サブスクリプション型のネットサービス提供の朝日ネット、安定成長つづく!

 FTTH(光接続)、ADSL、モバイルなどのインターネットサービスを提供している朝日ネット。1990年4月設立の朝日新聞社のパソコン通信をASAHIパソコンネットの運営からスタートしているものの、2000年にMBO(マネジメントバイアウト)で朝日新聞社との資本関係はなくなった。2013年12月に朝日新聞社が協業の観点から株式を約7%取得し、いまは資本関係も発生している。

■基本情報(2022年5月20日時点)

  • 株価:599円(10年来高値:1,445円)
  • 時価総額:192億円
  • 予想PER:12.8倍
  • PBR:1.48倍
  • 予想配当利回り:3.67%
  • 自己資本比率:87.2%
  • 会計基準:日本基準

■朝日ネットの業績は?

 朝日ネットの2022年3月期の売上高は116億円、営業利益18.3億円。収益認識基準の変更により、前年と単純に比較できなくなっているものの、決算説明資料による収益認識基準適用前ベースでは下記の状況だ。

 2022年3月期の売上高は123億円(前年比+8.4%増)、営業利益18.1億円(前年比+7.1%増)の増収増益。朝日ネットの売上総利益率は+31.0%(前年は+32.4%)、営業利益率は+15.8%(前年は+14.9%)と販管費がそれほど発生していないビジネスモデルとなっている。

■朝日ネットのビジネス内容は?

 朝日ネットのビジネス内容は、「ASAHIネット」という光通信、モバイル接続などのインターネットサービスプロバイダ(ISP)を提供している。いわゆる、家でネット接続したいときに契約するネット接続会社だ。自社で光回線を持っている訳ではないので、NTT東日本やNTT西日本から回線を借りてきてサービスを提供している。月額使用料は5,500円くらいだ。

 その他のビジネスとしては、クラウドカメラソリューションというネットを経由せずに録画情報を提供するサービスをおこなっている。店舗、公共施設などネットで録画が流出するリスクを低減し、朝日ネットのデータセンタで録画を保存・提供するサービス。PCやスマートフォン、タブレットなどの多種多様なデバイスから閲覧が可能だ。

 また、manaba(マナバ)というクラウド型の教育支援サービスを提供している。学習管理システムで課題管理や情報発信、学習過程の成果物管理など授業・教育をIT面からサポートするツール。オンライン教育がますます活発になることは間違いないので、需要が高まっていく可能性は十分ある。

■財務面からみた朝日ネットは?

 朝日ネットの自己資本比率は2022年3月末時点で87.2%と極めて健全。現預金は40億円、有価証券20億円を保有と金融資産を約60億円保有しているものの、有利子負債はゼロ。一定の設備投資(無形、有形)が必要なものの、営業CFの範囲内で十分やりくりできている。その結果、ほぼ毎年増配をつづけ、配当性向は45%前後となっている。

 現在のネット接続の契約数は約50万ID。退会率は0.71%と1%を下回っている。教育支援サービス「manaba」の契約IDは82.5万ID(導入学校数は101校)と多いものの、年間の売上高は7.6億円にとどまる。

 2023年3月期の業績予想は、売上高124億円(前年比+7.1%増)、営業利益20億円(前年比+9.0%)と堅調な成長を計画している。

■朝日ネットの株価推移は?

 朝日ネットの時価総額は約200億円。サブスクリプション型のビジネスモデルであり、年間利益20億円を安定的にだし、成長を続けていくことを考えると株価指標的には割安だ。しかしながら、他のクラウドサービスのfreee(フリー)、ラクス、SansanなどのITクラウド事業にくらべると、成長性が低かったり、市場が出来上がっているので利益の急騰を期待できるワクワク感がなく、投資家の資金が集まらないのも事実。

 朝日ネットの予想配当利回りは3.5%前後のため、安定的な配当が欲しく、成長にともなうキャピタルゲインを得たい人にとっては面白い銘柄かもしれない。コロナ後に株価が急騰したものの、競合他社のギガプライズやファイバーゲートと同様で在宅勤務増加にともなう契約増など一部過熱した結果と思われる。朝日ネットはここから業績が下がっていくとは思われないので、緩やかに成長していくはずだ。ただし、利益の急上昇などにより、株価の急騰はなかなか考えにくく、2~5倍くらいの値上がりを狙う人は別の銘柄のほうがよいかもしれない。

集合住宅向けネットサービス提供のギガプライズ、高い利益率つづく!(2022年5月22日投稿)

独立系のWiFiソリューション提供のファイバーゲート、規模拡大つづく!(2022年5月8日投稿)

 ただ、朝日ネットで注意が必要なのは、NTTやソフトバンク、auなどの大手通信キャリアがモバイル通信網を活用したネット通信の展開を大々的に進めた場合、FTTH(自宅の光回線)の需要が一気に消える可能性が将来的に起こりえるかもしれない。自宅でネット回線を契約しなくても、自由にモバイル回線に接続できる世界は10~30年後くらいに実現している可能性は高いのではないだろうか。そのときにも、朝日ネットは何らかのサービスで生き残れる可能性は十分ありえるだろうが。

(画像1)朝日ネットの株価推移

以 上

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