸ばしている。今後はクラウド型のストック収益の比率と思われ、更に安定収益の基盤が構築されるだろう。顧客はANA、富士フイルム、ヤフー、GREEなど大手企業も多い。
アトラシアン製品などライセンス提供のリックソフト！ソフト問屋的な存在（2022年1月9日投稿）
■基本情報（2023年4月28日時点）
- 株価：1,617円（10年来高値：9,325円）
- 時価総額：73億円
- 予想PER：16.4倍
- PBR：2.96倍
- 予想配当利回り：0%
- 自己資本比率：54.1%
- 会計基準：日本基準
- 株主数：2,108人（2022年2月28日時点）
■リックソフトの業績は？
リックソフトの2023年2月期の売上高は56.2億円（前年比+30.5%増）、営業利益5.5億円（前年比+25.0%増）の増収増益。リックソフトの売上総利益率は+33.1%（前年は+35.5%）、営業利益率は+9.7%（前年は+10.1%）と堅調だ。
リックソフトの売上総利益は前年15.3億円→18.6億円と+3.3億円の増加。販管費は10.9億円→13.2億円と+2.3億円の費用増となり、差し引きで営業利益は前年4.4億円→5.5億円と+1.1億円の増加となった。売上総利益が増加しているものの、販管費の伸びも気になるところ。
■リックソフトの事業状況は？
リックソフトはアトラシアン社（Atlassian）のソフトウェア開発ツールの「Jira Software」や情報共有ツールの「Confluence」などのライセンスを提供するビジネスを行っている。また、SlackやTableau、workatoなどのツールの導入支援もおこなっている。アトラシアン社の製品はJavaやPythonなどのさまざまな開発言語に対応しており、拡張性があるのが特徴だ。
アトラシアン社はオーストラリアのシドニーに本社を置くグローバル企業で高い成長性を維持する企業。アトラシアンのツールを使用する企業は増加傾向だ。リックソフトは2009年からアトラシアンのパートナーとして日本市場を開拓。アトラシアン製品の活用に熟知した技術者が多いのが特徴だ。
■アトラシアンへの依存？
リックソフトはアトラシアン社に依存しているのは事実だ。決算説明資料をみると、いかにアトラシアン社に信頼されているかを記載しており、言い換えると、アトラシアン社と関係が悪くなるとリックソフトの事業モデルが成り立たなくなることは間違いない。ただ、アトラシアン社の認定資格者が25名おり、日本市場を一緒に開拓してきた自負があるのは間違いない。
リックソフトの従業員数は113名。そのうち、55名はエンジニア、38名は営業となっている。従業員の平均年齢は39.2歳、平均年収は607万円とIT企業と考えると、それほど高い給与水準ではない。
■リックソフトの財務状況は？
リックソフトの2023年2月末の財務状況をみると、現預金は30.7億円、前払費用は5.0億円となっている。いっぽう、有利子負債はゼロで、契約負債（前受金）が10.6億円となっている。簡単に言うと、財務状況は健全だ。
リックソフトのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+9.8億円のプラス、投資CFは△27百万円のマイナス、財務CFは+18百万円のプラスとなっている。営業CF増加の要因は、前受金である契約負債の増加が大きい。リックソフトは大きな設備が必要な企業ではないため、利益がそのままキャッシュに残るビジネスモデルであり、キャッシュリッチ企業になる利益構造となっている。いずれは、配当も期待できるだろう。
なお、リックソフトは上場時に約４億円しか資金調達をしていない。資金用途も人員採用関係となっており、資金需要がそれほど必要ないビジネスモデルとなっている。
■リックソフトの株価推移は？
リックソフトの時価総額は73億円。年間で約+10億円の営業CFを生み出す企業であり、ストック収益の要素も考えると、割安感はある。これからも堅調に成長していくだろう。そもそも、2019年2月の東証マザーズ上場時に公開価格4,000円、初値9,050円で時価総額は初値186億円となっていた。現状は公開価格を割れている状態。
一時は時価総額400億円くらいまで上昇しており、当面は売り圧力が強い状況がつづいてきた。ただ、上場から約３年が経過し、含み損をかかえた投資家の損切りも一巡したと思われる。
以 上