国内・海外の旅行者を旅行比較サイト「トラベルコ」で旅行会社のサイトに顧客を送客するビジネスモデルを構築しているオープンドア。海外旅行は引き続き新型コロナウイルスの影響でほぼ壊滅。国内旅行もホテルやパック旅行など需要はコロナ前の30%~70%にとどまる。オープンドアは現預金を27億円もっており、自己資本比率も90%を超えている財務優良会社。業績回復の希望はワクチン接種によるコロナ蔓延の予防・防止につきる。
旅行比較サイト「トラベルコ」のオープンドア(3926)、成長ひと休みか?今後の株価は?(2020年6月6日投稿)
■基本情報(2021年8月6日時点)
- 株価:1,921円(10年来高値:3,600円)
- 時価総額:600億円
- 予想PER:ー(未定)
- PBR:9.6倍
- 予想配当利回り:未定(これまで無配)
- 自己資本比率:90.8%
- 会計基準:日本基準
■オープンドアの業績は?
オープンドアの2022年3月期の第一四半期の売上高は2.3億円(前年同期比+97.2%増)、営業損失は△2.4億円(前年同期は△3.5億円)の増収・赤字縮小となった。2年前の2020年3月期の第一四半期の売上高は13億円だったことを考えると、売上規模は6分の1くらいまで減少、売上総利益は11.3億円→69百万円に激減している。
もともと、営業利益率は40%を超える収益力の高いビジネスモデルだったものの、コロナ禍による旅行需要の消失で旅行関係は瀕死の状態がつづいている。オープンドアは財務体質も良く、現預金27億円と投資有価証券30億円を保有しており、ここから数年間、同じ状態がつづいても倒産することはまずないだろう。オープンドアの従業員数は約190名。人件費を1人あたり700万円(社会保険など込み)で計算しても合計で13億円前後。いまでも年間売上高は8億円前後あるため、在庫や設備を持たないオープンドアにとっては、十分持ちこたえられるはずだ。
■さきの見えない苦しみ
オープンドアをはじめ旅行関係ビジネスをしている会社にとって、コロナ禍はさきの見えない暗いトンネルのなかという苦しみだ。オープンドアとしてはワクチン接種が順調に進めば年末くらいには需要が回復し、海外旅行は2022年頃から回復すると見ている(決算説明資料より)。しかしながら、最近は変異型のコロナウイルスである「ラムダ型」や「デルタ型(インド型)」が広がっており、ワクチン接種者も感染する可能性があると言われる。
■ベルトラ株への第三者割当増資の引き受け
旅行関連はどこも厳しい状況になっている。東証マザーズに上場している現地ツアー予約サイトのベルトラも大きな赤字を計上していて、2021年1月にオープンドアが15億円の第三者割当増資を引き受けている。オープンドアの出資比率は13%超となり、ベルトラの第二位の大株主となった。
海外旅行の現地ツアー仲介のベルトラ(7048)、コロナ禍での戦略は?(2020年7月18日投稿)
ベルトラは海外の現地ツアーを日本人旅行者に仲介するビジネスをしていたため、国内旅行の取り扱いがほとんどなく旅行関連のなかでも大きなダメージを受けている上場企業のひとつ。ベルトラの2021年12月期の第一四半期の売上高は51百万円(前年同期は7.8億円)、営業損失△3.5億円となっている。ベルトラは希望退職も募集し、固定費の削減を徹底しているところ。
オープンドアの出資の意図は読み解けないが、同業他社へ救いの手を差し伸べたか、コロナ後の業績回復時の成長ドライバーとしての投資なのか見えてこない。オープンドアのベルトラに対する出資比率は13%にとどまり、連結子会社化できる出資比率でもない。
■オープンドアの株価推移は?
オープンドアの時価総額は約600億円。業績悪化で株価が割安に放置されているならば将来的な業績回復を狙って購入することができるが、すでに回復期待を織り込んだ株価になっている。新型コロナウイルス拡大で旅行需要が抑制される前の2019年末の株価が1,600円だったものが、現在は1,900円前後まで上昇している。旅行関連銘柄や外食銘柄は業績悪化の割に株価は下がり切っておらず、むしろ高止まりしている状況だ。いま旅行関連を買うタイミングではないのではないか。
以 上