中小・中堅企業を中心とした卸売りのEC仲介サイト「スーパーデリバリー(SUPER DELIVERY)」を展開するラクーンホールディングス(以下、ラクーンHD)。メーカーと小売りを直接つなぐプラットフォームを長年運営し、最近では企業同士の決済仲介や売掛保証、家賃保証などのフィナンシャル事業も展開している。業績も絶好調のラクーンHD、事業に死角はないのか?
■基本情報(2020年6月26日時点)
- 株価:960円
- 時価総額:196億円
- 予想PER:35.2倍~39.5倍
- PBR:4.9倍
- 予想配当利回り:-(未定)
- 自己資本比率:29.3%
■ラクーンHDの業績は?
ラクーンHDの2020年4月期の売上高は34.8億円(前年比+16.7%)、営業利益8.5億円(前年比+30.3%)と増収増益。営業利益率は24.4%と高収益。新型コロナウイルスの影響が反映される2020年2月~4月の第4四半期の業績をみると、業績面でいまのところ影響は見られない。ラクーンHDは「新型コロナウイルスの影響はプラスとマイナスの両方があり、気になるレベルではない、中長期的には事業環境の改善につながる」と決算説明資料で説明している。
■ラクーンHDの「スーパーデリバリー」とは?
ラクーンHDのセグメントは、EC事業とフィナンシャル事業の2つに分かれる。売上高はEC事業6割、フィナンシャル事業4割であるものの、セグメント利益ではEC事業8割、フィナンシャル事業2割となっている。ラクーンHDのEC事業は「スーパーデリバリー」とよばれるプラットフォーム事業。「スーパーデリバリー」はメーカーと小売業者をつなぐプラットフォームで、ラクーンHDはシステム利用料や小売業者の会員費(月額:2,000円税抜)などで稼ぐ仕組み。
「スーパーデリバリー」の掲載商品数は120万点以上、出展企業は約1,800社。主な商品はファッション、生活雑貨、食品・菓子・飲料・酒、家具、電化製品。「スーパーデリバリー」は海外への販売も可能で、「SD export」というラクーンHDが海外事業者と国内出展企業のあいだに入って取引する仕組みを構築している。「スーパーデリバリー」の流通額は約130億円で、現在も伸びつづけている。特に2020年4Qは新型コロナウイルスの影響でEC事業の取引が活発におこなわれ、流通額がいっきに伸びた。
■フィナンシャル事業とは?
ラクーンHDのフィナンシャル事業は、決済事業の「Paid(ペイド)」と保証事業の「T&G売掛保証」「URIHO(ウリホ)」「ラクーンレント」にわかれる。「Paid」は売り手と買い手(BtoB)のあいだにラクーンHDが入り、支払いを100%保証と請求業務の受託をおこなっている。「T&G売掛保証」「URIHO」も「Paid」と同じように企業同士の取引の販売代金の保証をおこなう仕組みを提供している。
「ラクーンレント」は、個人向け賃貸とオフィスや店舗向けの家賃を保証するサービスを提供している。不動産のオーナーに対して、家賃滞納リスクを回避するサービスだ。家賃保証については、イントラスト、Casa(カーサ)、あんしん保証などの上場企業の競合他社も多い領域。フィナンシャル事業全体に言えるのは、まだ利益が十分でていない点だ。2020年4月期のフィナンシャル事業の営業利益は1.9億円、営業利益率は11%程度。EC事業の営業利益率43.8%とくらべると、見劣りしてしまうものの、今後の成長は期待できる。
■心配なフィナンシャル事業、コロナの影響は?
フィナンシャル事業で心配されるのは新型コロナウイルスの影響だ。2020年4月末時点の売掛保証残高は180億円、家賃保証残高は65億円で、両方あわせると245億円を保証している。ラクーンHDの保証対象は中堅・中小企業、個人事業主などが中心。とくにアパレルや飲食関係では貸倒の増加が予想される。
飲食店については店舗家賃の滞納増加が見込まれる。事業用の家賃保証は24カ月間を保証しており、現在の家賃保証残高65億円が24カ月分すべて含んでいるかは決算説明資料からは読み取れない。たとえ、245億円の1%が貸し倒れても2.5億円の損失となるため、どこまで影響がでるか個人投資家では予想できないというのが最大の投資リスク。
■ラクーンHDの株価推移は?
ラクーンHDの株価は上場来最高値圏で推移している。毎年2ケタ成長しているなか、時価総額は200億円ほどでそれほど割高感はない。ただ、やはり心配なのは売掛・家賃保証の貸し倒れの影響だ。2020年4月期までは業績好調であったことがわかったものの、貸し倒れはこれから発生する話。つぎの四半期決算を見てから投資しても遅くはない。
以 上