5G通信関連の高周波回路素子製品の製造・販売や再生可能エネルギーの太陽光発電の運営を行う多摩川ホールディングス(以下、多摩川HD)。政府の「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」をもとに、太陽光発電から小型風力発電に切り替え、再生可能エネルギー分野の拡大を目指す方針だ。保有する太陽光発電所(メガソーラー)を売却する方針であり、政府の力を入れる分野(風力発電)に力を入れる。多摩川HDの業績と株価の行方は?
■基本情報(2021年3月26日時点)
- 株価:1,800円(10年来最高値:4,570円)
- 時価総額:103億円
- 予想PER:80.4倍
- PBR:2.09倍
- 予想配当利回り:0.27%
- 自己資本比率:49.2%
- 会計基準:日本基準
■多摩川HDの業績は?
多摩川HDの2021年3月期の第三四半期の売上高は33.1億円(前年同期比△8.8%減)、営業利益1.5億円(前年同期比△62.4%減)の減収減益となった。期初予想で織り込んでいた長崎県五島市のメガソーラーの売却額がさがった影響と登別のメガソーラーの売却が翌期にズレ込んだことが大きく影響した。多摩川HDはメガソーラーから小型風力発電への方向展開を実施し、これからは小型風力発電に力を入れていく方針だ。
■多摩川HDの事業内容は?
多摩川HDは通信関連と再生可能エネルギーの2つの事業をおこなっている。全体売上高の6割は通信関連で、高周波回路素子製品という無線機器に必要な製品を製造・販売している。5G関連の製品とPRしているものの、これからどこまで市場が伸びていくか説明されていない。
多摩川HDが力を入れていくのは再生可能エネルギーの小型風力発電だ。多摩川HDの計画をみると、2021年3月期(今期)に30基の設置を予定している。1基あたり約36百万円の建設金額で、想定売電収入は年間4.7百万円(1基)の予定だ。年間4.7百万円から減価償却費、運営費などを差し引くと利益率は10%を割る見込みだ。2023年3月期に230基を予定しており、単純計算で10.8億円の売上高になる。
多摩川HDは2024年3月期に売上高100億円、EBITDA15億円、2027年3月期に売上高200億円、EBITDA30億円を目指す予定だ。あくまでEBITDAのため、減価償却費などを加算すると、営業利益は2024年3月期で10億円前後になるだろう。
■多摩川HDの株価推移は?
多摩川HDは5Gや再生可能エネルギー銘柄として、数年に一度、テーマ銘柄として株価が上昇している。現在の時価総額は100億円前後であり、テーマ銘柄として資金が流入すると株価は急騰する可能性あるものの、数年先に大きく利益が増える可能性は高くない。メガソーラー3か所を売却し、小型風力発電を投資しても、いま以上の売上高を確保するのは難しいからだ。
2010年頃から太陽光発電のメガソーラーが急拡大したものの、現在は供給過剰な状況。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)に支えられているものの、太陽が沈むと電力発電できないのが大きなマイナス。ここ最近は昼間の卸電力価格は低価格で推移しており、メガソーラーの供給過剰は明らかだ。政府としても太陽光発電から洋上風力発電やアンモニア、水素発電に方針を展開している。多摩川HDも小型風力発電に方向展開したものの、これまでのメガソーラーと同様の規模を稼ぐまでは時間が必要だ。
再生可能エネルギー関連では、レノバ、エフオン、イーレックス、グリムスなどあり、あえて多摩川HDに投資する必要はないだろう。
以 上