人材情報管理プラットフォーム「カオナビ」を提供しているカオナビ。年平均成長率30%を目指して成長をつづけているカオナビ。2025年3月期には売上高100億円、売上総利益80億円(売上総利益率80%)、営業利益30億円(営業利益率30%)の中期成長イメージを描いている。もし実現できるなら予想PER30倍の前提で時価総額は約700~800億円くらいと現在の株価の2倍~3倍になる計算だ。カオナビの事業状況と株価の行方は?
タレントマネージメントのカオナビ、人材データ管理による「見える化」や「人材活用」!(2022年1月10日投稿)
■基本情報(2022年6月10日時点)
- 株価:2,488円(10年来高値:7,330円)
- 時価総額:287億円
- 予想PER:238.7倍
- PBR:23.7倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:30.3%
- 会計基準:日本基準
■カオナビの業績は?
カオナビの2022年3月期の売上高は45億円(前年比+32.2%増)、営業利益1.7億円(前年は△11百万円の赤字)と増収黒字転換となった。カオナビの売上総利益率は+73.3%(前年は+72.3%)、営業利益率は+3.9%。
カオナビの売上総利益は24.6億円→33.0億円と+8.4億円と大幅に伸びているものの、販管費も24.7億円→31.2億円と+6.5億円の増加。結果として、営業利益は約2.0億円の増加にとどまっている。販管費の内訳をみると、意外にも広告宣伝費はそれほど大きくなく約6億円(前年は約5億円)と伸びは小さく、業務委託費などの「その他」が大きく増えている。
■カオナビの販管費の内訳は?
この販管費の内訳が開示されておらず、カオナビの利益構造をしっかり見ることができないのが現状だ。SaaS型ビジネス(サブスクリプション型ビジネス)は一定規模の売上高を超えると爆発的に利益がでる構造であるものの、規模拡大のため大量の広告宣伝費の計上による赤字が継続する場合がある。
カオナビの場合は、この広告宣伝費がそれほど大きくなく、規模拡大のための投資を抑制すると利益がでる利益モデルか判断できないのが現状だ。SaaS型であれば、ラスク、freee、マネーフォワード、弁護士ドットコムなどがクラウド型サービスで同様であるものの、カオナビもその分類でよいのか判断ができないのが正直なところ。
たしかに、表面的な売上総利益率は高いものの、売上原価と販管費の計上箇所が違うだけで、実態の売上総利益率はもっと低い可能性があり、その妥当性がわからないというのが現在の判断だ。
■カオナビの事業状況は?
カオナビの従業員数は229名。営業82名、カスタマーサポート35名、エンジニア73名、管理部門39名という構成だ。「カオナビ」の利用企業数は2,497社と非常に多く、900名以下の従業員数の企業が全体の85%を占める。競合他社のプラスアルファ・コンサルティングは1,000名以上の企業の顧客企業数が全体の4割となっており、カオナビは中堅・中小企業向けのサービスメインとなっている。
業績牽引するタレントパレット、プラスアルファ・コンサルティングの成長!(2022年6月12日投稿)
「カオナビ」の月額平均利用料(1顧客あたり)は16.4万円。競合のプラスアルファ・コンサルティングは月額平均利用料は37.8万円と倍以上の差となっている。これは顧客企業数はカオナビのほうが圧倒的に多いものの、利用者数ベースでみるとそれほど差異は大きくないかもしれない(プラスアルファ・コンサルティングの顧客企業数は836件)。
■カオナビの財務状況は?
カオナビの自己資本比率は30.3%とそれほど高くない。決算短信をみると、現預金を28億円もっており、有利子負債は約5億円ほどと多くない。顧客からの前受金15億円を負債に計上していることと、過去の累積赤字である利益剰余金が△10.3億円のマイナスである点が自己資本比率を押し下げている。
事業モデル的に財務状況はまったく問題ないだろう。心配なのは顧客が2,497社もあるものの、利益がまだ出ていないことが問題だ。ストック売上比率は86%前後と高いものの、何に販管費をつかっているか見えてこない。
■カオナビの株価推移は?
カオナビの時価総額は300億円未満で、他のSaaS企業に比べると割安感が大きい。成長性は前年比+30%を超えており、期待感あるものの、コロナショック後の高値から株価は下落トレンドとなっている。
競合他社のプラスアルファ・コンサルティング、ビジョナルの「HRMOS(ハーモス)」、スタメン、ジョブカンなど人材情報管理プラットフォームのサービスを提供している会社も伸ばしており、カオナビは薄利多売になっていないか利益モデルの確認に注意が必要だ。一応、2022年3月15日に上場来安値を付けており、そこから+50%くらいは株価は上昇している。
しかしながら、上場来高値からは3分の1くらいまで株価は下落しており、含み損を抱えている個人投資家も少なくないだろう。営業利益率が+20%を超えるようになれば、時価総額は間違いなく500億円以上を目指せるものの、その実力があるか見極めが必要だ。
以 上