業務アプリ構築クラウドの「kintone(キントーン)」や中小企業向けグループウェアの「サイボウズOffice」などを展開するサイボウズ(cybozu)。サイボウズは、売上高、営業利益ともに前年比2桁プラスの伸びを見せる優良な老舗IT企業。業績の上昇修正はすばやく、頻繁に発表するところは好感が持てるものの、決算説明資料は年1回に抑え、直近の詳しい会社の状況は見えない。2020年の新型コロナウイルスの拡大の影響は、サイボウズにとっては追い風になっていることは明白で、すでに業績にプラス効果として表れていると考える。今後のサイボウズの業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2020年12月30日時点)
- 株価:2,579円
- 時価総額:1,361億円
- 予想PER:84.3倍
- PBR:15.93倍
- 予想配当利回り:0.42%
- 自己資本比率:58.9%
- 会計基準:日本基準
■サイボウズの業績は?
サイボウズは四半期ごとに決算説明資料を作成せず、年に1度のみ決算説明資料を作成するスタンス(企業姿勢)を通している。IRに力を入れていないわけではないが、決算説明資料は重視していないようだ。
サイボウズの2020年12月期の第三四半期の売上高は115億円(前年同期比+16.7%増)、営業利益23億円(前年同期比+25.4%増)と増収増益となった。営業利益率は19.9%と高い。連結売上高に占めるクラウド関連の比率は70%を超えており、パッケージソフトからクラウドにうまく転換することができた。
■サイボウズの事業内容は?
サイボウズはどのような事業をしているのだろうか?サイボウズは、業務アプリ構築クラウドの「kintone」、中小企業向けグループウェアの「サイボウズOffice」、大企業・中堅企業向けグループウェアの「Garoon」、メール共有システムの「Mailwise」の4つを主力の製品に力をいれている。導入社数をみる限り、6.6万社に導入している「サイボウズOffice」の売上高が最も大きいと予想する。ただし、テレビCMなどで「kintone」を積極的にPRしており、もっとも力を入れている製品は「kintone」だと思われる。
グループウェアは主に社内の情報交換などに使われるもので、競合としてはChatwork(チャットワーク)、マイクロソフトのTeams、slack(スラック)などが該当する。
サイボウズが力を入れている「kintone」は、簡単に業務アプリ(ソフト)を作れるクラウドサービスだ。たとえば、顧客・案件管理フォーマット、出張旅費精算の申請業務(ワークフロー)アプリ、問い合わせフォーム、日報・報告書管理などだ。競合他社としては、パイプドHDの「スパイラル」というクラウドサービスになる。
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■そもそもグループウェアとは?
サイボウズはグループウェアを開発・提供する会社だ。そもそも、グループウェアとは、どのようなモノなのだろうか?サイボウズは、メールやビデオ会議で情報を伝達するだけよりも、情報共有することが企業の生産性の観点から重要だと考えている。たとえば、スケジュール、メール、顧客なども共有することが重要で、その共有する媒体がグループウェアだ。サイボウズは、そのツールとしてグループウェアだけでなく、「kintone」やメール共有サービスの「Mailwise」を開発して展開している。
■伸びるクラウドサービス!
サイボウズの売上高の内、クラウド関連の売上高は71%(2019年12月時点)となり、従来のパッケージソフトより大きい。クラウド関連は前年比+28%とサイボウズの成長を牽引する存在となっている。
■サイボウズの株価の行方は?
サイボウズはコロナショック(2020年3月)前より上昇トレンドに入り、コロナショックでいったん下落したものの、大きく反発している。サイボウズの現在の時価総額は約1,400億円。サイボウズと競合するのは、「楽楽シリーズ」を展開するラクス(時価総額:約4,300億円)、グループウェアのChatwork(同:約500億円)、パイプドHD(同:約130億円)などだ。新型コロナウイルスの影響により、デジタル銘柄の株価は急上昇し、サイボウズ含めて、現時点で妥当な株価が見えてこない(パイプドHDは株価の上昇が限定的であるが)。
業績と成長性を考えると、サイボウズの時価総額は割高に感じてしまう。もうひとつ、サイボウズのチャートをみると、下限のサポートラインを割っており、半値の1,300円くらいまで落ちてもおかしくはない。これからサイボウズに投資する人は、チャートが右肩あがりの方向を向くまで様子見が妥当だ。
以 上