インフラシェアリングのJTOWER(Jタワー)、取引が複雑で投資家はついていけない?

 通信インフラのシェアリングサービスを展開しているJTOWER(以下、Jタワー)。コーポレートローンによる150億円調達や特定目的会社(SPC)を活用した資金調達など個人投資家で現状をフォローできなくなってきたJタワー。おそらく、Jタワーの現状をしっかり把握できている個人投資家はいないのではないだろうか?今後のJタワーの業績と株価の行方はどうなるのか?

通信インフラシェアリングのJTOWER(Jタワー)、堅調な成長も株価は下落トレンドに!(2021年5月16日投稿)

高成長のJTOWER(Jタワー)、将来像が見えないビジネスモデル!?(2021年2月6日投稿)

建物内の携帯通信インフラシェアリングのJTOWER(Jタワー)、成長と株価の行方は?(2021年1月17日投稿)

■基本情報(2023年6月9日時点)

  • 株価:6,110円(10年来高値:13,210円)
  • 時価総額:1,346億円
  • 予想PER:ー(当期利益は赤字見込み)
  • PBR:10.43倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:24.8%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:7,251人(2022年3月31日時点)

■Jタワーの業績は?

 Jタワーの2023年3月期の売上高は52.3億円(前年比+24.0%増)、営業利益1.2億円(前年は+5.6億円の黒字)と増収減益となった。Jタワーの売上総利益率は+48.8%(前年は+51.4%)、営業利益率は+2.2%(前年は+13.3%)と悪化している。

 Jタワーの売上総利益は前年の21.7億円→25.5億円と+3.8億円の増加、販管費は前年16.0億円→24.3億円と+8.3億円の増加となり、4.5億円の営業利益減となった。販管費が大きく増えた要因は、下期に5.1億円のファイナンス組成とミリ波開発費を計上したことが大きな要因だ。

■わかりにくいタワーカーブアウト

 Jタワーは2022年11月30日にNTTドコモからタワーカーブアウトプロジェクトとして通信鉄塔を約6,000基の譲受をしている。そのために総額で1,074億円のファイナンスを実施しており、これが非常に分かりにくい。特定目的会社(SPC)を活用しており、銀行からの借入などを活用している。

 JTOWER Infrastructure(SPC1)がシニア・消費税ローンというもので624億円を調達、優先出資で528億円(Jタワーからは228億円)をしている。ただ、このSPC1はJタワーの財務諸表に合算されておらず、本来のJタワーの姿が見えない。2023年度にこの鉄塔カーブアウトが実行されて、タワー事業は大幅に規模を拡大する予定だ。

 その結果、Jタワーの2024年3月期の業績予想は、売上高105億円(前年比+100.8%増)、営業利益5.6億円を予想している。売上高は一気に倍増する予定だ。

■Jタワーの財務状況は?

 Jタワーの2023年3月末の財務諸表をみると、現預金は242億円(前年同期は148億円)、有形固定資産254億円(前年同期は83億円)と大きく増加している。負債をみると、有利子負債は220億円(前年同期は2億円)、未払金74億円と大きく負債が増加している。通常の民間企業であれば危機的な財務状況であるものの、JタワーはNTT、KDDI、NTTドコモが大きく出資している特殊な会社であり、安定的に収益は稼ぐだろう。

 Jタワーのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+14.5億円、投資CFは有形固定資産の取得が多く△127億円、財務CFは長期借入金219億円があり204億円のプラスとなり、差し引きで現預金は+92億円の増加となっている。

■Jタワーの株価の行方は?

 Jタワーの時価総額は約1,300億円。正直、業績を見るかぎりは割高な株価であるものの、特殊な事業形態と主要株主のため、時価総額の妥当性がまったく見えない。通信キャリアとしては、株価の上昇を期待しているのではなく、安定した通信インフラを提供してくれればよいというスタンスではないだろうか。Jタワーが利益を出しつづけ、成長をつづけていけるか疑問点が残る。現状、赤字であり、将来的にどのくらいの利益がでるかも予想できない。

(画像1)Jタワーの株価推移

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする