投資家や株主向けのコンサルティングを中心にビジネスを展開しているIRジャパン。業績は絶好調で前年比2桁の成長を見せている。IRジャパンは収益性も高く、この2年間で株価は10倍ちかくまで上昇。ところが、2021年2月4日に2021年3月期の第三四半期の決算を発表すると、株価は大きく下落。IRジャパンの業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年2月5日時点)
- 株価:14,910円(10年来高値:19,550円)
- 時価総額:2,660億円
- 予想PER:84倍
- PBR:45.98倍
- 予想配当利回り:0.57%
- 自己資本比率:79.0%
- 会計基準:日本基準
■IRジャパンの業績は?
IRジャパンの2021年3月期の第三四半期の売上高は60億円(前年同期比+17.9%増)、営業利益28.6億円(前年同期比+23.4%増)の増収増益となった。IRジャパンの売上総利益率は+84.9%、営業利益率は+47.6%と高い。IRジャパンの売上原価は外部委託する外注費などで売上高が伸びれば、高い利益額を計上できるビジネスモデルとなっている。
コンサルティング会社は製造業や商社などと異なり、在庫を持たず、固定費の負担が低い。売上高が伸びている間は、営業利益の増加が期待できるビジネスだ。ただ、売上高のベースは人海戦術的な企業サポートやレポート作成であり、売上規模が大きくなると、人材の育成に時間がかかり、高い成長率は期待できにくい側面がある。
■IRジャパンのビジネスは?
IRジャパンは投資家対応(IR)と株主対応(SR)のコンサルティングが全体の90%以上の売上を計上している。IRジャパンの業務は、たとえば、上場企業への株式公開買付によるTOBの対応や親子上場解消に向けた対応などにコンサルティングとして参画して手数料を稼ぐビジネスだ。ファンドなどからの株主提案などに企業側にたってアドバイスをする。
株式市場では敵対的TOBや自社株TOBまた株主提案の委任状争奪など発生した場合、IRジャパンにアドバイザリー契約として依頼がくる。IRジャパンは敵対的な株主などのアクティビスト対応や支配権争奪などの案件を多く抱えている。
■大型プロジェクトが鍵となる!
IRジャパンは大型プロジェクト(50百万円以上)の契約件数を公表している。大型プロジェクトの契約件数の伸びが重要で、決算短信を公表してから数週間後の決算説明資料で開示される。2021年2月4日に決算短信を公表し、株価は20%ちかく下落しているものの、2週間後くらいに公表される決算説明資料にある大型プロジェクトの契約件数が今後の株価の行方を左右するだろう。
■IRジャパンの株価推移は?
IRジャパンの時価総額は約2,700億円。2020年3月のコロナショック後、グロース株に資金が集中しているなか、IRジャパンも大きく株価を伸ばした企業のひとつ。米国の株式市場も好調で、大型のアップル、アマゾン、アルファベット(グーグルの親会社)などの株価も堅調だ。日経平均株価も2万9千円に届く水準まで上昇しているものの、日本のグロース株の最近の株価調整が気になるところ。グロース株の株価上昇を引っ張て来たエムスリーも高値から20%近く調整している。
株価は長期金利が上昇すると下がるもので、2020年夏ごろから米国の10年国債の利回りが上昇(国債価格は下落)が気になるところだ。IRジャパンの予想PERは80倍程度で、グロース株のなかで極めて高いわけではないが、決して割安な株価水準ではない。IRジャパンに期待する人は調整が終わるまで様子見が無難ではないだろうか。
以 上