「NP後払い」のネットプロテクションズ、成長鈍化のビジネスモデルの行方は?

 クレジットカードと同じようなビジネスモデルである「BNPL(Buy Now Pay Later)」の「NP後払い」などを展開しているネットプロテクションズホールディングス(以下、ネットプロテクションズ)。アドバンテッジパートナーズ、リコーリース、JCBなどが投資して上場したBNPL事業者。アフターコロナで想定外に苦しんでおり、取扱高もほぼ横ばいに。今後の行方は?

■基本情報(2022年11月22日時点)

  • 株価:507円(10年来高値:1,698円)
  • 時価総額:490億円
  • 予想PER:赤字
  • PBR:2.62倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:36.2%
  • 会計基準:IFRS基準
  • 株主数:14,218人(2022年3月31日時点)

■ネットプロテクションズの業績は?

 ネットプロテクションズの2023年3月期の第二四半期の売上高は92.3億円(前年同期比+0.2%増)、営業利益39百万円(前年同期は8.9億円の黒字)と増収大幅減益となった。ネットプロテクションズのGMV(取引高)に対するテイクレート(売上高)は、+3.8%(前年同期は+4.0%)となっている。いわゆる、クレジットカードの販売額に対する手数料収入のようなもの。

 このテイクレートの金額から運営費や販管費を差し引いた残りが営業利益になる。ネットプロテクションズのGMVは2,402億円(前年同期は2,290億円)と+4.9%増、ただし、貸倒関連費用が約1億円増加、販管費が約7.8億円増加し、大きく減益となった。

 販管費は31.1億円(前年)→38.9億円と約7.8億円の増加となっており、内訳をみると、マーケティング費用が+2.2億円、運営費が+1.7億円、アウトソース費用が+1.6億円、人件費が+2.0億円とすべての項目で増加している。

■ネットプロテクションズの事業内容は?

 ネットプロテクションズはBNPLという後払いサービスを行っている。18.9万以上の店舗で利用可能だ。競合他社では、PayPalに買収されたPaidy(ペイディ)やメルペイスマート払い(メルカリ)、GMO後払い(GMOペイメント)などがある。

 BNPLとはBuy Now Pay Laterの略であり、簡単にいうと、クレジットカードのないクレジットカードと言える。基本的にネット通販などネット経由の買い物に使用できるものの、リアル店舗では使用できない。

 クレジットカードと異なる点は、BNPLは属性審査(勤務先、年収、住所など)が基本的になく、すぐに利用できるというもの。BNPLは属性審査ではなく、個人の購買履歴などの審査によって与信がつけられる。ただ、その与信審査の方法は各社で異なる。現時点では税込55,000円が上限金額とされる。

■分割手数料がないBNPL

BNPL(あと払い)の大きな特徴は、分割手数料がない点だ。クレジットカードなどで3回払い以上の場合は、金利手数料が発生する。いっぽう、BNPLは手数料が発生しない。BNPLは基本的に利用店舗からの手数料だけで稼ぐ仕組みになっている。

 これまでクレジットカードに独占されてきた市場に新しいビジネスモデルでシェアを奪いに来ているというもの。ただ、収益性はクレジットカード会社に勝てるかは不明な点も残る。

■ネットプロテクションズの成長性は?

 ネットプロテクションズの年間のGMV(取引高)の業績予想は、4,962億円(業績修正前は5,395億円)と約433億円の減額修正を実施。正直、事業が伸びていない。

 ネットプロテクションズの言い訳としては、2021年8月に薬機法が改正され、化粧品や医薬品の広告表現に対して違反した場合は課徴金(罰金)が科されたことにより、この分野の売上高が大きく下がっていることを理由にしている。また、コロナ禍でネットショッピングに特需があり、アフターコロナのなかでは逆風になっていることを理由にしている。

 個人的は新しいフィンテック領域としてBNPLは面白いビジネスであるものの、クレジットカードを持てる人があえてBNPLに移行するメリットはそれほど感じない。メルペイスマート払いなどのキャンペーンでお得感があれば、試しに利用する人はいるものの、継続的に利用するメリットを今のところは感じない、というのが正直なところ。

■クレジットカードのメリットは?

 BNPLと異なり、クレジットカードはポイントの面でメリットが大きい。三井住友カードや楽天カード、アマゾンカードなどポイント還元が大きい。現金で購入するよりもポイント目的にクレジットカードを利用する人が多いだろう。

 クレジットカードがポイント還元できる理由は、経済圏を作っていて、分割払い手数料などを財源にそれを利用者に還元しているのが正直なところ。分割手数料のないBNPLにはポイント還元をすると赤字になるという構造上の問題がある。「NP後払い」は200円ごとに1ポイントの還元をしているものの、クレジットカードと比べて魅力が薄いのが正直なところ。

■ネットプロテクションズの財務状況は?

 ネットプロテクションズの2022年9月末の財務状況をみると、現預金は91億円、営業債権232億円、のれん他150億円が計上されている。いっぽう、営業債務は262億円、長期借入金50億円とそれほど余裕がある財務状況ではない。

■ネットプロテクションズの株価推移は?

 ネットプロテクションズの時価総額は約500億円。2021年12月15日に東証一部に上場し、初値は1,378円(現在は507円)と時価総額は1,329億円だった。すでに半値以下まで株価は下落しており、含み損を抱えている投資家がほとんどだ。株主数も1万人を超えており、当面は上値が重い展開が予想される。

 BNPLは競合企業も多く、当面はそれほど利益がでない展開が続くのではないだろうか?ただ、BNPLも成長過程であり、いまのビジネスモデルが最終形態ではない。今後は利益の出る事業モデルに転換していく可能性もある。

(画像1)ネットプロテクションズの株価推移

以 上

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