ヤフーグループが約43%の株式を保有しているイーブックイニシアティブジャパン(以下、イーブック)。電子書籍販売の「ebook japan」と紙書籍のオンライン販売の「bookfan」を展開している。新型コロナウイルスの影響による2020年4月~5月の「巣ごもり消費」の特需を受け、足元の業績は絶好調だ。電子書籍関連の銘柄の株価は同業他社含めて、どこも絶好調だ。過去最高値圏で推移している。紙書籍から電子書籍に社会が変化するなか、生き残れる企業が選別される時代になる。イーブックは生き残れるのか?
■基本情報(2020年8月21日時点)
- 株価:3,880円
- 時価総額:222億円
- 予想PER:36.4倍
- PBR:5.38倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:43.3%
- 会計基準:日本基準
■絶好調のイーブック、業績と事業内容は?
イーブックの2021年3月期の第一四半期の売上高は70.6億円(前年同月比+51.4%)、営業利益は4.1億円(前年同月比+118.8%)と増収増益となった。イーブックだけが好調というわけでなく、同業の電子書籍専業のAmazia、ビーグリー、インフォコム(子会社のアムタスが事業展開)なども同じ状況だ。いったい、いつまで電子書籍(特に電子コミック)の好調はつづくのだろうか?
■イーブックの特徴は?同業他社との違いは?
イーブックの特徴は2つある。ひとつは、電子書籍だけをやっているのではなく、紙書籍のオンライン販売「bookfan」をおこなっている点。もうひとつは、ヤフーグループ(Zホールディングスグループ)の傘下である点だ。同業他社は電子書籍(コミック、マンガ)のみに注力している会社が多いが、イーブックは従来の紙書籍の販売をおこなっている。「巣ごもり消費」という点では紙書籍のオンライン販売が特需を取り込み、前年同期比+64.5%増となった。この伸び率は電子書籍事業の+47.4%を超える伸び率だ。
Zホールディングス傘下のヤフーは、イーブックの約43%の株式を保有する筆頭株主だ。ヤフーのトップページにも「ebook」のリンクサイトがあり、知名度の向上に大きく貢献している。イーブックは2016年6月にヤフーと資本業務提携契約を結び、2016年9月にヤフーグループの連結子会社になった。PayPay(ペイペイ)などのキャンペーンと連携できる点はイーブックの差別化のひとつ。
■電子書籍市場は成長産業!
電子書籍は市場全体が拡大中だ。とくにコミック(漫画)の電子書籍化率は60%を超えていると言われている。今後は文字モノ(小説、ビジネス書)や雑誌の電子書籍化率が進んでいくだろう。Amazon(アマゾン)のKindleの普及により、文字モノの電子書籍化率は進んでいると思っていたが、まだ10%未満という状況だ。
■イーブックの株価推移と今後の株価の行方は?
イーブックの株価は絶好調だ。いまは電子書籍関連銘柄ほぼすべての株価・業績は好調だ。どこかのタイミングで事業の優劣が決まってくるので、イーブックが生き残れるかどうか。電子書籍の巨人Amazonだけでなく、上場会社でいえば楽天(楽天kobo)、LINE(LINEマンガ)、ビーグリー(まんが王国)、インフォコム(めちゃコミック)などがライバルだ。イーブックの時価総額は約200億円。足元の売上高と営業利益の成長率をみると、割高感は見られない。
以 上