新電力事業者のイーレックス(9517)、バイオマス発電?再生可能エネルギーの行方は?

 再生可能エネルギーであるバイオマス発電(動植物などの生物資源をつかった発電)を進めているイーレックス。イーレックスはバイオマス発電を中心とした発電と電力(売電)の小売と卸売をおこなっている企業で、一般消費者には馴染みのない企業かもしれない。イーレックスは、国による「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」というFeed-in Traiff(FIT制度)とよばれる制度に乗っかり、再生可能エネルギーを中心にビジネスをおこなっている新電力事業会社だ。売上高は右肩あがりで伸びているものの、今後の株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2020年9月25日時点)

  • 株価:1,096円
  • 時価総額:560億円
  • 予想PER:10.9倍
  • PBR:2.15倍
  • 予想配当利回り:1.64%
  • 自己資本比率:23.8%
  • 会計基準:日本基準

■イーレックスの業績推移は?

 イーレックスの2021年3月期の第一四半期の売上高は186億円(前年同期比+16.5%)、営業利益は12.7億円(前年同期比△34%)と増収減益となった。これまで順調に売上高の伸びとともに営業利益を増加させてきたものの、競争環境や市況により電力の販売単価が低下したことが収益悪化の要因だ。2016年4月からスタートした電力自由化により、新電力事業に参入する企業も多く、電力の小売や卸売の単価に影響がでているかもしれない。

 新型コロナウイルスの影響により、日本卸電力取引所で取引されているJEPX価格(市況の売買電力単価)は下落傾向で2019年6月には平均7.8円/kWh→4.8円/kWh(2020年6月)に大きく低下している。イーレックス自身も価格のさがったJEPXの調達を増やしていることを考えると、他社も同レベルの価格で電力を調達できるため、小売市場では価格競争がはげしくなっている。

■イーレックスのバイオマス発電所とは?

 イーレックスは土佐(高知県高知市)、佐伯(大分県佐伯市)、豊前(福岡県豊前市)、大船渡(岩手県大船渡市)の4つのバイオマスが稼働している。主な燃料はPKS(パーム椰子殻)という椰子(ヤシ)の殻だ。地震をはじめた天災リスクを考えて、イーレックスの発電所の場所はうまく分散されている。

■バイオマス発電を支えるFIT制度!

 イーレックスのバイオマス発電を支えているのは、固定価格買取制度と呼ばれるFIT制度(Feed-in Tariff)。再生可能エネルギーの普及と拡大の目的で導入された制度で、太陽光発電、洋上風力発電、バイオマス発電、地熱発電、水力発電などが対象だ。バイオマス発電については、24円kWhの固定価格で20年間、買取される。イーレックスの事業リスクとしては、完全に国の政策に乗っかった事業であり、再生可能エネルギーの買取価格が下がってくる可能性がある点には注意が必要だ(20年間は固定される)。

 日本卸電力取引所で取引されているJEPX価格は5円/kWhくらいで調達できるものを、バイオマス発電ということで約5倍の24円/kWh(20年間)で購入してもらっている。この制度の前提としては、この20年間に技術革新などで調達コストを下げることだ。これから20年の間で、バイオマス発電の事業コストをいかに下げることがイーレックスの大きな課題だ。

■イーレックスの株価推移は?

 イーレックスの株価は上昇トレンドであるものの、新型コロナウイルスの影響が拡大した時期より停滞気味だ。新型コロナウイルスの影響により、電力需要が伸び悩み、売電価格の低下が懸念されている。実際、2021年3月期の第一四半期には営業利益減という形ででている。

 イーレックスの時価総額は約550億円。年間で営業利益100億円を出せる可能性はあるので、株価の割高感はまったくない。再生可能エネルギーに対する政策の後押しがあれば、株価は一気に伸びる可能性を秘めている。引き続き、業績面でのウォッチが必要だ。新型コロナウイルスの再拡大や天災などにより過敏に株価は反応する可能性が高いので注意は必要だ。

(画像5)イーレックスの株価推移、20年1月より停滞気味

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする