鉄塔移管によりタワー事業大幅増のJTOWER(Jタワー)、どこまで成長するのか?

 通信インフラのシェアリングサービスを展開しているJTOWER(以下、Jタワー)。特殊なビジネスモデルであり、NTTドコモからの鉄塔カーブアウト(移管)により事業実態がわかりにくいJタワー。何年後にどのような規模感の事業を行っているのかわかりづらく、一般投資家には事業モデルが見えない。今後の業績と株価はどのように動くのか?

インフラシェアリングのJTOWER(Jタワー)、取引が複雑で投資家はついていけない?(2023年6月11日投稿)

通信インフラシェアリングのJTOWER(Jタワー)、堅調な成長も株価は下落トレンドに!(2021年5月16日投稿)

■基本情報(2024年2月9日時点)

  • 株価:4,900円(10年来高値:13,210円)
  • 時価総額:1,081億円
  • 予想PER:ー(純利益は赤字予想)
  • PBR:7.66倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:10.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:6,537人(2023年3月31日時点)

■Jタワーの業績は?

 Jタワーの2024年3月期の第三四半期の売上高は79.1億円(前年比+120.5%増)、EBITDA38.5億円(前年比+287.7%増)、営業利益7.1億円(前年は△74百万円の赤字)と増収黒字転換となった。

 Jタワーの売上総利益率は+33.1%(前年は+50.2%)、営業利益率は+8.9%。Jタワーの売上総利益は前年の18.0億円→26.1億円と+8.1億円の増加、販管費は前年の18.7億円→19.1億円と+0.4億円の増加にとどまり、営業利益は+7.7億円の改善となった。Jタワーは有形固定資産が1,031億円計上されており、その償却費の影響がきわめて大きい。そのため、営業利益に償却費を足し戻したEBITDAで利益水準を見てもらうようにしている。

■Jタワーの事業内容と将来の行方は?

 Jタワーは、屋内インフラシェアリング(IBS:In-Building-Solution)とタワー事業(屋外の基地局設置用の鉄塔・コンクリート柱・ポールアンテナなど)を通信キャリアに貸し出すビジネスを行っている。顧客は主に、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社しかなく、日本のモバイル通信インフラを担っている会社と言えるものの、事業内容や方向性はきわめてわかりにくい。

 Jタワーの2027年3月期(2026年度)の中長期財務目標は売上高300億円、EBITDA180億円(EBITDAマージン:60%)を計画している。ただ、償却費負担が大きく、営業利益はそれほどでないのではないだろうか。また、Jタワーの借入金で設備投資をするもので、金融市場次第では増資もあるのではないかと想定する。

■SPCを活用したビジネススキームも!

 実際、2021年5月にKDDIとNTTに第三者割当増資をして約73億円を受け取っている。現状のJタワーの有利子負債は約850億円と巨額であり、金利が上昇すると支払利息が大きく増える可能性がある。

 JタワーはSPC(特定目的会社)を活用した資金調達ストラクチャーを形成しており、金融会社と言っても過言ではない。そのビジネススキームは一般投資家にはほぼ理解不可能だ。

■Jタワーの株価推移は?

 Jタワーの時価総額は約1,100億円。正直、一般的な投資家にはいまの株価が将来価値から考えると割安か割高か判断できないだろう。事業内容が見えないし、通信キャリアとの関係性も見えにくい。将来的に、時価総額が3,000~5,000億円くらいになる可能性がある企業であれば、通信キャリアももっと出資するのではないだろうか。

 いまは、インフラの共有をするプラットフォーム的な位置づけにされており、通信キャリアのコスト低減の道具にされていないだろうか。鉄塔の移管が終わっても、次のインフラ共有の投資が必要であり、株主還元はできるのだろうか。なお、Jタワーのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFが大きくプラスになる構造であり、本業で稼いで、投資にお金を回していると言えるものの、顧客が一般消費者ではない点に留意が必要だ。

(画像1)Jタワーの株価推移

以 上

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