ノーコードのアプリ開発サービス「Yappli」提供のヤプリ、成長も株価は下落へ!

 ノーコードでアプリを開発できるプラットフォーム「Yappli」を提供しているヤプリ。主にマーケティング向けが多く、全体の67%を占めている。残りはビジネス系だ。大手企業をターゲットにしており、トヨタ自動車、ダンロップ、リンナイ、京セラ、YKK、NEC、富士通など誰もが知る企業が顧客だ。現在は成長期間であり、利益がでておらず、今後の業績と株価はどうなるのか?

■基本情報(2022年8月15日時点)

  • 株価:1,684円(10年来高値:7,690円)
  • 時価総額:211億円
  • 予想PER:-(赤字予想)
  • PBR:13.3倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:48.6%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:4,460人(2021年12月31日時点)

■ヤプリの業績は?

 ヤプリの2022年12月期の第二四半期の売上高は20億円(前年同期比+35.2%増)、営業損益△6.7億円(前年同期は△4.4億円の赤字)と増収赤字幅拡大。ヤプリの売上総利益率は+65.8%(前年同期は+70.2%)と悪化傾向。

 ヤプリの売上総利益は+13.5億円と前年同期の10.4億円から増加しているものの、販売管理費は20.2億円と前年の14.8億円から約6億円の増加となり、営業損益の赤字が拡大することとなった。

■ヤプリの業績動向の詳細は?

 ヤプリは決算説明資料で丁寧に業績を分析を開示している。SaaS型事業であるヤプリにとって四半期ベースでの事業の伸びを確認する必要がある。売上高は1Qの9.8億円→10.2億円と+40百万円の増加しているものの、売上総利益率の悪化(69.4%→65.8%)により売上総利益は+6.8億円→+6.7億円と若干悪化している。この言い訳としては販売管理費に算入するR&D(新規開発)が減り、その余力を売上原価に反映したため労務費が増加したことが要因としている。

 ヤプリの販売管理費は前年同期の14.8億円→20.2億円と約6億円の増加。テレビCMの積極的な展開により広告宣伝費が大きく増加していることが要因だ。また正社員数は現在247名と前期末の217名から約30名の増加となっている。そのため、人件費が前年同期の3.8億円→4.6億円と約1億円の増加となっている。

■ヤプリの事業内容は?

 ヤプリは自社アプリの導入をスピードアップさせ、運用・分析までオールインワンでサポートする体制をもっている。顧客はプログラミングが不要なノーコードでアプリ作成をすることができることが特徴だ。

 たとえば、劇団四季公式アプリにYappliを活用。会報誌、チケット予約、予約管理などをアプリに集結。この数年で各企業・サービスのアプリ化がより進んだイメージで、その開発を自社でできることが大きなスピードアップにつながる。そのプラットフォームを提供しているのがヤプリだ。なお、創業者の取締役2名はともにヤフー出身。

 なお、アプリにはダウンロードした端末上で動作する「ネイティブアプリ」とWebブラウザで動作する「Webアプリ」の2種類があり、ヤプリは「ネイティブアプリ」を専門としている。

■ヤプリの事業規模感と今後の行方は?

 ヤプリの2021年12月期の実績は売上高32.6億円(広告宣伝費11億円、人件費15億円)。2022年12月期は43億円前後(広告宣伝費15億円前後、人件費19億円)を目標としている。

 現在のヤプリは広告宣伝費と人件費で多くの費用を占めており、結果として営業損益が赤字となっている。会計クラウドのfreeeなどのように成長性を重視しており、SaaS型ビジネスモデルではよくある、将来の利益拡大のため当面は赤字を受け入れる事業姿勢をもっている。2020年度から広告宣伝費を除くと、営業利益は黒字化しており、その黒字幅も拡大傾向となっている。

会計クラウドのfreee(フリー)、赤字継続も想定内、成長重視継続!(2022年8月16日投稿)

■ヤプリの財務状況は?

 ヤプリの2022年6月30日時点の現預金は21.7億円、有利子負債は約11億円。すでに利益剰余金のマイナスは△35.2億円まで拡大し、純資産は残り15.9億円となっている。会計クラウドのfreee(フリー)は2021年3月の株価が高いときに350億円ほど海外公募増資で調達し、いまも積極的に成長投資を実行している。

 いっぽう、ヤプリは2020年12月に上場し、その時の公募価格は3,160円。なお、初値は5,240円であり、現在の株価1,700円の約3倍の評価がついていた。ただ、もう少し上場のタイミングが早ければ、2020年~2021年の投資環境の良いときに増資をして将来の資金を調達できただろう。この2020年~2021年頃に、freeeをはじめ、マネーフォワード、ケアネット、BASE、ライフネット生命、マクアケなど多くのグロース銘柄が海外公募を中心に資金調達している。

新市場区分「プライム」適合のマネーフォワード、順調な成長つづく!(2021年7月17日投稿)

医薬DXで成長するケアネット、製薬業界は「人」から「DX」に!(2022年2月12日投稿)

■ヤプリの株価の行方は?

 ヤプリの時価総額は約210億円。ネイティブアプリ開発の上場している競合他社としては、Sharing Innovations(シェアリングイノベーションズ、時価総額:74億円)、テックファームホールディング(時価総額:30億円)、アイリッジ(時価総額:52億円)。これらの競合はシェアリングイノベーションズを除いて、なかなか利益がでない苦戦している状況だ。

 時価総額をくらべると、ヤプリへの期待感が高過ぎることがわかるだろう。ただ、前年比+30%を超える成長をしているのはヤプリだけ。この成長が鈍化すると、株は一気に売られる可能性があり、半値以下も十分ありえそうだ。

(画像1)ヤプリの株価推移、下落がつづく

以 上

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