恋愛や婚活を支援するマッチングアプリ「Omiai」を展開しているネットマーケティング。2021年5月21日に不正アクセスにより約171万件の年齢確認書類(約6割は運転免許書の画像データ)が流出していたことを発表。顔写真、住所、生年月日、氏名などの重要な個人情報が流出しており、これからの不正利用が懸念されている。ネットマーケティングの業績と株価にどのような影響がでるのか?
恋愛マッチングアプリ「Omiai」のネットマーケティング(6175)、今後の成長は?(2020年6月6日投稿)
■基本情報(2021年5月21日時点)
- 株価:517円(10年来高値:1,145円)
- 時価総額:77億円
- 予想PER:28.5倍
- PBR:2.66倍
- 予想配当利回り:1.16%
- 自己資本比率:57.9%
- 会計基準:日本基準
■ネットマーケティングの業績は?
ネットマーケティングの2021年6月期の第三四半期の売上高は102億円(前年同期比△9.5%減)、営業利益3.4億円(前年同期比△43.4%減)の減収減益となった。ネットマーケティングの売上総利益率は+32.8%(前年同期は+31.7%)、営業利益率は+3.3%(前年同期は+5.3%)と営業利益率はIT企業としては低い。
ネットマーケティングはメディア事業(Omiai事業)と広告事業の2つに分けて運営している。マッチングアプリ「Omiai」を展開しているメディア事業の売上高は35.9億円(前年同期+3.1%増)、営業利益も4.0億円(前年同期は+2.7億円)と増収増益となっている。全体の業績を押し下げているのは、インターネット広告事業だ。売上高は70.1億円(前年同期は80.3億円)と△12.7%減、営業利益は4.3億円(前年同期は+7.8億円)と大幅に減少している。
広告事業の落ち込みについては、「一部案件の終了もあり・・・・」と記載されているものの、具体的な要因などの説明はない。そもそも、ネットマーケティングのホームページを見ても、広告事業の具体的な説明がなく、事業モデルはイマイチ理解できないのが実情だ。
■ネットマーケティングの「Omiai」事業とは?
ネットマーケティングと言えば、マッチングアプリ「Omiai」のイメージが強い。恋活・婚活マッチングアプリ「Omiai」は、競合他社のエウレカ(未上場企業)の「Pairs(ペアーズ)」やイグニスが展開している「with」、サイバーエージェントの「Tapple(タップル)」などと競っている認知度の高いマッチングアプリのひとつ。
マッチングアプリ「with」のイグニス!株価は絶好調、VR事業の展望は?(2020年8月29日投稿)
ビジネスモデルとしては、女性ユーザーはすべて無料。男性ユーザーは月額3,980円(税込)を負担し、加えて「Omiaiポイント課金」や「プレミアムパック課金」という追加サービスにて料金を徴収するビジネスモデルとなっている。ある意味、サブスクリプション型で年間売上50億円規模まで事業成長したのはすばらしい。「Omiai」の有料会員数は約9万人で順調に増えてきていた。ここに不正アクセスによる会員情報流出が発生してしまった。
■今回の「Omiai」会員情報流出とは?
ネットマーケティングは2021年5月21日に以下を発表。
- 対象は2018年1月31日~2021年4月20日の期間の年齢確認書類の画像データ。
- 171万1,756件分(同じ人の重複はありえる)。
- 年齢確認書類の約6割は運転免許証。
- クレジットカード情報の流出はない。
- 流出期間は2021年4月20日~26日の可能性が高い。
今回の流出により男性・女性ともに利用を中止するユーザーが多く発生することが見込まれる。個人情報のなかでも運転免許証や健康保険証、パスポートなどの画像データは重要な情報のため、不正利用につながる可能性が高く、インターネット中心に議論がおこっている。「Omiai」事業の売上高の大きな減少は避けられない可能性は高い。
■ネットマーケティングの株価の行方は?
ネットマーケティングの時価総額は約80億円。短期的には株価下落は避けられず、短期トレードなどにより激しく上下に動きながら下値を探る展開になると思われる。すでにネットマーケティング株を保有している人は、一時的なリバウンド時に売却してしまうのが賢明だ。
ネットマーケティングはマッチングアプリの運営・システム開発のノウハウを持っているため、新しいサービスを展開することも可能。この事案がどこまで深刻か、いまだ見えないものの、1年くらいすると何事もなかったかのように株価が戻っている可能性は十分ありえる。いまは総悲観の状態のため、チャレンジャーは安値で拾っても良いかもしれない。ネットマーケティングの規模の会社であれば、資金的な余裕はそれほどないため、情報漏洩による補償などは実行されない可能性が高い。
ネットマーケティングの株価をみると、2021年5月21日に公表される前、5月12日から株価が下落しはじめており、事前に関係者に情報が漏れていた可能性は高い。結果、10%以上も事前の株価下落となった。
以 上