新型コロナウイルスの影響により対面販売が制限されるなか、リモートでの販促活動やライブ配信、WEBセミナーなど動画配信技術が注目をあびるなか、着実にサービスを拡大しているのがJストリーム。特に医薬向けの割合が高く、売上高の約45%を占めている。テレビ局では地上波放送と同時にインターネット上に同時配信など新しいサービスのニーズが高まり、Jストリームの活躍する場はますます多くなりそうだ。Jストリームの株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2020年12月18日時点)
- 株価:5,600円
- 時価総額:786億円
- 予想PER:54.2倍
- PBR:14.5倍
- 予想配当利回り:0.11%
- 自己資本比率:66.2%
- 会計基準:日本基準
■Jストリームの業績は?
Jストリームの2021年3月期の第二四半期の売上高は56.4億円(前年同期比+55.8%増)、営業利益は9.3億円(前年同期比+6.6倍)と大幅な増収増益となった。新型コロナウイルスの影響により対面営業がむずかしくなり、特に製薬会社からの医師向けのWEB講演会(ライブ放送)や映像コンテンツ作成の需要が急増した。Jストリームの売上総利益率は39.4%まで上昇し、一般管理費を大きく上回り、営業利益が急増した結果となった。営業利益率は16.6%(前年同期は3.9%)と大きく改善した。
■Jストリームの売上高内訳は?
Jストリームの売上高内訳をみると、医薬医療の割合が大きく、全体の45%を占めている。MR(医薬情報担当者)はこれまで病院に通って医師に新薬の説明などをしてきたものの、新型コロナウイルスの影響により対面営業を控える傾向となった。MRの新しい活動方法として、WEBセミナーなど動画配信を活用した取り組みが進んできている。
利用目的別の売上高内訳をみると、Jストリームのサービスは販売促進やブランディングに活用されるケースが57.2%(前年同期は50%)と急増している。
■攻めるJストリーム、重視する医薬業界!
Jストリームは医薬業界を特に重視している。製薬企業はMR関連費用に全体の91%の営業費用を投入している。いっぽう、医師が活用する医療情報の収集時間は学会や研究会などが44%、インターネットが39%となり、MRの情報は17%ほどとなっている。つまり、製薬会社はMR関連にコストを集中しているものの、それほど医師の薬の選定に効率的ではないということ。
Jストリームは医薬デジタルマーケティングの転換を念頭に、学会・研究会などの医師向けのWeb講演会のサービスに力を入れている。2020年11月にはアズーリ株式会社を孫会社化し、医薬情報をインターネットを活用して提供するサービスに更に力をいれている。
■Jストリームのソリューションは?
Jストリームは、情報提供、イベント、セミナー収録などを自社の会議室で簡単に作成できるサービスを提供している。映像を簡単に作成し、社員がそのまま簡単にライブ配信できるサービスだ。また、動画マニュアルの作成・配信サービスや株主総会などのインターネット配信、展示会、視聴者限定イベントなどのサービスを展開している。
■Jストリームの株価の行方は?
Jストリームの株価は新型コロナの拡大にあわせて上昇トレンドがつづいている。Jストリームの業績も新型コロナウイルスの拡大にあわせて大幅に上昇しており、予想PERは55倍程度となっている。Jストリームの時価総額は約800億円となっており、コロナ前は時価総額100億円ほどだったため、株価は8倍ほど大きく上昇している。ここから更に株価が上昇するかどうかは、世界的な株式相場次第だ。将来的にJストリームの業績は拡大していくと思われるが、株価が必ずしも上昇するとは限らないという点に注意が必要だ。
もうひとつ懸念されるのは、新型コロナウイルスが収束したときにJストリームの需要が激減しないかどうか。対面営業や対面セミナーに障害がなくなったときも継続的にリモート営業を継続するニーズが残るかは今のところ見えてこない。Jストリームの売上総利益率は約40%で、会計クラウドのフリーやラクス、マネーフォワードの売上総利益率60%~80%とくらべると低い。
Jストリームはサブスクリプションの割合が公開されていないものの、それほど高くないのであれば需要減のときに大きく営業利益が下がる可能性があることに注意が必要だ。いまは新型コロナウイルスの影響により、どの業界も取り急ぎ対面営業にかわるツールがほしいので高い利用料でも負担している。この非常事態が収まったとき、Jストリームがコスト競争に巻き込まれ、売上総利益率の大幅な低下が起こる可能性がある点に注意が必要だ。
以 上