個人事業主を中心にスモールビジネス向けのネットショップ作成支援「BASE」や決済支援の「PAY.JP」などを展開しているBASE。WEBサイトに決済サービスを追加できる「PAY.JP」が好調で、一期前倒しで営業利益の黒字化が見えた。BASEは越境ECのwant.jpを約7億円で買収。want.jpの年間売上高は約20億円であるものの、年間4億円の赤字がつづいている。今期は34百万円の黒字を見込んでいる。
「PAY.JP」運営のBASE、ショップ作成支援サービスよりも決済支援に移行!(2023年11月18日投稿)
ネット通販サイト作成支援のBASE、決済支援「PAY.JP」など領域を広げる!(2023年3月18日投稿)
■基本情報(2024年9月20日時点)
- 株価:247円(10年来高値:3,448円)
- 時価総額:286億円
- 予想PER:144倍
- PBR:2.1倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:34.4%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:37,897人(2023年12月31日時点)
- 事業価値:68億円
■BASEの業績は?
BASEの2024年12月期の第二四半期の売上高は73.3億円(前年比+36.7%増)、営業利益5.0億円(前年同期は△2.9億円の赤字)と増収黒字転換となった。BASEの売上総利益率は+44.2%(前年は+43.2%)、営業利益率は+6.9%となった。第一四半期で営業利益は+2.0億円、第二四半期で営業利益は+3.0億円と普通に考えると、年間の営業利益は+10億円くらい稼げる力はついたのではないだろうか。
BASEの売上総利益は前年の23.1億円→32.4億円と+9.3億円の増加、販管費は前年の26.0億円→27.3億円と+1.3億円の増加となり、営業利益は+8.0億円と大きな改善となった。
■BASEの事業状況は?
BASEの事業状況をみると、ネットショップ支援のBASEはほぼ横ばいであるものの、PAY.JPの取引高が前年比+52.4%増と大きく成長している。売上高でみても、PAY.JPは前年同期比+63.6%増、BASEも成長性が低く見えるものの+9.8%の成長となっている。
2022年度から下がっていた売上総利益率はようやくプラス傾向に展開しており、下げ止まりを見せている。いっぽうで、販管費はほぼ横ばいを維持している。販管費の内訳をみると、プロモーション費用をかなり抑制している。プロモーション費用を抑制しつつ、売上高が成長しているので良い傾向だろう。
BASEの連結ベースの人員数は264名で前年同期の277名から△13名減っている。売上高・売上総利益が増えているので生産性が改善していると言えるだろう。
■BASEのネットショップ支援の現状は?
コロナ禍で成長したBASE事業(ネットショップ支援)はアフターコロナで減少していくと見ていたものの、実際はコロナ後も成長を続けている。月間のGMV、月間売店数、1ショップあたり月間平均GMVともに成長している。また、月額利用料などの値上げによりテイクレートが改善したことが大きい。
■PAY.JPの成長!
BASEで注目すべきはPAY.JP事業が成長していることだ。第二四半期(単独)の取扱高(GMV)は500億円を突破。年間で2,000億円を処理する規模まで成長している。正直、この成長性をみると、PAY.JPを買収したいと思う企業もけっこうあるのではないだろうか。
しかしながら、PAY.JPは売上総利益率は13.3%と低い。いまのビジネスモデルでは営業利益+10%を超えるビジネスモデルになることは難しいだろう。言い換えると、BASEの利益は引き続き、売上総利益率+60%前後のネットショップ支援で支えられている。
■BASEのその他情報は?
BASEの2023年12月末時点の従業員数は252名、平均年齢34.3歳、平均勤続年数2.8年、平均年収700万円となっている。1年前の有価証券報告書をみると、従業員数は250名、平均年齢33.3歳、平均年収600万円となっている。平均年収については、100万円単位で記載しているので詳細は不明だ。ただ、決して低い給与水準ではない。
大株主の状況をみると、鶴岡社長は15.6%しか保有しておらず、意外に創業者のインパクトが低い。丸井グループが5.5%保有している。
BASEはコロナ禍で株価が高かった2020年9月に海外投資家から約120億円の公募増資を実施。正直、一番株価が高いときに資金調達している。この数年で赤字を計上したものの、現在も約200億円の現預金を保有していることは強い。
■BASEの株価推移は?
BASEの時価総額は約280億円。現預金の200億円を差し引くと、事業価値は80億円ほどとなる。ネットショップなどのエスクロー代金があるだろうが、キャッシュを豊富に持っている企業だ。PAY.JPは成長しているものの、競合他社より有利な手数料にしており粗利が低いのが悩ましい。
2024年12月期はようやく営業利益が黒字になった。その内訳をじっくりみると「その他」の貢献度が大きい。この「その他」は将来の売上高を融通するサービスの「YELL BANK」だ。ノンバンク的な金融サービスでサービス利用料で稼ぐ仕組み。ただ、このサービスを利用できるのはBASEのネットショップを活用している人だけ。どこまで広がるか。
以 上