2013年設立で顧客の課題をデジタルトランスフォーメーション(DX)で解決するIT企業のサンアスタリスク(Sun Asterisk)。ベトナムに拠点を持ち、エンジニアの多くはベトナムで活動している企業だ。従業員数は1,500名いるものの、約1,300名はベトナムを拠点としている。ベトナム、インドネシア、マレーシアの有名大学と提携し、優秀なエンジニアを採用している。サンアスタリスクの業績と事業内容、そして株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年5月28日時点)
- 株価:2,171円(10年来高値:4,765円)
- 時価総額:818億円
- 予想PER:83.1倍
- PBR:15.01倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:82.2%
- 会計基準:日本基準
■サンアスタリスクの業績は?
サンアスタリスクの2021年12月期の第一四半期の売上高は18.2億円(前年同期比+29.5%増)、営業利益は4.2億円(前年同期比+39.2%増)の増収増益となった。サンアスタリスクの売上総利益率は+52.5%(前年同期は+52.6%)、営業利益率は+22.9%(前年同期は+21.3%)と高い収益性となっている。
サンアスタリスクは、クリエイティブ&エンジニアリングとタレントプラットフォームという2つのセグメントにわけて事業を管理している。2021年12月期の第一四半期のクリエイティブ&エンジニアリングの売上高は15.2億円、タレントプラットフォームの売上高は3億円となっている。
■サンアスタリスクの事業内容は?
サンアスタリスクは大きく2つのセグメントで事業をおこなっている。1つはクリエイティブ&エンジニアリングというもの。決算説明資料を読むと、顧客の課題を解決するアプリやシステムを導入するシステムインテグレーション(システムの設計、開発、運用、保守までの一括請負)を提供している。
たとえば、日産カーレンタルソリューションにレンタカー公式アプリを提供している。サンアスタリスクは「ストック型顧客数」を重要KPIとしており、現在は88社となっている。そのうち、25社は重要企業で、上場企業のなかの規模の大きな企業で「エンタープライズ顧客」としてKPIを管理している。88社の1社あたりの月額平均顧客単価は4.4億円。サンアスタリスクの決算説明資料を読むかぎり、おそらく顧客とKPIを決めて、そのKPIに応じた報酬(売上高)を受け取っていると思われる。普通のシステムインテグレーター(Sler)であればシステムやアプリを提供して終了するところ、サンアスタリスクは顧客とともにサービスを向上し続ける点が異なる。
もう一つの事業は、タレントプラットフォームというもの。国内外のIT人材の発掘・育成・紹介をするもの。顧客の採用戦略や人材採用をサポートするサービスだ。サンアスタリスクはベトナム・インドネシア・マレーシアの有名大学と提携しており、特に海外のIT人材に強い。
■サンアスタリスクの強みは?
サンアスタリスクの強みは、ベトナム拠点に約1,300名のITエンジニアを抱えている点だ。日本で1,300名のITエンジニアを採用する場合、ITエンジニア不足のなか採用は難航するはずだ。幸いにして採用できた場合も給与は非常に高い。サンアスタリスクはベトナムの有名大学を中心に提携しており、採用面で大きなメリットがある。
日本のDX案件をベトナムで開発する場合、その間に入るプロジェクトマネージャーなどが必要だ。海外でITエンジニアを採用すれば、安いコストでシステムやアプリを開発できるという単純なものではない。家電・電子部品などのハードを製造するよりも、海外人材を活用した開発にはノウハウが必要になる。サンアスタリスクにとって、ベトナムでしっかり開発できる体制は大きなメリットのひとつ。
もう一つは、サンアスタリスクのビジネスモデルが大きな強み。ストック型顧客を88社抱えており、安定的に収益が計上される。新規案件を受注して納品して終わりという売り切りモデルではなく、顧客の役に立つサービスを提供し続けるビジネスモデルで顧客にとっても大きなメリットがある。
■サンアスタリスクの株価の行方は?
サンアスタリスクの時価総額は約800億円。現在のグロース銘柄の株高のなか、少し過小評価されている印象だ。株価指標的には予想PER83%を成長性と収益性を考えると割安感がある。心配な点は、米国を中心とした長期金利高騰によるグロース銘柄の売り圧力が高まる懸念があること。長期金利が上昇すると、将来の収益を現在価値に戻すときの金利が高くなるため、結果的に成長性の高いグロース銘柄(予想PERの高い銘柄)に割高感が出てしまう。
サンアスタリスクの事業リスクとしては、ベトナムの賃金上昇だ。ベトナムのITエンジニアの平均給与は月額15万円前後。あくまで平均給与であり、経験や技術により大きく異なる。ちなみに、中国のIT企業の月額平均給与はアリババは3.2万元(約48万円)、テンセント2.9万元(約44万円)、百度(バイドゥ)2.2万元(約33万円)、グーグル中国2.1万元(約32万円)となっている。中国でITエンジニアを雇用して、日本で事業展開するSIerはほぼいないと思われる。
以 上