「楽楽精算」「楽楽販売」など楽楽シリーズのクラウドサービスやIT人材ビジネスを手掛けるラクス。デジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗り、業績は右肩あがり。株価は時価総額6,000億円規模ととんでもない規模まで上昇している。今期は戦略的に先行投資する年度であり、前年割れの利益になる見込みだ。
成長つづくラクス、年平均成長率25%以上の中期経営計画を発表!(2021年5月15日投稿)
クラウド経費精算のラクス、前年比+30%を超える成長つづく!(2021年2月13日投稿)
■基本情報(2021年8月13日時点)
- 株価:3,335円(10年来高値:3,500円)
- 時価総額:6,043億円
- 予想PER:1,208倍
- PBR:76.8倍
- 予想配当利回り:0.05%
- 自己資本比率:77.5%
- 会計基準:日本基準
■ラクスの業績は?
ラクスの2022年3月期の第一四半期の売上高は46.1億円(前年同期比+33.3%増)、営業利益5.2億円(前年同期比△42.9%減)の増収減益となった。ラクスの売上総利益率は+68.7%(前年同期は+66.8%)、営業利益率は+11.3%(前年は+26.3%)と先行投資により販管費が13億円くらい増加した影響により営業利益率が悪化している。
販管費26.5億円(前年同期は14億円)のうち、人件費は10.9億円(前年同期は9億円)、広告宣伝費は8.1億円(同:2億円)、オフィス賃料2億円(同:1億円)、外注費1.8億円(同:1.2億円)となっている。販管費の戦略投資としては広告宣伝費6億円が該当するのではないか。
戦略投資(広告宣伝費)を除くと、営業利益は5.2億円ではなく、11.2億円前後というのが実情ではないだろうか。
■ラクスのクラウド事業の伸び率は鈍化に!
ラクスのクラウド事業(楽楽シリーズなど)は前年同期比+38%と高い伸びとなっている。心配なのは前四半期比での伸びが鈍化している点だ。2022年3月期の第一四半期(1Q)は前四半期比+6.1%の伸び。絶対額では+2.1億円の増加となっている。これまでは売上増加額がどんどん増えてきていたものの、ここ数年ではじめて前四半期比割れとなってしまった。
<クラウド事業の売上高推移>
2022年1Q:3,709百万円(+213百万円、前四半期比+6%)
2021年4Q:3,496百万円(+300、+9.4%)
2021年3Q:3,196百万円(+280、+9.6%)
2021年2Q:2,916百万円(+227、+8.4%)
2021年1Q:2,689百万円(+194、+7.8%)
2020年4Q:2,495百万円(+190、+8.2%)
2020年3Q:2,305百万円
■ラクスの株価推移は?
ラクスの時価総額は約6,000億円。すでに割高という水準を超えているのは確かだ。しかしながら、需給バランスが買い方有利に働いており、空売り残高が積み上がっている。割高と思って空売りする投資家が踏みあげられる戦いが続いている。いずれは高値から下落するときがくるはずだが、どこまで上昇するのか、いつまで高値を維持するのか誰にもわからない。
ラクスは中期経営目標として、平均成長率25%~30%を目指しており、2026年3月期(4年後)には純利益100億円以上を目指している。成長加速のためにM&Aを活用することを計画しているものの、資金手当ては①手元資金、②借入、③増資の順番で検討すると表明している。ほかのグロース銘柄と異なり、増資懸念が低いことがラクス株高の要因のひとつだ。
ほかのグロース銘柄、たとえば、freee(フリー)、マネーフォワード、マクアケ、BASE、ケアネット、チェンジなどは積極的に数十億円~数百億円の増資を実施している。グロース銘柄のなかで増資の優先順位がきわめて低く、消極的な姿勢のラクスに資金が集まる傾向はつづくのか?
ラクスの業績はきわめて好調であるものの、将来の企業価値にくらべて株価が上がり過ぎている印象を誰しもが持っているものの、なかなか下落しないことが半年以上もつづいている。
以 上