労務管理システムの勤次郎(旧日通システム)、株価は上場来安値を更新!

 勤務、人事、給与、マイナンバー管理など労務管理システム「勤次郎Enterprise」を中心にビジネスを行っている勤次郎。2021年3月27日より社名を日通システム株式会社から勤次郎株式会社に変更。2021年5月14日に決算を発表したところ、前年同期で売上高は±ゼロと成長していなかった。成長企業として勤次郎をとらえている投資家にとってはネガティブサプライズだったはず。勤次郎の業績と株価の行方はどうなるのか?

労務・健康管理システム「勤次郎Enterprise」の勤次郎(旧日通システム)、リカーリングビジネス伸びる!(2021年4月4日投稿)

■基本情報(2021年5月14日時点)

  • 株価:2,403円(10年来高値:5,600円)
  • 時価総額:250億円
  • 予想PER:43.6倍
  • PBR:2.53倍
  • 予想配当利回り:0.7%
  • 自己資本比率:90.8%
  • 会計基準:日本基準

■勤次郎の業績は?

 勤次郎の2021年12月期の第一四半期の売上高は8.6億円(前年同期比±0%)、営業利益1.1億円(前年同期比△36%減)の減益決算だった。勤次郎の売上総利益率は+62.1%、営業利益率は+12.3%。決算説明資料を読むと、新型コロナウイルスの影響によりオンプレミス事業(サーバーを顧客企業に設置するもの)については顧客の受注先送りやクラウド契約への切り替えによって前年同期比△20%減により全体で成長はゼロになったと説明。

 しかしながら、新型コロナウイルスの影響は去年もあり、同じようなfreee(フリー)、ラクスなどの労務管理システムは成長しているため適切な言い訳にはならないだろう。クラウド事業も計画を下回る前年同期比+18%と説明されている。つまり、オンプレミス事業の落ち込みをクラウド事業でカバーしきれずに成長ゼロとなったということ。

■四半期ベースで見ると成長大幅鈍化!

 勤次郎のリカーリングレベニュー売上高推移をみると、4.2億円(20/1Q)→4.4億円(20/2Q)→4.7億円(20/3Q)→4.9億円(20/4Q)→5.0億円(21/1Q)となっている。20/4Qあたりから売上高の伸びが鈍化していることがわかる。リカーリングレベニュー売上高とは、クラウド事業のライセンスとオンプレミス事業のプレミアサポート売上高(保守のようなもの)の合算の売上高で、サブスクリプション(継続課金)のような安定的に計上される売上高。

 勤次郎の魅力はサブスクリプション型で安定的に成長し、高い収益力を持っていること。その前提となるサブスクリプション型の売上高の成長率の伸びが鈍化していることは厳しい。クラウド事業の契約社数は1,404社(20年12月末は1,342社)で前四半期と比べると+62社となった。2020年12月期は年間で新規306社獲得し、四半期ベースで平均76社獲得していたことを考えると、成長速度が鈍化していることがわかる。

 クラウドの平均解約率は20年4月~21年3月で0.16%と低い。しかしながら、月別にみていくと20年4月は0.08%だったものの、20年9月には0.17%まで上昇し、21年3月には0.20%まで上昇している。平均解約率が年間で0.12%上昇していることに注意が必要だ。

■勤次郎の株価の行方は?

 勤次郎の時価総額は約250億円。勤次郎は2020年10月に上場したばかりの企業で上場から1年経過していない。勤次郎(旧日通システム)の公募価格は3,000円(初値は5,500円)で現在の株価は2,403円。つまり、一般投資家ほぼすべての人が含み損となっている。初値で購入した人は半値以下になっている。

 勤次郎に期待されているのは開発中の「次世代勤次郎」のスタート。「次世代勤次郎」はマイクロソフトからLinuxに切り替えるため、ライセンス費用がゼロになる。運用費の減少もあり、現状のコストの半分になり、利益率が大きく上昇すると説明されている。「次世代勤次郎」は21年半ばからスタートすることもあり、第二四半期を見極めてから投資しても遅くはないのではないか。

(画像1)勤労の株価推移、右肩さがりがつづく

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする