個人や個人事業主の「スキル」や「サービス」を仲介するマッチングサイト(マーケットプレイス)を運営しているココナラ。成長性はあるものの、テレビCMなどのマーケティング費用の増加により赤字がつづいている。株価も上場以来下落トレンドがつづく。今後のココナラの業績と株価の行方は?
スキルマーケット「coconala」を運営するココナラ、サービス版のAmazon目指す!(2021年4月18日投稿)
■基本情報(2022年8月26日時点)
- 株価:569円(10年来高値:2,899円)
- 時価総額:134億円
- 予想PER:ー(赤字予想)
- PBR:6.5倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:51.5%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:9,909人(2021年8月31日時点)
■ココナラの業績は?
ココナラの2022年8月期の第三四半期の売上高は27.9億円、営業損益△3.9億円。前年との比較数値を出していないものの、成長性は約30%くらい。ココナラは売上総利益を開示していないため、粗利を把握することができない。
ココナラは流通高、営業収益(いわゆる売上高)、営業費用、営業利益という切り口で開示しており、決算説明資料によるとマーケティング費用を除くと黒字になっているというものの、粗利の規模感がわからず、判断のしようがないのが実情だ。
■ココナラのビジネスモデルは?
ココナラは出品者と購入者の仲介をすることで、双方から手数料を合計で27%くらいもらうビジネスモデルになっている。よって、「ココナラ」で取引してもらう流通高をいかに向上させるかがポイントであるものの、ざっくり考えると粗利はテイクレートの27%前後が限界であることがわかる。
会計クラウドのfreee(フリー)、ラクス、マネーフォワード、SansanなどのITクラウドサービスを提供しているグロース銘柄は、粗利が50%~90%と高く、将来の売上高を増やすことで将来、爆発的に利益が増えるために大量の広告費を投入している。
人材マッチングサービスのクラウドワークス、成長停滞も営業利益は黒字に!(2021年4月18日投稿)
クラウドソーシング仲介のランサーズ、低収益つづくビジネスモデル!(2021年4月25日投稿)
いっぽう、ココナラはそもそも粗利率が低く、サブスクリプション型の利益モデルではなく、いかにスキルの売買を積み上げていくががポイント。正直、爆発的にもうかる利益モデルではない。
■クラウドワークス、ランサーズとモデルは似ている
ココナラはITクラウドサービスの企業よりも、むしろ、クラウドソーシングを提供しているクラウドワークスやランサーズと利益モデルは似ている。スキル売買やクラウドサービスの仲介など、顧客サービスの部分が大きく、取引量(流通高)の増加に伴い固定費が増えてしまう事業モデルになっている。
クラウドワークスは流通高の改善と生産性の向上(従業員1人あたりの売上総利益が改善傾向)で、なんとか黒字にして株価も回復しているものの、社内改革はかなり苦戦したのではないだろうか。クラウドワークスの流通高は約190億円とココナラの約120億円よりもかなり大きい。
■ココナラの財務状況は?
ココナラの2022年5月31日時点の現預金は28.5億円、いっぽう、有利子負債はゼロと財務は極めて健全だ。ココナラの公開価格は1株あたり1,200円(現在は569円)で、上場初値は2,300円といまの株価の約4倍。この公開により公募増資で11.1億円、証券会社引受で12億円を調達している。なお、上場日は2021年3月19日。
公募増資と証券会社引受の23億円だけでは、赤字でありながら現預金29億円という健全な財務状況を通常は確保できない。その背景は、上場前にベンチャーキャピタルなどから資金調達をかなりやってきたからだ。2013年9月にニッセイ・キャピタル、オプト、アドウェイズから総額1.5億円の第三者割当増資で資金調達。2019年7月にはフィデリティ・インターナショナルから12億円を調達。
ココナラは上場前から多額の資金調達をしており、上場時の資金調達よりも上場前のほうが多かった。結局、上場前に投資したベンチャーキャピタルなどが高値で公開時に株を売り出して利益を出し、個人投資家を中心に高値で株を買ってしまって含み損になっている人が多いというのが現状だ。
■意外に高いココナラの給与水準!
ココナラの従業員の平均年齢は35.6歳、平均年収は660万円。ベンチャー企業で赤字企業であるものの、給与水準は決して低くない。いまIT関係のエンジニアであれば、いくらでも仕事があるので、相応の給与水準を提示しないと優秀な人材を雇用できないのだろう。
■ココナラの株価推移は?
ココナラの時価総額は約130億円。上場来高値は時価総額600億円くらいのため、この高値を抜くのはなかなか難しいだろう。株主数が約1万人いて、その97%(人数比率)は個人投資家だ。あらたにココナラの株を買いたいというよりも、株価が上がるなら売りたいという含み損の人がかなり多い。この壁を乗り越えていくだけの材料が必要だ。
ここならの流通高が今の2倍の240億円になった場合、テイクレート(収入率)を27%で計算すると売上高は約65億円。営業費用の変動比率を公表していないが、人件費(営業費用の内数割合:15%)、支払手数料(同:22%)、その他(同:5%)とすると、変動比率は42%。言い換えると限界利益(簡易的な売上総利益率)は58%で、売上総利益は約38億円。
そこから人件費、業務委託費、広告費等が20~25億円(現在の固定費は19億円前後と推測)くらいは発生すると考えると、営業利益は13~15億円くらいではないだろうか。予想PER30倍で計算する、予想時価総額は約300億円くらいか?このように計算すると、4~5年以上のスパンで成長を考えていかないと株価はなかなか上がらないかもしれない。
以 上