クラウド型名刺管理のSansan(4443)、マーケットを切り開けるか?

 クラウド型名刺管理のSansan。法人向けのSansanと個人向けのEightで名刺にかかわるビジネスを展開しているクラウドサービス企業。2007年設立の新しい企業、たった10年の事業展開で時価総額はなんと1,600億円規模まで上昇中。いっぽう、売上高は140億円ほどと時価総額にくらべると小さな印象だ。株価に見あった業績をたたき出すことはできるのだろうか?

■基本情報(2020年5月1日時点)

  • 株価:5,120円
  • 時価総額:1,600億円
  • 予想PER:455.5倍
  • PBR:15.76倍
  • 予想配当利回り:0%

■名刺管理から営業支援につなげる会社Sansan!

 テレビCMで一躍有名になった名刺管理サービスを提供するSansan(サンサン)。社内にある名刺を一括管理して、事業に役立てていくツールを提供している。個人向けのEight事業は営業利益は赤字と苦戦しているものの、主力の法人向けのSansan事業は好調だ。直近の2020年5月期第3四半期、Sansanの売上高31.4億円(前年同期比+28.6%)、営業利益は11.2億円(前年同期比+62.4%)と大幅に成長している。

 いっぽうで、会社全体としては売上高96.7億円と前年同期比で31.4%増となっているものの、営業利益は1.9億円にとどまっている。時価総額1,600億円規模の会社としては、売上高と営業利益の両方とも規模感がさびしい。

 Sansanの決算補足資料をみると、Sansanは契約件数、1契約あたりの月次売上高ともに右肩あがりの状況。また、平均解約率も継続的に低下していて、2020年2月末時点で0.55%となっている。つまり、一度契約すると、ほとんど解約する企業がいない状況だ。このまま年率30%のペースで売上高が伸び、営業利益も継続的に拡大していくことを株価はすでに織り込んでいると言えるだろう。

■けっこう多いSansanの同業他社!

 名刺管理ビジネスは「独特なビジネスモデル」と考えてしまうものの、Sansanの事業は、結局は名刺を中心とした営業支援ツール(顧客管理支援システム)と言えるだろう。営業支援システムという観点でみると、同業他社は少なくない。

 まずはSalesforce.com(セールフォース・ドットコム)。Salesforce Sales Clouldという営業支援ツールなどを展開している。顧客管理、案件管理、レポート作成など営業支援ツールの代表格のひとつ。

 国内の営業支援会社も多く、たとえば、ナレッジスイート、サイボウズの展開するkintone(キントーン)、ソフトブレーンの提供するeセールスマネージャーRemix Clouldなどもある。

 つまり、名刺管理クラウドサービスというと印象的な事業モデルを想起してしまいそうだが、営業支援・顧客管理システムと考えると、けっこう競合他社が多い業界だ。

■Sansanの直近の業績動向は?

 2020年4月13日、第3四半期の決算発表とともに、業績下方修正を実施している。理由の一つとして、新型コロナウイルスによるイベント中止損失54百万円の計上をあげている。修正後の2020年5月期の営業利益は5.9億円で、その結果として、予想PERは400倍超まで跳ね上がっているのが現在の状況だ。

 Sansanは先行投資型のビジネスモデルで、テレビCMをはじめとした認知度アップに相当なお金を費やしてきた。Sansanのバランスシートの負債を見ると、短期借入金13億円、長期借入金43億円と少なくない有利子負債をかかえている。これまでの利益の積み上がりをみると、いまだ利益剰余金△0.9億円となっており、投資が先行してきたことを財務諸表から読み取ることができる。

■Sansanの株価推移は?

 Sansanの株価推移をみると、5,600円、5,900円、6,400円と抵抗線が並んでいる。下の抵抗線としては3,630円あたりが大きな下値目途になりそうだ。2019年6月に上場してから、Sansanは3,400~6,500円の大きなボックスのなかで株価が上下している。

 ここから更に株価が上昇するためには、業績面でしっかりと結果を出していく必要がありそうだ。反対に、業績で期待どおりの結果を出せない場合は、期待を織り込んだ株価から資金が抜けていく可能性があるので投資する際は注意が必要だ。時価総額1,500億円を超える企業としては、営業利益で100億円以上出していてもおかしくない。株価に負けない業績の見通しをみせていく必要がありそうだ。

以 上

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