集合住宅向けにインターネット接続サービスを提供するギガプライズ。名証セントレックスに上場している。東証一部のフリービッド(3843)はギガプライズの51.3%を保有している。ギガプライズはここ数年、前年比2ケタ成長をつづけ、2017年3月期に37.5億円だった売上高は、2020年3月期には137億円と3.6倍まで上昇。いっぽうで、売上高は成長しているものの、2020年3月期の営業利益は前年割れ。ギガプライズの成長は継続していると考えてよいのだろうか?
■基本情報(2020年7月3日時点)
- 株価:1,463円
- 時価総額:250億円
- 予想PER:22.1倍
- PBR:8.18倍
- 予想配当利回り:0.23%
- 自己資本比率:29.6%
■ギガプライズの業績は?なぜ前年割れ?
ギガプライズの2020年3月期の売上高は136億円(前年比+25.0%)、営業利益12.4億円(前年比△4.4%)と増収減益。営業利益率は約9%。売上高は前年比2ケタの高い成長をしているものの、営業利益は前年割れとなってしまった。ギガプライズのセグメント損益をみると、HomeIT事業の売上高は127億円、不動産事業は9.2億円となっている。いっぽうで、セグメント損益はHomeIT事業は+29.1億円の黒字、不動産事業は△4.7億円の赤字となっている。その他に会社全体の費用負担があって、会社全体の営業利益は算出される。
ギガプライズの営業利益が前年割れした理由は、不動産の赤字が理由ではなく、会社全体の費用が10.9億円(2019年3月期)から12.1億円(2020年3月期)に1.2億円ほど増加したのが直接的な要因だ。そのほか、HomeIT事業は売上高が前年比2ケタ成長するなか、営業利益率が28.1%→22.9%と5.2ポイント悪化していることが成長鈍化に見える理由だ。決算説明資料を読むと、営業利益率悪化の理由として、体制強化費用という人件費、設備費用などが要因と読み取れる。この体制強化費用が今後も続くのか、増えるのか、決算説明資料からは残念ながら読み取れない(設備投資の減価償却費のため一時的なものではない)。
■ギガプライズのHomeIT事業と不動産事業!
ギガプライズはHomeIT事業と不動産事業の二本柱でビジネスをおこなっている。売上高の90%以上を占めるHomeIT事業は、集合住宅向けにインターネット接続サービスを導入する事業だ。このHomeIT事業はランニング売上(継続課金ビジネス)となっている部分が多く、2020年3月期ではHomeIT事業の55%はランニング売上高となっている。
世の中は5Gや在宅勤務・リモートワークなど言われており、ギガプライズのHomeIT事業にとっては大きな追い風になっている。ギガプライズだけでなく、競合のアルテリアネットワークスやファイバーゲートも、売上高・営業利益を伸ばしている業界だ。いっぽうで、心配なのはギガプライズの不動産事業。
ギガプライズの不動産事業は、子会社のフォーメンバーズ(ギガプライズは51%保有)がおこなっている。主な事業内容はイオンモール内の不動産仲介事業である「イオンハウジング」の運営だ。2021年度末に250店舗のイオンハウジングの展開を目指している。しかしながら、2020年3月期の不動産事業の売上高は9.2億円、営業利益△4.7億円とギガプライズの足を引っ張っている状況だ。
■ギガプライズの株価推移は?今後の行方は?
ギガプライズは2017年3月期までは売上高40億円未満、営業利益5億円以下の中小企業というレベル。2018年に入ってから業績の急拡大とともに株価も急騰。2020年に入ってから株価は落ち着いているものの、上昇トレンドの大きな流れは変わっていない。不動産事業をどうするか悩ましい点はあるものの、集合住宅向けのインターネット接続サービスの流れは変わらない。短期的には株価の大きな変動はあるものの、長期の成長トレンドはつづくはずだ。
なお、ギガプライズの約51%の株を保有する東証一部のフリービットの時価総額は約160億円(2020年7月3日時点)。ギガプライズの時価総額が約250億円のため、親子間で時価総額が逆転してしまっている。このようなケースはときどき発生し、パソナグループ(時価総額:約480億円)に対して、約51%保有するベネフィット・ワンの時価総額は約3,400億円。単純に、親会社を買収して、子会社の株式を市場で売却すれば大きな利益が出るように見えるものの、筆頭株主(創業者)の保有割合が高く、そのようなストーリーになる可能性は極めて低いということか。
以 上